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オタクな自分は打たれ弱いんです!  作者: TAKAHA
第一章
12/16

これが現実

昨日の更新を失念しておりました。申し訳ございませんでした!!




ボロボロのフード付きマントを羽織ったのは灰色に黒メッシュの入った髪の金茶色の瞳の狼の獣人の女の子だった。




――――ぅわっ・・・耳と尻尾、めっちゃもふりたい!!!




って思ったけど、明らかに変態に指定された後に逮捕されかねないから、当たり前だけど自粛。


その子を連れて取りあえず向かうのは ――屋台のおばちゃんがその方が良いって言ったので―― 警護団ではなく騎士団の詰所。

逸れたりしないように手を繋ぎ歩いていたが、ふとその子を見下ろすと案の定ローブと同じかそれ以上に身に着けている服がボロボロで、知らないけれどこの子の親に対して無性に腹が立つ。

さすがに見ていて痛々しいし可哀想だったので、道すがら服を一式買って着替えさせ、串焼きでは足りないだろうと食べ物も買い与えた。それでも半銀貨にも届いてないので、この世界の物価は結構安いのだろうな。


「ご協力感謝いたします!」

「いえ」


私の目の前には、深々と頭を下げる騎士様がいて・・・私は大層困惑気味だ。


「それは良いんですけど・・・」


ロルと名乗った女の子を領主騎士団の詰所まで連れて行った所、王都の騎士団だと言う胸元に王族の家紋だという ――ユニコーンとペガサスと二つの太陽の―― 刺繍の入った制服を着た騎士がいた。1人いるマントを付けている人の留め具は太陽を模した形をしている。


領主騎士団と同じ深緑色の詰襟ロングの制服だけど、胸元に入っている家紋で見分けるらしい。因みに領主騎士のマークは、白狼と白百合だ。こちらの留め具は百合の花の形だ。


「この子は、どうなるんですか?」


数日前、かねてから追っていたと言う取引を潰すために王都より派遣された騎士団と衝突があったらしい。

そして、その騎士団によって壊滅させられた闇商人に愛玩奴隷として獣人の大陸っていう ――船でひと月ほどの航海で着く―― 大陸から売られたり攫われてきた子供の1人がロルだったそうだ。


「名前はロルだね。何歳かな?・・・もう一回、おじさんの耳元で言ってもらってもいいかな?」

「・・・」

「うん、うん。そうか・・・大丈夫だよ」


淡い緑色のマントを身に着けた一番位が上だろう騎士様は、片膝を地面につけてロルと視線を合わすとにっこりと笑顔を浮かべて話しかける。

おじさんという程年上には見えないが、ロルから見たらおじさんかぁ・・・自分もそう思われてんのかなぁって遠い目したくなったのは置いておこう。



声が小さくぼそぼそ喋るロルにも嫌な顔1つせずに話を聞き、ロルの頭を撫でている。



勿論奴隷制度もむか~しむか~しは存在していたらしいけど、今そんなことをしたら第1級犯罪並みの重罪らしい。




てか、当たり前だ!!ふざけんな!!




その騒ぎの中で数人が商品となる子供を連れて逃げようとし、行方知れずになっていた最後の一人がこの子だったらしい。

そして、あの子供たちに虐められていたのはボロボロの格好とあの子らの縄張りに入ってしまった為に虐められたらしく、間違っても獣人だからという事でいじめられたわけでもない。

商人として、住人として、バルセの街に普通に溶け込んでいる獣人が住んでいるのを私は見たし。



本当に、自分に正直というか・・・子供って残酷だよね。



ロル以外はすでに王都へ向けて旅立ったらしく、攫われた子は親元に帰す準備があるらしいのだが、この子の家は兄弟が多く貧乏だったために親に売られたらしく、帰れないそうだ。

栄養失調の為か一桁くらいに幼く見えるが、今年 ――実際はあと2か月ほどらしい―― には成人の儀を迎えるって言っていたので想像よりは年は上なのだろう。


この世界が何歳で成人かは知らないが、昨日今日とカイさんの宿に泊まっていた人の中にも成人の儀を受けに行くためにここまで来たとか、受けてきて帰るところだと言っていた人たちがいて、平均すると中学生くらいに見えたので14歳前後ってとこだと思っておこう。


平安時代とか13くらいに元服とかあったし・・う~ん、確かそのくらいだったよね。


聞いた話、一般人が成人の儀を受けるのは住んでいる領内の一番大きな教会で受けるらしい。


下級貴族はさて置き、上級貴族になると暗黙の了見で王の膝元の王都の教会で受けるらしいのだ。

だが、どーーーー・・うしても体力的に領都まで行くことが行くことが不可能という人は近場のところで受けれるそうだが、その場合手続きがめんどくさいそうだ。因みに、金銭的に困難な場合でも成人の儀は国民の義務なので必ず領主はそれをさせなければならないそうだ。

どんなに守銭奴な領主でも、これだけはケチったりめんどくさがったりしたら処罰もの。


勿論これは王都にて管理されているそうなので絶対らしい。


「ご安心ください。帰れない者は王都にあります皇家預かりの孤児院にてお預かりいたしますし、最低限ではありますがこの少女に至っては成人の儀を受けた後の進学もしくは就職に住処まで責任を持って我らが引き受けます」


控えていた騎士と会話をし、どこかに連絡を取ったのか何かの用紙を持って戻ってきたリーダー格の騎士様は、ロルに1度微笑みかけてからこの子を拾った私にもそうやって説明してくれた。


獣人族20名と人族10名の中で大半の子達は帰れるそうだが、ロルを含めて10人は売られた子らしく孤児院の預かりになるそうだ。その中でロルだけがもう成人という年齢で他の子達とは年が離れているらしい。

「これより急ぎ王都へ向かいますので、準備をいたします」とそう言う騎士に「お願いします」と了承の返事をすると、彼はロルに一緒に馬にのっていくからねと伝え、ロルが頷いたのを笑顔で見つめてからサッと踵を返して仲間の騎士と連れだって馬屋の方へといった。


「ロル」


ただ1点を見つめてギュッとスカートを握りしめているロルの表情からは感情は読めないし、自分はもともとそういうのは苦手なタイプだ。

話しかけても返事もないのでどうしたものかと思うが、不安や恐怖があるだろうし無理もないと思う。


「ロル?」

「?」


屈んで、ロルの頬を両手でつかんでこっちを向かせれば、不安そうと言うよりは悲しそうに眉を下げて何かを我慢するように唇を噛んでいる。

ついさっき会ったばかりの赤の他人だけど、やっぱりこういうのって放って置けないよねぇ・・。


「うん、よし」


騎士様がまだ戻ってきてないのを確認して、私は肩にかけていた荷物をおろして目当ての物を探す。


「ロル、これはお守りだ。それと、これは餞別」

「・・あいと?」


私はティン用にと思って買ったトパーズの様な石が花を象っている髪飾りをロルの肩で切りそろえられた髪に付けてやり、太陽の刺繍の小物入れに数枚の金貨と銀貨を入れてロルに渡す。


「ロル・・・人生って意外なこと、信じらんない事が沢山起こったりするし」


事実、訳わからないがそのせいで私はこの世界に居るのだし。


「悲しい事や辛い事だって沢山あるよ。だけど、それと同じくらい嬉しい事だって楽しい事だって沢山ある・・・絶対に」


自分の考えや気持ちを伝えるのって難しいし苦手だ。

ロルの両手を取って、その手に小物入れを持たせてロルの手をその上からギュッと握る。


「一緒にいてあげられない私が無責任なこと言うなって思うけど、私も今現在不思議なことばっかり体験中だからね・・・離れていても、気持ちだけでも一緒に頑張っていこう」


ロルがそれで何を思ったのかは結局分かんないけど、騎士様の1人に抱きかかえられる様にリーダー的な騎士様の前に座らせられたロルは、髪につけた髪飾りを触りながら最後に小さな声で「ありがとう」と言うと王都へと旅立っていった。




遠ざかっていく騎馬をその場で見送くる。




「濃いなぁ・・・私の人生も・・」




思わずつぶやいたのも仕方がないと思う。




今はがむしゃらな感じで生きるのに必死だけど、訳わからない事ばっかりでいつ心折れるか分からないよ・・。




「はぁぁ」




異世界に飛ばされて、巨大な虫に襲われて、ティンとラダと出会って、魔法が使えたりなんかして私チートじゃん?!とか思ったりして、大金持ちになって、新たに獣人の女の子を助けちゃったりなんかして・・・




ここまでわずか1週間程度・・。




濃すぎて時間間隔が無くなって来たよ。




「いつかまた逢えたら、笑ってるといいな」




私も今、笑えてる。






うん、何とかなるさ!





申し訳ないですが・・・次回は早くて(いつも通り)2週間後の火曜日。

もしかしたら一か月ほど、9月の終わりの更新になるかもしれません。

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