第8話 進むべき道
勢いに任せてパーティー何て組んだけど、一体何をすれば良いんだろうか?
取り敢えず今日は解散して、明日から一緒にクエストを受ける事になったのは良いとしても、俺の当面の目標はランクを上げて大陸を渡る事だしな。
まぁ、幾つかクエストをこなして行けば、パーティーとしてどうあるべきかは見えるかもしれないな。
今は色々考えても仕方ないかな。
一旦は考えるのを止めて、ベッドに横になった。
しかし上位種か、この世界にはもっとやばそうなのが沢山いるんだろうな。
今回も【英霊召喚】で乗り切ったけど、この戦い方のままでこれから先やっていけるとは思えない。
【英霊召喚 】を使い続けていたら、いつか自分の命を落としそうだしな。
俺だけならまだしも、アンリやイリーナの事もある。
パーティーを組むからには、二人の事も守らないと。
その為にまずは、アビリティを幾つか習得しておくか。
Name:斎賀宏太 Age:16
Job:学生 Birthplace:日本 Lv.45
HP:3480 MP:2130
Strength:808
Defense:718
Vitality:730
Quickness:745
Magic:600
Ap:135
〈Ability〉
【異世界言語辞典】【英霊召喚】【鑑定】
【成長ボーナス】【身体強化(中)】【魔力強化(中)】
ドミネイトウルフに続いてオーガとの戦闘でここまで上がってる何て。
正直驚いたけど、このステータスがこの世界のどれくらいのレベルに位置してるのか分からないのが辛いな。
取り敢えず、何を習得するか考えるか。
いつも通りの長考に入った。
二時間程考えた結果、ようやく習得するアビリティを決めた。
何が良いとか、こうしなきゃ駄目って言う明確な答えがあれば良いんだけど。
まっ、そんなに甘くないわな。
Name:斎賀宏太 Age:16
Job:学生 Birthplace:日本 Lv.45
HP:4020 MP:2640
Strength:1012
Defense:915
Vitality:906
Quickness:924
Magic:830
Ap:0
〈Ability〉
【異世界言語辞典】 【英霊召喚】
【成長ボーナス】 【指導】 【鑑定】
【身体強化(大)】 【魔力強化(大)】
【自然治癒】 【危険感知】
【斬撃波】
うん、ステータスがなかなかに恐ろしい事になったな。
オーガ位ならもう【英霊召喚】を使わなくて倒せると思う。
多分。
今回は【鑑定】のお陰で、なかなかに良いアビリティ習得になったと思う。
【身体強化(中)】と【魔力強化(中)】を大に上げてステータスの底上げをして。
【指導】は、アンリとイリーナの為に取ってみた。
俺が倒した敵の経験値が、仲間にも10%程入るってアビリティらしい。
そして【自然治癒】は、HPが削られた時に、MPを勝手に消費して回復してくれるらしい。
これなら、もし【英霊召喚】をつかっても死ぬ事は無くなるかもしれない。
【危険感知 】、これはビビリの俺にはうってつけのアビリティだ。
自分に危険が迫ると、第六感の様な物で知らせてくれるらしい。
今後又ダンジョンに潜る事があれば重宝するだろうな。
もう潜りたく無いけど。
【斬撃波】は、言葉の通り剣から衝撃波が飛ぶアビリティらしい。
使用するにはMPを消費して、威力は力と魔力に比例して上がっていくんだとさ。
これが今回の全てだ。
この習得の仕方が良いとか、悪いとかは俺には分からない。
だけど、これでやって行くしかない。
この力で。
頭を使い過ぎたのか、気付くと意識は微睡みの中へと落ちていた。
____一方アンリとイリーナは____
「迷惑じゃ無かったかな……」
「大丈夫ですよぉ、宏太さんは優し方みたいですからぁ」
「それじゃ宏太の優しさに付け入ったみたいじゃない。お礼も出来てないのにパーティーに入れて何て本当に図々しいわよね……」
「でも、今の私達にはお礼をする為のお金も力もないんだよぉ…ならせめてお側にいて何かの役に立った方が良いよぉ」
「うん、そうだよね。うだうだ言っても始まらないしね。切り替えて行こう、切り替えてね」
それに宏太のあの不思議な力……私はあれを知りたいってのもあるしね。
「アンリちゃん急に難しい顔してどうしたんですかぁ?」
「えっ?!ううん、何でも無いよ!寝よっか」
「はいぃ〜おやすみなさいですぅ」
「おやすみイリーナ」
窓を叩く音で目を覚ました。
どうやら今日は雨らしい。
この世界に来てから初めての雨かもしれない、何だか少しだけ懐かしい気持ちになっていた。
取り敢えず準備をして、ギルドに向かおう。
俺は軽く朝食を取り、ギルドへ向かった。
雨の中向かうギルドは、普段よりも遠く感じた。
「あぁ〜宏太さん、おはようございますぅ」
「おはよう宏太、少し顔が疲れてるけど大丈夫?」
「んっ?あぁ、雨の中ギルドに歩いてるとさ、何か気が滅入っちゃってね」
「確かに雨は嫌だね、天候が悪い中で行うクエストは危険度も上がるって話しだし」
「雨の中のクエストはちょっと遠慮したいなぁ、そうだ!今日はパーティーとして、二人の事を知りたいかな、どうだろ?」
「私達の事を知りたい?もしかしてエッチな質問とかをするつもりなのっ?!」
「えぇ〜そうなんですかぁ宏太さん?!ショックですぅ」
「いやしないから。興味無いからそう言うの」
真顔で言い放つ俺に、二人は少しだけ残念そうな顔をしていた。
何なんだよ一体?!
「俺が聞きたいのは、二人の戦闘スタイルや得意な事だよ。パーティーを組むならちゃんと役割分担をしないとね」
「あっ、そういう事ね。宏太はもう知ってると思うんだけど、私のメインウェポンは弓よ、遠距離からの援護射撃が得意かな。後はサブウェポンにナイフを使うけど、余り近接は得意とは言えないんだよね」
「わっ私の番ですかぁ……私は武器は使った事がありません。治癒魔法は、バイト先の教会で覚えただけなんですぅ。でも、少しだけなら攻撃の魔法も使えますぅ……本当に少しですけどぉ……」
「長距離のアンリと、サポーターのイリーナ。そして俺が剣で戦う近距離スタイルだから、パーティーとしてのバランスは取れてるんじゃないかな?イリーナも今後丸腰って訳にはいかないから、何かしらの武器を持ってもらう事になるかもしれないけど良いかな?」
「はいぃ、頑張りますぅ」
物凄く気合の入った目で、何度も頷いていた。
「急にで悪いんだけどさ、宏太はどんなスキルを持ってるの?」
「スキルって?」
「えっ?!スキルはスキルよ。特殊技能って言うのかな」
スキル?俺が持ってるのはアビリティで、この世界にはアビリティって概念が存在しないって話じゃなかったか?
もしかしてこっちの世界の人間はアビリティが無い代わりにスキルがあるって話しか?
そうだとするなら勇者として喚ばれた俺達って全然特別じゃないじゃん。
「ははは〜スキルか〜スキルね〜よく分からないなぁ………」
「どうして隠すの?仲間に隠し事何てしちゃ駄目だよ」
言わないと駄目っぽいな…
まぁ無理に隠す必要も無さそうだし。
「実は俺、スキルが無いんだよね……変わりにアビリティって力ならあるんだけど」
「アビリティ?聞いた事無いよそんな力」
「この世界には存在しない力だからね。信じられないかもしれないけど、実は俺この世界の人間じゃ無いんだよね。別の世界から来たんだよ」
俺の言葉に二人は首を傾げていた。
それもそうだよな、そんな話し信じられる訳無いしな。
「なら宏太の使ってたあの力を覚えるのは無理かぁ、ちょっとショックだよ」
「あれ?信じるの?」
「だって宏太が嘘なんてつくはずないもの」
「そうですよぉ、宏太さんこ瞳は真っ直ぐですから」
「嬉しいような、複雑な様な……」
「だけど宏太、その話は余りしない方が良いかもね。珍しい者が好きな人は何処にでも居るものだからね。」
そう言えば少し前に襲われたな。
アイツさへ居なければ今でも敬愛と楓と三人で冒険してた筈なんだけどな。
「有難うアンリ、気を付けるよ」
「後、気になる事があるんだけど。ギルドに登録する時にアビリティの事はバレなかったの?」
「文字化けして写らなかったよ、だからアビリティはバレてない」
「そう……だけど何れおかしいって思う人が出てくるかもね。中堅クラスの冒険者がスキルを持って無いなんておかしいもの」
「うっ?!そう言われるとそうかも……因みにアンリのスキルを教えてくれないかな?スキルってのがどんな感じか知りたいんだ」
アンリは「良いよっ」と、言って紙を取り出して自分のステータスを書き始めた。
名前:アンリ・ルスクス Age:17
Lv.16 HP:520 MP:80
力:240
防御:180
体力:245
敏捷:200
魔力:80
SP:0
〈スキル〉
弓Lv.5 短剣Lv.1 無色魔法Lv.2 見切りLv.2
何だろう、一言で言うと凄く見やすい。
神様どうかこの声が届くのならばステータスの見え方を改善して下さい。
「これがスキル?弓の横にレベルとかあるし、どう言う意味なんだ?」
「横にあるレベルは熟練度の事よ、これが高ければ高い程その武器を使いこなしている事になるんだよね。私の弓レベルが高いのは、レベルが上がった時に入るSPの殆どを弓に振っているからなの。だから他のスキルのレベルは低いままだし、数も少ないのよね」
「熟練度か、上がれば上がるだけ武器の扱いが上手くなるのか、凄いな。SPは新しいスキルの習得と、スキルのレベル上げに使うって事だな。ならスキルのレベルってのはSPを使わないと上がらないのか?」
「いえ、違うわ。SPを消費しなくてもちゃんと訓練すればスキルのレベルは上げる事が出来る。だけど凄く時間がかかるから誰もやらないと思うわ。レベルを上げてSPを稼いだ方が早いからね」
「スキルを覚えるのにもSPを使うんだろ?自力で覚えられないのか?」
「んー、少しだけ才能が必要になると思うけど、SPを使わなくてもスキルを習得する事は出来るよ。訓練でスキルを習得する人が居るなんて余り聞いた事無いけど、剣術の道場や、魔法を教える学園がある位だしね」
なる程ね、ならきちんと訓練をしてスキルを習得していけばSPの節約に繋がるって事じゃないか。
「アンリは訓練してないの?」
「そう言うまどろっこしい事は苦手なんだよね」
「イリーナは?」
「私は治癒魔法と赤魔法は勉強で習得しましたよぉ、でもレベルが低いので少し使うと直ぐにMPが切れちゃいますぅ」
イリーナは、魔法の才能があると思って良いみたいだな。
SPか、アビリティと違って色々と面倒な所があるみたいだけど、熟練度ってのは唆る物があるな。
俺の剣術は素人に毛が生えた位の腕しか無い、それをステータスで何とか誤魔化しているだけだ。
どうにかして俺もSPを手に入れる事が出来ないかな?
まぁ無理だよな、アビリティも有るのに欲張っちゃいけないわな。
「よしっ、今の話を踏まえて今後の方針を決めていこう」
「方針?」
「なんですかぁ?」
「二人のスキルについてだよ。活かせる物は活かさなきゃ」
アンリには取れそうなスキルはなるべきSPを使わずに訓練で取るように伝えた。
そして弓ばかりに振らずに、もっとサポート系のスキルも習得して、戦いの幅を広げてみたらと言ったら。
「宏太が言うならそうするね」と笑顔で言っていた。
俺任せ過ぎでしょ全く。
そしてイリーナには、習得出来そうな魔法は自力で習得して、SPは魔法に関する補助スキルがあるならそれを取るようにと伝えた。
「でも宏太さん、私は戦えないのでレベルが上がらないんですぅ〜」
「そこは心配しなくても良いよ、俺のアビリティには、俺が倒した魔物の経験値の10%を仲間に与えるってのがあるから、それでイリーナのレベル問題は解決さ」
何故か二人は目をキラキラさせながら俺に拍手を送っていた。
凄いのは俺じゃなくてアビリティだって言うのに。
「よしっ、今日はやる事も無いからゆっくりしようか。明日から気合を入れて頑張ろう」
「そうですね、私自身やらなきゃいけない事が沢山出来ちゃいましたけど」
「私も足でまといにならないように頑張りますぅ」
「余り気負わずにいこうか」
そこで二人とは別れた。
今日はゆっくりしよう、この天候の中で無理に何かする必要も無いんだから。
しかし、今日はなかなか興味深い話しが聞けたな。
スキルか…アビリティとは違う力。
アビリティの力はちょっと異質だけど、スキルにはスキルで良い所もあった。
スキルについての詳しい話しを今度もう一度聞いてみたいな。
色々考え事をしながら歩いていると、入った事の無い通りの前まで来てしまっていた。
何処だろう此処は?
キョロキョロと周りを見渡すが、やはり来た事の無い所だった。
今日は時間もあるし、少し位見て行っても良いかな。
俺はその通りに入る事を決めて、足を進めた。
見慣れない建物に見慣れない看板。
この街に来てからそれ程日数は経っていなかったが、少しだけ不思議な気持ちになっていた。
そして気になる看板を見付けて足を止めた。
『錬金工房リュールースル』
何だこの意味の分からないネーミングは。
何より錬金工房ってのが気になる。
ちょっと不安だけど……入ってみるか。
意を決して扉を開いた。
中には綺麗な装飾の施された鏡や鞄と言った小物から、羽の生えた靴や薬の容器みたいな物まで色々な商品が並んでいた。
「いらーしゃいませーお客さーん」
店員なのか何なのか分からないけど、俺に声を掛けてきたのは三人の子供だった。
「この店の人の子供かな?」
「違わい!私はリュー!そしてこっちにいるのがルー!そこにいるのがスルよ!私達三人でこのお店をやってるのよ」
子供店長って昔何かで見たな。
あれみたいな感じかな?
しかし子供の店か、うん、出よう。
「お邪魔しました」
「待ちない!ちょっとはうちの商品を見ようとしてくれてもいんじゃないの?!」
「いやー、ははは。でも子供だしね」
「大人と子供に何の優劣があんだい!大人より優れてる子供だっているってのにさっ。勿論私達の事よ!」
反り返るほどに胸を張ってリューが言っている。
「あんまり気が乗らないけど、取り敢えず見るだけなら」
「そうこなくっちゃね、ならこれなんてどうさね?クレイジーボマーの魔石から作った小型爆弾なんだけどさ、この留め具を引き抜いてから10秒後にドカンで半径20mを一瞬にして焼き尽くす超火力小型兵器だよっ!」
めっちゃあぶねぇっ!!
なんつー代物作ってんだよこの子達は。
しかも10秒って短過ぎだろ!
下手すりゃ使った本人が巻き込まれるわ!
「そう言う危ないのは要らないから、うん、しまおうか」
「えぇー!!こんな超火力なのに?!」
超火力とか求めて無いから!!
「なら今度はこれだよ!腕力増強グローブ!」
「おっ、名前的にはなかなか良さそうだな」
「ふふふふふ、これはね、特殊な亜人族の体毛とキラースパイダーの吐く糸を絶妙な配分で編み込み完成したグローブさ!つければそれだけで普段の三倍の腕力を手に入れる事が出来る!変わりに一度はめたらグローブが皮膚に張り付いて二度と外せなくなるって代物さ!」
呪いの装備じゃねーか!!
「呪われてんじゃねーか!!そんなもんいらねーよ!!」
「呪いじゃないぞっ!キラースパイダーの糸が筋繊維に沿って張り付いていくだけだ!」
「だから何だよ!外れなかったら不都合が多過ぎるだろ!」
「強力な力ってのには、代償が付き物なのさね」
「カッコよく言っても不良品は不良品だぞ」
「私達の自信作を不良品言うなコラー!」
「あーもう悪かったよ、だけどさ、何かこうもっと使い易い物とか無いのか?ちょっと癖が強過ぎるは爆弾とかグローブとか」
俺の言葉に三人は頭を抱え込んでしまった。
逆にそれ以外の普通の商品を見せろって言っただけなんだけどな。
「はぁ、あんまりオススメじゃないんだけどさ。この魔物避けの香とかは?一つで大体三日位は使えるよ。まぁただ魔物が寄ってこなくなるだけのつまらない物なんだけどね」
そう言うのだよ!
そう言うのが欲しいんだよ!
「めちゃくちゃ優秀なアイテムじゃないか!」
「そうかい?これは魔物が嫌う臭を出すってだけのシンプルかつ面白くないアイテムだよ。欲しいなら一つ100ミルドで売ってあげるよ」
「三つ貰うわ」
「えぇっ?!三つも買ってくれるの?!こんな面白く無い物を?取り敢えず三つも買ってくれるお礼に1つオマケでつけとくさねっ」
「面白さより、使い勝手の良い物を売り出した方が確実に稼げるぞ。とにかく有難うなオマケ」
「いやいや、こちらこそさねっ。面白い物より使い勝手の良い物を売り出せか……良い事を聞いたよ!これで明日からご飯に困らなくて済みそうさねっ」
誰かこの子達に教えてやる奴はいなかったのか……
「定期的に店を見に来るからな、ちゃんとご飯が食べれる様に商売するんだぞ」
「有難うさねっ!」
300ミルドを支払い、四つの香を受け取り店を後にした。
あの三人本当に大丈夫だろうか。
親は何をやってんだよ子供ほったらかして。
……心配だけど仕方ないか、たまに様子を見に来るって言っておいたんだ。
これからはちゃんと商売するだろう。
まっ、こんな良い物を作れる子達だしな。
このアイテムもきっと明日から役に立ってくれるに違いない筈だ。
早く使ってみたいな。
少しだけワクワクしている自分がいた。