表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英霊の召喚士  作者: 息抜きおじさん
1章 英霊と少年
5/9

第5話 英霊召喚

やっと英霊召喚出せました。

 心地いい小鳥の囀りで目をさました。

 うん、疲れは抜けてるな。


 昨日は色々有り過ぎて、宿に着くなりお金を払って直ぐに寝てしまっていた。

 とにかくお腹が空いた、昨日は丸1日何も食べていないのだから当たり前だろう。


 身体をベッドから起こし、朝食を取るために下に降りた。


 「おっ、お客さんはやいね。飯かい?」


 「ウィゲルさん、おはようございます。すいません、凄くお腹が空いちゃって」


 彼は店主のウィゲルさんだ。

 元々冒険者らしくて、駆け出し冒険者でも泊まれるように良心的な値段で宿を営んでいる。


 「昨日は飯も食わずに寝ちまったもんな、直ぐに作ってやるから座って待ってな」


 ウィゲルさんは、本当に直ぐに朝食を用意してくれた。

 山盛りのサラダとパンに何かの肉を挟んだサンドイッチのような物だった。

 1口齧ると、肉汁が溢れ出した。

 中に塗られているソースも何か分からないが、甘辛く大変美味しかった。

 酷く空腹だったせいもあるが、直ぐに間食しておかわりしていた。


 「全くどんだけ腹空かしてたんだよ。まぁ良い、腹一杯食いなよ」


 お言葉に甘えてまたお代わりしたら、流石に引いていた。


 「ご馳走様でした、今日もこの宿に泊まるので代金だけ払っておきます 」


 ウィゲルさんに今日の分の代金を払い宿を出た。


 宿を出て向かう先は、勿論ギルドだ。

 とにかくクエストをこなしてランクを上げないと。

 Bまでの道程は遠い、しかし他に道は無いんだ。


 駆け足でギルドに向かう。

 途中で何度も露店のおじさん達に捕まったが何とか逃げ切った。

 押し売りに弱そうな顔してるんだろうな俺。

 …………辛い…………


 そしてようやくギルドに着いた。

 ギルドに着くなり最初に確認するのがクエストボードだ。

 ボードと言っても壁なんだけど。

 クエストボードには無造作に大量の依頼が張り出されている、その中から自分のランクと同じ物を選び、クエストを受ける。


 俺が受けられるクエストランクはD。

 Dランクのクエストは大体が護衛と討伐だ。

 護衛は稼ぎがいい代わりに何日も掛かるので、俺向きじゃない。

 討伐なら数をこなせばそれだけお金になるし、頑張れば早く終わらせる事ができる。

 有難い話しだ。


 取り敢えず初のクエストはこれだな。


 【シャドウウルフの討伐】


 南の森でシャドウウルフが異常繁殖している。

 本来ならば森には一つの群れしかいない筈なんだが、複数の群れが確認された。

 これ以上増えられたら、近くで採取の仕事をしている者達が危ないので、早めに討伐をしてもらいたい。

 手の空いている冒険者は、直ぐにこのクエストを受けて欲しい。

 報酬は、15体討伐で200ミルド

 更に15体以上のシャドウウルフ一体につき10ミルドの報酬を払います。


 一体10ミルドって事は、個体としては強くないんだろうな。

 オークみたいに群れで行動するから危険って事なのかな?


 取り敢えずこれを受けるか。

 俺はカウンターへ行き、シャドウウルフ討伐のクエストを受けた。


 パトリックさんがいれば挨拶をしようと思っていたが、いなかったので直ぐにギルドを後にした。


 そして門まで歩いて行くと、昨日の門兵さんに声を書けられた。


 「もしかして身分証の事忘れてる?」



 「あっ!すいません!完全に忘れてました」


 俺は首から下げているギルドカードを門兵さんに見せた。


 「OKOK冒険者登録したんだなっ……?!っていきなりランクDかよ!凄いな君は。こんな時間から外に出るって事はクエストだろ?無理せずにね」


 優しい門兵さんに頭を下げ、外へと出た。


 やっぱり一人で外を歩くのは慣れないな。

 強くなったからって、めちゃくちゃ強いって理由でも無いしな。


 そう言えばApが大量にあるな、万が一に備えてアビリティの習得をしておくかな。

 俺はステータスを開き、アビリティの習得を始めた。


 安定のA型クオリティ、習得するアビリティを決めるだけで1時間程使ってしまった。

 だけどそのお陰で相当強化する事が出来た。


 Name:斎賀宏太(さいがこうた) Age:16

 Job:学生 Birthplace:日本 Lv.18

 HP:1320 MP:780

 Strength:322

 Defense:262

 Vitality:292

 Quickness:285

  Magic:225

 Ap:0

 〈Ability〉

 【異世界言語辞典】【英霊召喚】【鑑定】

 【成長ボーナス】【身体強化(中)】【魔力強化(中)】


 うん、綺麗に使い切る事が出来たな。

 鑑定はAp25だった。

 もしかしたら相手の情報を確認出来るかもしれないと思って習得してみた。

 魔物と会ったら使ってみよう。

 そして身体強化(中)と魔力強化(中)二つともAp30だったので習得を決めた。

 どれくらい上がるか分からなかったけど、ステータスを見る限りだと1.5倍みたいだな。

 これはかなり強化されたんじゃないかな。


 ステータスとアビリティは俺を裏切らない(英霊召喚を除く)のは今までで確認済だし。

 これでシャドウウルフ討伐も少し楽になるだろう。


 ステータスの大幅なアップで自信を付けた俺は、足取りも軽く森へと向かった。

 道中で何度か魔物と遭遇したので鑑定を使ったら、予想通り情報を見る事が出来た。

 種族や戦い方、更には弱点まで見れた。

 当たりだな鑑定は。


 倒した魔物は、ゴブリンソルジャーLv.5とゴブリンメイジLv.5。

 後はワイルドボアLv.8と言うデカイ猪の様な魔物だった。

 弱点が分かっているので、苦戦する事は無かった。

 勿論倒した後は、魔石と素材もしっかり回収した。


 こんな感じで概ね順調に森へと入る事が出来た。

 森に入ると直ぐに、狼のような真っ黒い魔物と遭遇した。


 先ずは鑑定だ。

 俺は魔物に鑑定を使った。

 Name:シャドウウルフ Lv.10

 凶暴な狼の魔物。

 黒い体は夜になると見つける事が困難になり、気付くと背後に立たれ襲われる。

 まるで自分の影に攻撃された様な錯覚に陥る者が後を絶たなかった為、シャドウウルフと名前が付いた。

 シャドウウルフは気配を消し、背後から襲ってくるので、戦う際は背後を取られないように気を付けよう。

 弱点は火。

 火を見ると逃げる習性がある。


 鑑定さんまじ優秀。

 背後を取らせなきゃ良い訳だな。


 俺は背後を気にしながら、目の前のシャドウウルフ目掛けて剣を振りかざした。

 上がったステータスにより、今まででは考えられない様な動きが出来る様になっている。

 地面を蹴ると直ぐにシャドウウルフの目の前まで移動していた。

 そして行動させる前に剣を交差させながら十字に斬り付ける。


 一瞬の出来事、シャドウウルフは悲鳴を上げる事すら出来ずにその姿を肉塊に変えていた。


 それからはほぼ作業の様にシャドウウルフ達を狩って行った。

 出会い頭に斬り付ける。

 逃げる前に斬り付ける。

 二体纏めて斬り付ける。

 これの繰り返しだった。


 Dランクのクエストって余り大した事無いのかな?

 余りに強くなった自分の力を過信しての発言。

 それは最もしてはいけない油断へと繋がっていた。

 この森でならどんな魔物が来ても負ける筈なんて無いだろう。

 心の何処かにそんな考えが浮かんでいた。




 この世界に絶対何て有り得ないのに。




 黙々とシャドウウルフを借り続ける中で少しの違和感を覚え始めていた。

 森の奥へ足を進める中で、少しづつではあるがシャドウウルフの個体としての力が上がって来ている気がする。

 鑑定を使った訳じゃない。

 動きだったり、攻撃方法だったり、それらが確実に上がっていた。


 次のシャドウウルフに会ったら、もう一度鑑定を使おう。

 討伐数は三十近くになってるから、帰っても良いけど行ける所まで行きたいしね。


 そして数分間が過ぎた、その間シャドウウルフは現れなかった。

 いや、シャドウウルフだけじゃない。

 少し前までいた動物や、ゴブリン達の姿も見えない。

 それどころか気配すら感じない。


 何だろう、妙な胸騒ぎがする。


 大体妙な胸騒ぎがしてる時点で悪い事は始まってるものだ。

 なぜ気づけなかったのか、何故もっと深く考えなかったのか。

 少し前の自分なら出来ていた。

 いや、唯一それだけに長けていたと言っても良い。


 力を付けた事により起きた慢心、油断。


 今俺の目の前には、見た事も無い程に大きなシャドウウルフが立っていた。


 何だ……これ?

 突然の事に身動きが取れなくなっていた。

 一瞬だった。

 目の前には何も居なかった筈だ。

 ただ瞬きをしただけ、その一瞬で、俺の目の前に大きなシャドウウルフが現れた。


 通常のシャドウウルフが1m位の大きさだとすると、コイツは間違いなくその5倍はある。


 目の前に現れたシャドウウルフは牙を剥き出しにして、俺を威嚇する様に睨み付けていた。


 鑑定だ……とにかく鑑定しなくちゃ。


 シャドウウルフに鑑定をつかった。


 Name:ドミネイトウルフ Lv.45

 シャドウウルフの上位種。

 シャドウウルフの群れには長がいる。

 一つの群れに一体の長。

 その上には幾つもの群れを治める長がいる。

 それがドミネイトウルフ。

 シャドウウルフ達を支配する者だ。

 強靭な顎を持ち、鉄すらも軽々と噛み砕く。

 強靭な脚力は、1(ひとたび)地面を蹴れば風の如き速さで獲物を追い詰める。

 強靭な爪は、一撫されれば肉塊となり身を散らす。

 弱点は火

 火を見ると怒る習性がある。


 何だこれ?

 夢か?幻か?何だよこの説明は!

 何だよこのLv.は!!


 聞いてないぞこんな奴が出るなんて。

 どうする?逃げるか?逃げれるか?


 睨み合いが続く。

 視線を外せばその時点で終わる、そんな気がしていた。


 ドミネイトウルフはなぜか攻めて来ない。

 俺が少し後退りすると、それに合わすように足を進める。

 精神的に俺を追い詰めて、苦しむ様を見ているのかもしれない。


 速さは間違いなく負けている。

 なら逃げる事は不可能だ。

 やるしかない。

 やるしかないんだ。


 剣を握った拳に力を込める。

 そのまま体勢を少し前に倒すと、勢い良く地面を蹴りドミネイトウルフ目掛けて走り出す。

 俺の急襲に少し驚く様な素振りを見せた。


 俺は足元に走り込むと、直ぐに剣を振った。

 硬い、まるで石を斬り付けた様な衝撃が腕に走る。

 俺の一撃は全くと言って良い程にダメージを与えられていない。

 隙をついての一撃だった。

 絶対に決めなくちゃいけない一撃だったんだ。


 俺の一撃をものともしていないドミネイトウルフは、斬り付けられた足を振り上げ、そのまま爪による強力な一撃を振りかざして来た。


 咄嗟に反応して、それを避けた。


 避けたすぐ後、脇腹に熱を感じる。

 熱は徐々に広がり、痛みへと変わっていった。

 痛みを放つ脇腹に視線を向けると、夥しい程の出血をしていた。


 かなり深くまで肉を裂かれている。

 痛みに顔が歪む。

 痛みが思考を鈍らせる。

 悪循環が生まれる。


 徐々に荒くなる呼吸の中で、必死にドミネイトウルフからの攻撃を避け続けている。

 避ける度に傷が増えていく。

 完全に避けきれていない。

 避けれる様な速さの攻撃じゃない。


 何とかしなくちゃ駄目だ。

 そう思っても反撃の糸口がない。

 攻撃から逃れる術が無いんだ。


 どうすればいい。

 どうしたらいい。

 この状況を覆す一手が欲しい。


 生きる為の一手が。


 その時頭にあるアビリティが過ぎる。

 使った事が無く、どんな力を秘めているのかも分からないアビリティ。

 【英霊召喚】

 消費MPが高過ぎて使い物にならないと思っていた。

 だけど今なら使える。

 使わないで終わってしまうのなら、使うべきだ。

 徐々に増えていく傷の痛みに耐えながら、俺は英霊召喚を使った。


  【英霊召喚E】

 呼び出す英霊を選択して下さい

 ・ゲオルギアス 

 ドラゴン殺しの英雄  消費MP500

 ・シグムント  

 屈強な肉体を持つ英雄 消費MP500


 何でもいい、何でもいいから助けてくれ。

 そんな事を思いながらゲオルギアスを選び召喚した。


 すると急に暖かい光の様な物が俺の身体を包み始めた。


 「汝が我を呼んだのだな」


 光に包まれた直後、急に知らない男が目の前に現れ声を掛けられた。


 「え?此処は?!ドミネイトウルフは?」


 「いきなり幾つも質問する物では無いぞ、宿主よ。此処は汝の心の中、心層世界とも呼べる場所だ。敵ならば目の前におる。まぁ、今は外の時間は止まっているよなものだから安心するが良い」


 「心層…世界?時間が停止?良く分からないんですけど、貴方がゲオルギアスさんですか?」


 「如何にも。我がゲオルギアスだ、宿主よ」


 「宿主?何がなんだが分かりません!とにかく助けて下さい!このままじゃ死んじゃいます」


 「ふむ、助けるか……我が出来るのは宿主の身体に我が力を貸すことだけだぞ」


 「俺の身体に力を貸す?ゲオルギアスさんがドミネイトウルフと戦ってくれるんじゃないんですか?」


 「我が戦うと言えば戦うんだが、実際には宿主の身体に我が入り戦うと言った方が正しいな。既に我の肉体は存在しない故、心層世界より出るには寄り代が必要なのだ」


 「ゲオルギアスさんが俺の身体を使ってドミネイトウルフと戦う……それって大丈夫なんですかね?」


 「大丈夫とな?我が宿主の身体を借りて外に出れば、肉体を有していた時程では無いにしろ、奴を倒す位雑作もない。しかし問題はある。それは宿主の身体だ。宿主の肉体は弱い、弱過ぎる。我が力に耐え切れず壊れてしまうかもしれん」


 「身体が壊れる……」


 「怖いのか?」


 「めちゃくちゃ怖いです。でもやらずに殺される位なら俺はやります」


 「うむ、決意に満ちた良い眼をしておる。安心するが良い、壊れぬ様加減はするつもりだ。」


 俺を見ながら少しだけ微笑んだ様に見えた。


 「ならば早速始めようか宿主よ」


 「うん、よろしく!」


 ゲオルギアスの魂が淡い光になり俺の身体に入ってくる。

 少しづつ血液が熱くなっていくのを感じる。

 それと同じ様に、身体の中を自分のでは無い強大な力が駆け巡る感覚。

 そして身体に走る激痛。

 太い針の様な物で、全身を何百回、何千回と突き刺される様な痛み。


 そして徐々に遠くなる意識、気付くと俺は自分の体を見下ろしていた。

 何だこれ?何が起きた?

 突然の事に動揺してしまう。

 だけどその動揺を一瞬にして吹き飛ばす様な出来事が目の前で起きた。


 俺では無い俺が、ドミネイトウルフの顔面に蹴りを叩き込んでいた。

 叩き込んでいただけじゃない。

 蹴りを受けたドミネイトウルフの顔面が恐ろしい程に陥没していた。

 そして痛みに耐え切れず、身体を捩り叫び声を上げていた。

 そこからは一方的だった。

 目にも止まらぬ速さで繰り出される拳に蹴り。

 その一撃一撃が恐ろしい威力を宿しているのが分かるかのように、攻撃を受けた箇所が次々に陥没していった。

 ドラゴン殺しの英雄…何て恐ろしいんだ…


 一瞬の出来事だった、瞬きをしていたら見逃してしまっていたかもしれない位に。


 体中を陥没させられたドミネイトウルフは、そのまま動かなくなった。

 どうやら絶命したようだ。


 ドミネイトウルフの死を確認した瞬間、俺は自分の肉体に吸い寄せられた。

 そしてそのまま自分の体に戻る事が出来た。


 戻れたのは良かった、だが全身から叫びたくなる程の痛みが走っていた。

 器に見合わない力だったんだろう。

 英雄の魂を肉体に宿し戦う。

 俺の弱過ぎる身体には大き過ぎた。

 少し侮っていたのかも知れない、英霊の力って奴を。


 くそっ……身体が痛過ぎて当分動けそうに無い。

 そのまま地面に倒れ込み、ただ苦痛に顔を歪め痛みが引くのを待った。

誤字がありましたら教えて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ