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英霊の召喚士  作者: 息抜きおじさん
1章 英霊と少年
4/9

第4話 乗り越える

息抜き更新

 「もうすぐ着くぞ!」


 厳つい冒険者が声を張り上げる。

 他の冒険者達もその声に応じる様に雄叫びを上げた。


 完全に場違いですよね俺。

 誰かを助けるとか、誰かの為にとかってのは、それを出来るだけの器がある奴がやるもんだ。

 勿論俺はそんな出来た人間じゃないし、そんな器でも無い。


 死なない様に頑張るしか無い。

 せっかく繋いだ命の糸を、たったの数時間で切る訳にはいかない。


 俺には帰りたい場所があるから。


 過ぎて行く時間の中で、何度も何度も自分に言い聞かせた。


 「あれだっ!」


 冒険者が指さす方に視線を向けた。

 小さな村から煙が上がり、沢山の人々が、何かから逃げる様に走っていた。


 少し目を凝らす。

 走り回る人の後ろに大きなぼやけた影が見えた。


 次第にぼやけた影の姿がはっきりとしてくる。

 豚の顔をした魔物。

 体長は2m近くあるかもしれない。

 そして手には大きな斧を携えていた。


 有り得ない、あんなのと戦うなんて有り得ないだろ。

 次第に俺の心が恐怖で染まって行く。

 逃げ出したい、今すぐに馬車から飛び降りて走り出したい。

 向かう先はきっと地獄。

 今まで味わった事の無い程の感情。


 「ビビってんのか?無理に戦えな何て言わねーよ。だがな、出来る事なら1人でも多く逃がしてやってくれ。それくらいなら出来るだろ?」


 俺の沈みきった表情から、全てを悟った様に冒険者が言った。

 無理に戦わなくて良いのなら、逃がすだけなら、俺でも出来るかもしれない。

 これから先、ずっと平和な日々の中で日本へ帰る手段を探す事が出来るだろうか?

 ただ闇雲に歩き回っていたら敬愛や楓さんに会えるだろうか?

 もしかしたら又俺達を攫いに来る奴が出てくるかも知れない。


 その中で俺には何が出来るだろうか。

 怯えて泣いて顔をぐちゃぐちゃにして、誰も助ける事が出来ず、自分も助からず死ぬ。

 そんな日がやって来るかもしれない。

 だから目の前の事から逃げちゃ駄目だ。

 恐怖から目を背けちゃ駄目だ。


 拳をぐっと握り、恐怖に怯え沈みきった自分の顔を殴りつける。

 めちゃくちゃ痛い。

 歯茎から血出てるし、頬も少し切れた。

 情けないけど多分涙も出てる。

 だからなんだってんだ。

 痛いから何だってんだ。

 生きる為に足掻くんだ。

 生きる為に戦うんだ。

 生きる為に、立ち上がるんだ。


 瞳に溜まった涙を拭い、冒険者を見る。


 「やりますっ!俺戦います!役に立つかは分からないけど」


 「沈んだり泣いたり叫んだり覚悟決めたり、忙しい奴だなお前は。だけどな、1回覚悟決めた男は強いぜ。頼りにしてるぞ泣き虫」


 誰が泣き虫だよ畜生っ!

 もういい、俺は開き直ってる。

 あれは覚悟なんかじゃない。

 一周回って諦めたんだよ馬鹿!

 勿論死ぬつもりなんて無いけどな!


 村の近くに馬車を止めて、冒険者達は走り出した。

 驚く程の速さで村へと走る冒険者達に俺はどんどん置いていかれる。


 なんだこの差?

 あの冒険者達どうなってんだ?


 俺が考えている内に、1人の冒険者が既に一体のオークを斬り飛ばしていた。

 胴体から真っ二つにされ、内臓を撒き散らしながら死に絶えた。


 他の冒険者も同様にオーク達を次々に切り倒していく。

 一振りで二体纏めて斬り捨てる人までいた。

 どっちが化け物か分からんなこれじゃ。


 俺はオークのいない方に向かって走り、村の中で逃げ遅れた人がいないか探す事にした。

 少しでも戦闘の無い所を選んだ。

 戦う=死と言う訳じゃないけど、俺の場合死に近い物がある気がする。


 オーク達を避ける様に村の奥へ奥へと入っていくが、周りを見渡す事は出来ない。

 何故なら、俺の足元には沢山の人の死体が転がっているからだ。

 殆ど視線を向ける事は出来なかったが、大半は男の人だった様な気がする。


 この世界では簡単に人が死ぬんだ。

 俺は異世界の恐ろしさを再認識していた。


 少し進むと死体が減った。

 変わりに破れた衣服や、夥しい血痕が辺りに散らばっている。

 此処でも沢山死んだんだろう。

 沈んでいく気持ちを押し殺すように足を進めていった。


 「いやっ……やめてっ………」


 「何?!誰かいるの?!」


 女性の悲鳴の様な声が聞こえ咄嗟に反応してしまった。

 ヤバイっ……大きな声を出してしまった。

 気配をころすように姿勢を低くして、足音を消しながら家屋の影に隠れた。


 少しの間隠れていたが、何かが近付いて来る事は無かった。

 一体何だったんだろうか?

 怖すぎるだっ……?!


 声を失ってしまう。

 あの時聞いた悲鳴はきっとこれだったんだ……

 俺の目の前には、全裸にされた女性の死体があった。

 下半身から酷く出血をしている事から、オークに遊ばれたんだろう。


 何で俺は隠れたんだ?

 何で俺は助けに行かなかったんだ?

 俺が臆病だからだ。

 俺が弱いからだ。


 身体から力が抜けて行く、そして膝から崩れ落ちた。


 「ごめんなざいっ……ごめんなざいっ……だずげられなぐてごめんなざいっ………」


 女性に手を合わし何度も何度も謝った。

 助けられ無かった後悔。

 助けに行かなかった後悔。

 頭の何処かにあった可能性、それを恐怖が隠し気付かないふりをした後悔。

 それらが頭の中を駆け巡る。


 何で俺はこんなんだよっ!!

 何でっ!何でっ!何でっ!何でっ!…………


 止めどなく溢れ出る後悔に苦しんでいた。

 その時だ、前の方から大きな足音が聞こえてきた。


 足音だ、こんな大きな足音何て此処にはアイツらしかいないよな。

 淀んだ瞳で前方を見上げると、思った通りオークがいた。


 それだけならまだ良かった。

 豚面を嬉しそうにフゴフゴと動かして、その片腕には半裸の女性を担いでいた。


 まただ、またやるんだ。

 また遊ぶんだな?

 また殺すんだな!


 身体の中から怒りが溢れてくるのを感じる。

 オークにだけじゃない。

 自分への怒りもだ。

 恐怖し、逃げ、隠れ、命を見放した自分への怒り。

 もうこんな思いはしたくない。

 目の前の命を見殺しにしたくない!!


 俺は鞘から剣を抜いた。


 恐怖し、怯え、泣きじゃくる弱い少年の姿は其処には無かった。


 「うおおぉぉぉぉぉ!!」


 雄叫びを上げ、オークへ向け駆け出す。

 俺に気付いたオークは、女を抱えたまま大きな斧を振りかざして来た。

 身体を翻して斧を避け、がら空きになった脇腹に短剣を突き刺した。


 だが所詮は短剣だ。

 その一撃で命を奪う事は出来なかったが確実にダメージを与える事が出来た。


 後は繰り返すだけだ。

 一瞬でも気を抜けば、直ぐに命を落としてしまう様な戦いの中で、何度も斧を避け、何度も短剣を突き刺した。


 戦いが始まってから数分たった頃だろうか、オークの動きが鈍くなり膝を付いた。

 今しか無い。

 俺は地面を蹴り上げて高く跳躍すると、オークの首目掛けて短剣を振り下ろした。

 オークの鮮血が飛び散る。

 少しの間雄叫びを上げていたが、直ぐにその声は枯れた。

 そして目からは光を失い絶命した。


 勝てた……勝てたぞ!

 今度こそ助ける事が出来た!


 オークの腕に抱き抱えられている女性を開放し、息がある事を確認した。

 生きてる……生きてるよ………ありがとう……


 助ける事の出来た感謝。

 生きていてくれた事への感謝。

 そんな暖かい感情が心に溢れていた。


 だけど戦いは終わった訳じゃない、まだオークはいるんだ。

 殺らなきゃ誰かが殺られる。


 その時俺は、馬車の中で冒険者から言われた言葉を思い出していた。

 「戦える奴が戦えない奴を助けるのは当たり前の事だろーが、今は少しでも戦力が欲しい。戦えるなら手伝え」


 戦えるのに戦わなかったんだ俺は。

 俺は戦えるんだ。

 俺はオークに勝ったんだ。

 決意の炎を瞳に灯し、駆け出した。




 あれからどれ位経っただろうか。

 何体も何体もオークを狩り続けた。

 身体中オークの返り血でベトベトになり気持ち悪い。

 言葉では表現しずらい肉の欠片もへばりついている。


 ………あぁ、もうやだ………


 「無事だったのか泣き虫!って、これ全部お前がやったのか?」


 泣き虫って呼ばないでください……


 「無我夢中で…」


 「そうか、ちゃんと戦ってくれたんだな。ありがとよ」


 お礼なんか言われる筋合い無い。

 俺は見殺しにしたんだ、助けられる命を。


 「何難しい顔してんだよ、終わったんだから喜ぶべきだろーが。まぁそんな事より井戸で血流して来い。ちょっと酷過ぎるわそれ」


 少しだけ汚い物を見る様な目で見られたのは気のせいだろうか?


 言われるがまま井戸に向かい、汚れを洗い流した。

 何でか分からないけど、少しだけ心の中の霏が晴れた気がした。


 身体を洗い終わって辺りを見渡すと、冒険者がオークの身体を解体していた。

 何してんだよ、気持ち悪いな。


 「何をしてるんですか?」


 「何ってそりゃ、魔石の回収と素材の回収だろ」


 「魔石?素材?何ですかそれは」


 「はぁ?!お前魔石も素材も知らないで魔物倒してたのか?」


 「ハハハハ……教えて貰っても良いですか?」


 「構わねーけどよ、魔石ってのは魔物の命みたいなもんだ。売れば金になる。強けりゃ強い程でかくて純度の高い魔石をもってるんだぜ。それと素材は言葉のままだ、魔物の身体には武器や防具に加工出来るもんがある。それを剥いで売れば、それも金になるんだ」


 「知りませんでしたよ、有難うございます」


 今まで倒したゴブリンの魔石と素材回収してないな、勿体無い事したかな。


 「お前もオーク倒したんだろ?ならとっとと回収して来いよ。ほっとくなんて勿体無いぜ」


 確かにそうだよな。

 でも死体捌く何て気持ち悪過ぎるよ本当に。


 「分かりました、行ってきます」


 冒険者からオークの解体の手解きを少しだけ受けて、俺は自分で倒した数体のオークから魔石と素材を回収した。


 解体中は吐き気との戦いだった。

 これから少しづつ慣れていかないとな。


 オークの解体が一通り終わると、冒険者達は街に帰ると言い出したので、一緒に乗せて行って貰えないか聞いてみる事にした。


 「俺も乗せて行って貰えませんか?」


 「別に構わねーぜ、色々頑張ってくれたみたいだしな」


 冒険者は快く了承してくれた。

 感謝しなくちゃな。




 馬車に揺られる中で考えている事があった。

 今どの辺にいるんだろうか?

 なるべく早く二人に合流したいし、何より1人は心細い。

 取り敢えず冒険者に確認してみた。


 「すいません、ここからメイリースってどっちに向かえば着きますか?」


 「ん?何でまたメイリースなんだよ。取り敢えずこっからだと西だな、舟を使って二週間って所だな」


 「は?船?二週間?」


 「何を驚いてんだよ?隣の大陸何だから当たり前だろ」


 「隣の大陸?!何でそんな遠くに?!」


 「さっきから何言ってんだよお前は」


 冒険者は不審そうな顔をして俺を見ていた。

 どう言う事だ?あの裂け目を通ったら隣の大陸まで飛んで来たって事か?

 まじかよ【ランダム】、理不尽過ぎだろ。


 「あの、それでメイリース行きの船にはどうやって乗ればいいんですかね?」


 「いや、乗れないぞ。メイリース行きの船に乗れんのは貴族や騎士、王家の人間だけだな。他には商人と高ランクの冒険者位だ」


 は?何その理不尽な感じ。


 「船に乗るだけなのに何で……」


 「は?当たり前だろ。海にはめちゃくちゃヤバイ魔物がうじゃうじゃいんだよ。だから優秀な騎士が貴族や王族を護衛しながらしか船は出せないんだ。浜から近い所で漁をする位なら問題無いが、沖まで出るとBランク以上の魔物しか出ないんだよ。まっ、冒険者の中にも例外がいるからな。高ランク冒険者なら商船の護衛とかで頻繁に船で大陸を行き来してるがな」


 「ならメイリースに行こうと思うなら商人になるか、高ランクの冒険者になるしかないって事ですか?」


 「そう言う事だな」


 何でそうなるんだよ?!

 難易度高すぎだろ俺の人生。


 とにかく街に着いてから考えよう。

 今は疲れて上手く頭が働かないし。


 「おいっ、起きろよ。着いたぞ」


 いつの間にか眠ってしまっていた俺は、厳つい冒険者に起こされた。


 「あっ、すいません。有難うございます」


 「取り敢えず身分証だしとけよ」


 「身分証?」


 「持ってないとか言わないよな?」


 「ハハハハ…………持ってません」


 「なんで持ってねんだよ!どんな田舎から出てきたんだお前は!」


 「いやー……ハハハハ……」


 「取り敢えず門兵には俺から話しを通しとくから、後で身分証作ったら見せに行けよ。分かったな」


 「有難うございます!助かります!」


 助かった。

 違法滞在とかで処罰受けるのかと思ってしまった。

 感謝です冒険者様。


 門の所に着くと、兵士に俺の事を説明してくれていた。

 少し会話した後に、後で身分証見せに来てねと優しく言われた。

 何か思ってたのと全然違うな。


 「それで、身分証ってどうやって作るんですか?」


 「そんなんも知らねーのか?!はぁ…あのな、先ずはこの街の住人になるかだ。この街に住んでこの街で働いて税を収める。それが身分証を得る一つの方法だ。そしてもう一つは、冒険者になるかだ。冒険者の持つギルドカードは身分証の代わりにもなるからな。まぁいつかメイリースに行きたいってんなら冒険者の方がお薦めだな」


 「この街に住んで働く何て事は出来ませんからね、冒険者しかないか……」


 「冒険者になんのか?ならこのまま一緒にギルドまで行くか」


 「はいっ!お願いします」


 俺は冒険者一行に付いてそのままギルドに向かう事にした。


 「ここがギルドだ、でけーだろ。ここいらの街じゃ1番でかいギルドだからな」


 そこには三階建ての立派なビルの様な物が建っていた。

 これがギルドか、デカ過ぎだろ。

 何人いんだよ冒険者って。


 「んじゃ、入るぞ」


 俺は頷き、後ろをついて行った。


 扉を開けると、そこはだだっ広い広間に丸いテーブルと椅子が幾つも並べてあった。

 そして壁には大量の張り紙があった。


 「取り敢えず奥のカウンターに行くぞ、そこで登録してこい。俺達はさっきの依頼の精算と魔石を売ってくるから 」


 言われた通り奥のカウンターに向かい声を掛けた。


 「すいません、冒険者登録したいんですが」


 「冒険者登録かい?若いのに働き者だねぇ」


 優しい顔で微笑む、眼鏡を掛けた青年が対応してくれた。


 「おっとそうだ、僕の名前はパトリック。ギルドで受付の仕事をしてるんだ。宜しくね」


 「俺は斎賀宏太です、宜しくお願いします」


 「サイガコウタ?珍しい名前だね。」


 「宏太が名前なので、宏太って呼んでください」


 「了解、宏太君だね。それじゃ宏太君、早速登録するから手の平をその玉の上に置いてくれるかな」


 玉?これかな?

 カウンターの真ん中に置いてある水晶の様な玉に手の平を乗せてみた。

 すると玉は光だし、文字を浮かべ始めた。

 パトリックはその文字を紙に書いていた。


 「うわー、宏太君若いのに凄く強いね?いっぱい訓練とかしたのかい?」


 ん?何の話だ?

 俺が不思議そうな顔をしていると、パトリックがさっき書いていた紙を見せてくれた。


 Name:斎賀宏太(さいがこうた) Age:16

 Job:学生 Birthplace:日本 Lv.18

 HP:880 MP:520

 Strength:215

 Defense:175

 Vitality:195

 Quickness:190

  Magic:150

 Ap:85

 〈※※※※〉

 【※※※※※※※】【※※※※】 

 【※※※※※※】


 めちゃくちゃレベル上がってる!!

 何よりステータスの成長がヤバイぞ。

 そりゃ、後半オークを倒すのがどんどん楽になる訳だ。

 でもアビリティの欄が全部文字化けしてて見えないな、何でだ?


 「16歳でここまで鍛えてるなんて有名な武家の出とかだったりする?正直驚きだよ。それよりこの文字がボケてる所一体何なんだろ?初めて見たよ」


 そうか、この世界にはアビリティってのが存在しないんだった。

 もしかしてバレたら不味いとかあるのかな……


 「もしかしたら故障かなぁ?まぁ宏太君みたいな強い子なら大歓迎だよ。取り敢えずギルドカード作ってくるから待っててね」


 全く詮索されなかった。

 相手がパトリックさんで良かった。


 でも今回の件でかなり強くなる事が出来たな。

 きっと成長ボーナスの恩恵がでかいんだろうけど、これなら今までよりは安全に戦う事が出来るかもしれないな。


 1人安堵の表情を浮かべる。


 「宏太君〜出来たよ〜。はいっ、これが宏太君のギルドカードね。冒険者について説明してなかったけど聞くかい?今更だけどね」


 「はい、是非聞かせて下さい」


 パトリックさんは色々と説明してくれた。

 冒険者はランク制である事。

 最初はGから始まり、クエストをこなした数や内容によってランクが上がる。

 最も高いランクがSSSで、この大陸には1人しかいないらしい。

 そしてDランクになればダンジョンに潜れる権利が貰えるらしい。

 先ずダンジョンってのが初耳何ですがとは言えなかった。

 こうして一通りの説明を受けた。


 「それで何ですがパトリックさん、他の大陸に行く為のクエストを受けるにはどれだけのランクが必要なんですかね?」


 「いきなりそんか高みを目指すなんて将来有望ですね、まぁ最低でもBランクって所ですかね」


 「Bですか……先は長そうですね……」


 「本来ならGランクの冒険者がBに至るまでには数年の期間がかかります、それよりもBになれずにCで止まる冒険者が大半なんですけどね。ですが稀に現れるんですよ、1年程でBまで上がる天才って呼ばれる方が。宏太君にはその天才さん達と同じになって欲しいもんですね〜」


 1年だと?天才でも1年掛かるのか?!

 そんか悠長な事言ってられない。

 とにかく死に物狂いでクエストを受けなきゃ、無駄に時間を過ごす理由には行かないし。


 「そう言えばさっき聞いたんですけど、宏太君もオーク討伐の手伝いをしてくれたって本当ですか? 」


 「えっ?あぁ、成り行きですけど。八体程しか倒して無いんですが、あっそうだ、魔石の買取りお願いしたいんですけど」


 「八体?!いやー、頑張りましたね。魔石の買取りですね、了解しました。少々お待ち下さい」


 パトリックは俺から魔石を受け取るとカウンターの奥へと消えて行った。


 数分程待っていると、パトリックが小さな袋を持って戻って来た。


 「宏太君、これが魔石の買取額ですがよろしいですか?」


 パトリックが袋を開けると、中には銀貨が1枚入っていた。

 相当高くないか魔石?


 「え?オークの魔石ってこんなに高値で買い取って貰えるんですか?」


 「オークは低ランクの魔物ですけど、群れで行動するのでなかなか危険なんですよ。だから少しだけ低ランクの中では割高ですね。あっそれとギルドカードをお借りしてよろしいですか?」


 パトリックに言われるがまま、ギルドカードを渡した。

 すると俺のギルドカードをさっき冒険者登録する時に使った玉に翳し始めた。

 ギルドカードが淡い光を帯びて、数秒でその光は消えて行った。


 「はい、宏太君。ランクアップおめでと〜」


 「はい?」


 「オークはね、Dランク以上の冒険者にしか討伐依頼を受ける事は出来ないんだよ、受けさせないんじゃなくて、D以下の冒険者じゃ勝てないのさ。だからオークを討伐した宏太君にはDランクになる資格があるって事だよ〜。他の冒険者の証言もあるし、皆の意見が一致してランクアップを決めました」


 「いきなりD何てなったら反感買いませんかね?」


 「冒険者は完全実利主義だから大丈夫だよ。気にする人の方が少ない筈だよ」


 「それは、まぁ有難い話ですね」




 パトリックさんと少しだけ話しをした後に、一緒にオークを討伐した冒険者の人達にお礼を言いに行った。

 皆それぞれに俺を褒めてくれた。

 弱いと思ってたらそこそこ出来る奴だったとか、泣き虫の腰抜けかと思ってたら案外強かっただの。

 最初の印象悪くない?!


 そしてまた一緒にクエスト受けようぜと言われた、何でかな……凄く嬉しかった。

 その後皆は飲みに行くと言ったので、今日は疲れたからもう休みますと伝えた。


 ギルドを出る前に安い宿を聞いて向かう事にした。

 本当に激動の1日だったな。


 今日は爆睡できそうだ。

誤字がありましたら教えて下さい。

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