少年と少女
あるクリスマスイブの日。
一人の少年が、一人の少女に出会った。
金色の瞳をもつ少女──……
少女は悲しそうだった。
辛そうだった。
寂しそうだった。
雪降る夜空を見上げ、その頬を涙が伝っていた……。
少年は、少女を放っておくことができなかった。
何故か、初めて会った気がしなかった。
自分にとって、とても大切な人のような気がした──……
「君は、どうして泣いているの?」
少年は少女にそう問いかけた。
すると、少女は俯いて小さく呟いた。
「私は、一人だから。皆、いないの……」
少女の涙が白い世界に、ポツリ……ポツリ……と落ちていく。
少女はとても儚くて、すごく小さく見えた。
白い世界に、黒い闇に、消えてしまいそうだった……。
「大丈夫。僕がいるよ。……友達になろう?」
そう言うと、少女は輝くその瞳で少年を見て頷いた。
その日二人は、たくさんの時間を共に過ごし、たくさん笑いあった。
二人は、二人で過ごす〖幸せな時間〗を知った。
次の日。
少年が少女の家に行くと、彼女の泣き声が聞こえた。
少年は少女に、自分が来たことを大声で知らせた。
するとドアを開け、中から少女が涙を拭いながら出てきた。
少年はそんな少女を優しく抱き締め、問いかけた。
「どうして、泣いてるの?」と。
すると少女はこう答えた。
「一人が恐かったから……」
少年は、一層強く少女を抱き締めた。
消えてしまわないように。
少女の存在を、確かめるように……。
そして──
「大丈夫。君は一人じゃない。僕がいるよ」
そう言って、少女の涙を優しく拭った。
少女は安心し、笑みを浮かべて少年に言った。
「貴方は優しい。貴方は温かい。
貴方は人を、幸せにする。
貴方は私を──
──幸せにしてくれる」
そして少女は少年の黒い瞳を見つめて、口にする。
「私は、貴方が好きだよ」
その言葉を。
あるクリスマスの日。
一人の少女が、一人の少年に恋をした。
そして。
一人の少年は、一人の少女に、既に恋をしていた。
少女は少年に言ってくれた。
『優しい』と。
『温かい』と。
『人を、幸せにする』と。
『自分を──
──幸せにしてくれる』と。
少年は思った。
“少女の傍にいたい”と。
“少女を守りたい”と。
“少女を──
──幸せにしたい”と。
少女が泣いているとき、傍にいて、その涙を拭うことができた。
少女が【孤独】を恐がっているとき、その【孤独】から救い、守ることができた。
そして。
少女が、幸せだと言った。
少年が自分を幸せにしてくれる、と。
そう言って、笑ってくれた。
まるで、花が咲いたかのように。
満面の笑みで、そう言った。
少年は少女のために何かをすることができた。
そして、その喜びを感じることができた。
次の日。
少年と少女は、ある物語を知った。
──ある一人の天使の少女と、ある一人の悪魔の少年の、物語を。
そして二人は思った。
『自分達は、彼等の生まれ変わりなのかも知れない』と。
その夜。
空は黒い翼に覆われたかのように真っ黒で、白い羽のような雪がひらひらと舞っていた──……
少年と少女は、そんな空に手を伸ばした。
すると。
少女には、白い羽が。
少年には、黒い羽が。
一枚ずつ、舞い降りてきた。
二人は笑いあった。
漆黒の空の下で、笑いあった。
純白の世界で、笑いあった。
幸せな想いに包まれて。
二人は口付けを交わした。
あの時とは違う、幸せな口付けを──……
………─────
神は言った。
「そなた達に授けよう。
──永久に続く、幸せを──……」
………────
これは……
聖なる夜、白い世界で起きた──
──不思議で、幸せな、恋の物語──……
ある一人の天使の少女と、ある一人の悪魔の少年の、恋の物語──……
この物語は途絶えること無く、いつまでも受け継がれていく……。
そして。
この二人の幸せに──
──終わりは無い──……
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