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死と再生と アナタ 

キーワード。

乙女ゲー転生トリップ・ビッチ・マチズモ全否定・メイドさん・死ネタ・そして世界は、ループする



私・お嬢様。

現実:逆ハーを狙うビッチ。魔力がゲーム設定時よりも高い。

ゲーム:魔力が高いため、貴族たちが通う学園に特待生として通うことになった平民の少女。


ミレーヌ。

私のメイドさん。

君との未来(あした)を望む恋愛ADV。

【永遠の終わり】 


求めるなら、与えてみせよ。

求むるなら、足掻いてみせよ。


求めたのなら、求め続けよ――。



『死と再生と アナタ 』



この世界が、乙女ゲームなんだって知ったときは、歓喜したわ!

しかも、今の私はゲームでいうところのヒロインなんだもの!!興奮しない筈がないわよね?


でもね、ここが完全なゲームの世界だって、そう思い込んでるわけじゃないのよ?

ゲームだったら、決められた台詞がこの口から溢れてくるんじゃないかって思ったけど、今のところ自分が思ったことを口に出来るし、行動も起こせるみたい。

ということは、その一瞬一瞬で選択し続けてるってことよね?ゲームの設定に囚われていない。


私は、自由!!


だからね、ゲームにはないことをしてやろうって思ったの!攻略対象者の心を奪って、私の虜にするの。

私の一挙一動に振り回されるイケメンたち!あははは!!想像しただけで、さいっこうの気分だわ!!!


*  *  *


この世界では、全ての人に魔力があって、魔法を行使することが出来るの。

魔力の高さは、王族、貴族、そして平民の順なんだけど、私は平民にしては、魔力が多いっていう設定だったのよね。

そのあたりは、この現実でも設定通りだったから、貴族たちが通う学園に特待生として入学することになったの。そこで、彼らに出会った。


最初は、特待生という物珍しさ。

そこから徐々に距離を縮めていったものだわ。強引な手を使ってね。

だって、ここに通う貴族の皆さんは、特待生の私にとても親切だったんだもの。正直な話、親切にされたら困るのよ。

だから、ゲームには存在しない悪役や、ライバルキャラを意図的に作り出したの。

私の好感度を上げる為、沢山の人に罪を被せてやったものだわ。それが、男の人だろうと、女の人だろうと私には関係ない。

私のこの行動が、相手の人生を狂わせるものだとしても。相手が罪に問われるべきじゃない、善人であったとしても。

私は止まらなかった。ううん、止まるわけにはいかなかった。だって、皆を私のものにするって決めたから。

例えどれだけの罪を重ね、沢山の人に恨まれても。私は、私の思うままに自由に生きるんだって。

嘘と偽善で塗り固められた、クソの上を歩くことになんの躊躇いもないわ。

今の私には、正義やら道徳なんてものはクソくらえよ。


そうして私は、張り巡らせた罠を巧妙に隠しながら、彼らを手に入れたわ。

あのときは、本当に心が震えるくらいに歓喜したものだわ!手に入れたかったものを手に入れたんだもの!!

ああ、勿論私が犯人だとは気付かれないようにしたわよ?

こういうとき、魔力が多いって便利よね。設定だと、公爵家ぐらいの魔力しかなかったんだけど、嬉しいことに王族の更に上をいっているみたいなのよ。

そこまであると、王族ですら私がしていることは分からない。けど、疑問に持たれたときに真っ先に疑われるのは私よね?だから、設定通り魔力自体、公爵家止まりにして、本来の力は隠しておいたの。


こうして私は彼らを侍らせながら、毎日を楽しく過ごしていたわ。でもね、最近ふと思ったの。このままでいいのかな?って。

私をちやほやしてくれるのは、この長い生において一瞬のこと。それが、永遠に続くとは限らないと思うの。

それに、皆を侍らせているだけのままだったら、皆のご両親たちに不信感を抱かせてしまうでしょう?

本当なら、逆ハーレムを築いて、皆を私のセフレにしちゃってもいいんだけど、彼らの身分がそれを許さない。

私の方が愛人扱いになってしまうわ。そんなの嫌なんだもの。私に振り回される彼らが愛おしいのに。

しょうがないから、皆の中から一人を選んだわ。卒業するギリギリにね。

一番スペックが高くて、前世から好きだったキャラ。


彼との婚約話も持ち上がっているから、ご両親の好感度も上々ってことよね?

公爵家という立場だから、大丈夫かな?って思ったりもしたけど、私のスペックが良かったみたい。

貴族社会って、魔力の値に縛られているのよね。魔力が高ければ高い程いい!みたいな。

まぁ、その点は、大丈夫なのよね。なんてったって、スペックは高いんだし。

それにね、彼のご両親が言うには、彼には、彼が愛した人と結婚して貰いたいって言ってたから、魔力の高さや、愛し合っているという条件を満たしている私は、大丈夫みたいよ?



自分のこれからの未来を想像していたら、

「お探ししましたよ?お嬢様」

ぱっと振り返ると、サテン生地に薔薇のレースを縁どった白の日傘を差し、ロング丈の黒のワンピースの上に白色のエプロンを身に付けたメイド姿の女性。


「ミレーヌ!」

彼女の名前はミレーヌ。私の部屋付きメイドさんよ。ゲームだったら、この人は私のメイドさんじゃなかったわ。

設定通りなら、私と同じくらいの子で、ゆくゆくは親友になる少女。

ときにヒロインを慰め、ときにヒロインの背中を押してくれる素敵な女の子。

そんな少女の代わりにいたのが、この長い茶色の髪を三つ編みにして、レンズが分厚いのか、光を反射しているせいなのか分からないけど、瞳を見ることが出来ない眼鏡をかけた女性。

ゲームに出て来なかった人間が出てくるってことは、ゲームの世界通りじゃないんだって、よりいっそう思ったものだわ。


それにしても珍しいわね?私を探していただなんて。最初に顔を合わせてから会っていなかったのに。

彼女、ものすっごく優秀なのよ?気配も感じさせないで、私の思ったことを先回りしてこなすの。

まるで空気のような存在だったわ。


長いこと思考の海に沈んでいたら、くすくすと笑う声が聞こえたの。

顔を上げたら、くるくると日傘を回すミレーヌの姿。その目元は、日傘に隠されていて、少し不気味だわ。

思わず後ずさると、ようやくミレーヌの笑い声が止んだけど、それは更に私の恐怖心を煽るだけ。


ぴたりと、日傘を回す手を止めたミレーヌの瞳は、眼鏡のレンズに遮断されていて見えなかったの。

「貴女が例え、誰かを貶めようとも。それで、誰かの家が潰れてしまおうとも。

ワタクシは、貴女が素晴らしい人間だと知っております。ワタクシは、常々思っていたのでございます。

どうして、この世の中にはマチズモが存在するのかと。

女性は、強くたくましい生き物です。子を産むため、強いのです。

男なんて生き物は、所詮種馬のような存在にしかすぎません。少しの存在だけで事足りるというもの。

だというのに、女性という存在の上に立とうとしますでしょう?

女性から生まれた身だということも忘れ、か弱い女性を守るためだけに生まれた存在だというのに、その力で女性を嬲ろうなどと、なんて卑しい存在なのかしら」

ぎりぎりと歯ぎしりするミレーヌは、少し落ち着いたのか、穏やかな声で私に話しかけてきたけど、そのギャップが、心の底から怖かったの。



「……あら?申し訳御座いません。話が逸れてしまいましたね?

ワタクシが何を言いたいかと申しますと、女性として男共を弄び、その為なら犠牲を厭わない冷酷さ。

正義も何もない、その非情さに惚れ惚れ致しましたわ。あのときの貴女は、それはそれは素晴らしかった」

空を仰ぐように恍惚な笑みを浮かべたミレーヌが、再び私を見た瞬間。背筋に冷たいものが走った。

一歩、また一歩と後ずさる私を気にも留めず、ミレーヌは、口元だけを私に見せるように、


「だというのに貴女は、一人の男に下ろうというではありませんか」

憎憎しげに吐き出された言葉。

「そんなこと、許せる筈がないでしょう?」


ちらりと見えた、彼女の瞳。昏く澱んだ瞳には、何も映っていないかのようだった。

それでも、肌で感じたの。彼女は私だけを見ているって。

逃げ出したいと思っても、恐怖で足が地面に縫い付けられているみたいだった。

はくはくと、声にはならない音が口から漏れ、泣きそうになる私に向かって、犬歯を剥き出しにして嗤うミレーヌ。

歯と歯の間を伝う銀糸の色を、私は見た。


――それが、私の最期の記憶。



*  *  *



「貴女は、もう用済みです」

無常にも告げられた言葉は耳にしながら、少女の喉元は掻き切られた。

メイドの女性が手に持ったナイフによって。

閉じていた傘をぱっ、と開き、ナイフが抜かれた箇所から吹き出る血潮を受け止めれば、白から紅へと染まる日傘。


崩れ落ちた少女の華奢な身体を見下ろしながら、

「もう少し、私を愉しませて欲しかったものですね」

酷く冷めた声で呟いた。

感情の篭らない瞳で少女の姿を数秒だけ見つめると、汚れ一つついていないメイド服の裾を靡かせるように踵を返した。


「んふふ。さて、次はどのような女性が現れてくれるのでしょう?今度こそは、ビッチであり続けて欲しいものですね。


でないと、――また、殺してしまいます」



血だまりの中に、くるくると回る紅に染まった日傘。それが、徐々に白へと戻り、血だまりも消えていく。

こうして、世界は再び廻る。新たなヒロインを生み出して。




新たな、犠牲者を生み出して。




『死と再生と アナタ 』 了

自分の好きな漫画家さんが、随分と昔に言っていたんです。


ビッチ萌えと。


あの当時は、ビッチの意味が分からなかったんですが、久しぶりに読んだら、そういう考えもあるのかって思いましたね。

とはいえ、流石に卑怯な行為や、外道に走るだとか、開口一番に男共を食いちらかしてえええ!とか、素で言っちゃうような子は嫌ですけどね(笑)

二次元だからこそ萌えるのかな?と思ってもみたり。


それと、もう一つ印象的だったのが、身体の弱い女の子をヒロインにすることは、マチズモの裏返し。という言葉。

そこから、本来強いものを、わざわざ弱いものにして、優位に立ちたいという、その思想を全否定する女性が書きたくなりました。

で、その人が男嫌いをこじらせたというか、男という存在を全否定するような人物にしたくて書いたら、暴走してしまいました。ちょっと、やり過ぎたような気がしなくもないです。

ええと、それで。色々と歪んでいる彼女が、ヒロインの行動にときめいちゃうという、そんな話が書きたくて書きました。


最後に殺したのは、最終的に自分の保身に走って、男のもとに身を寄せようとするヒロインが気に食わなかったという流れです。一応。

あれだけやりたい放題していたのに、最後には男の庇護下に身を委ねようとする少女が見たくなくて殺した。というのが、メイドさんの心境に近いかな?と思ってもみたり(その辺り、全くと言っていいほど考えていなかったもので)


私としては、ちやほやされた上で一人の人をちゃっかり選んでしまうような狡猾さは、メイドさんのいう強くたくましい女性に入ると思うのですが(その強かさっぷりが)そういうのは、お好きじゃなかったようです。メイドさんは。

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