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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第八話 憧れた人を思い出した

シモンたちの町を南下しいった。

南下すると言ってもそこには1つ大きな山があり山をこえなければ南の町に着くのは難しい。

自然と減った会話と、アルトとテナの表情。

二人を見て安心したのは、二人の間に黙っていても気まずい雰囲気がなく、ただ歩いていけることだった。


僕は色々考えた。

今頃、母は何をしているのか。

心配していないか。

父は僕を探しに行ってはいないか。

学校は??

学校はどうなっているのだろうか。


この世界は、僕の感情を隔てるものがなかった。

自分のしたいようにしても、アルトとテナは否定しない。

ありのままの音を奏でる楽器のように、自分の気持ちが驚くほどにはっきりしていた。

悪いことは悪いとはっきりと言える。

自分の思うとおりに行動することができる。

誰かの力になれる。


「元の世界でも、これぐらい自分にもまわりにも正直になれればいいのにな・・・・。」


思わず声に出してしまった。


昔から、自分の意見をはっきりと言えるタイプではなかった。

人見知りはしないけど、自分から話しかけたりするタイプじゃないし、あまり人と話そうとも思っていなかった。

流行っていた遊びについていくわけでもなくて友達も少なかった。

小学校の頃なんかはサッカーのアニメが大流行していたいてたから周りはみんなサッカー少年で。

僕みたいなインドア派は結構少なかった。


それでも僕は良かったんだ。

ピアノが、楽器が僕の遊び道具だったから。

・・・・でも、寂しくないわけじゃなかった。

僕も僕の考えが言えれば、誰かは一緒に音楽をしてくれたかもしれない。


とりあえず、いつもにこにこしてた。

いじめられるのは嫌だった。

優しい人のふりしてた。

嫌なことも嫌って正直に言えなかった。

僕は、なんて最低な人間なんだろうな・・・・・・。


そんなことを考えていた時、僕は思い出した。

とあるクラスメイトを。


(春日 夜羽よはね


癖のある長い髪。

いつもツインテールにしてる、強気な女の子。


(そうだ、あの子はいつも自分に正直だった。)


物事をはっきりと言うタイプだった。

自分の意見はちゃんと言う人だった。

それだからか、彼女はクラスの女子の嫌われものだった。

けれど、僕は彼女のその姿に憧れた。

それに、正義感がとても強かった。

いじめられてる子を見つけたら、必ず助けていた。

次に自分がいじめのターゲットになるとしても。

嫌がらせを嫌がらせで返すタイプではなかった。

それも、僕にはできないって思っていた。

僕もそんな風になれたらいいのに。なんて、どれほど思ったか。


自分の意見は言えない。

にこにこして頷いて。

彼女とは正反対。

まわりの空気に流されて、毎回嫌気がさして。

だからって自分がハブとかにされるのはいやで、いじめとかも見て見ぬふりして。


だから僕は家の楽器庫好きだった。

誰にも邪魔されない自分の空間が、そこにはあったから。


(僕は、なんて臆病者なんだろうな。)


嫌われるのが怖かった。

学校で自分の存在が否定されるのが怖くて。

身を守りたい一心で空気に溶け込んでいくように自分を溶け込ませた。


僕は、自分の右腕に触れた。


(もしも自分の世界でこの聖跡あかしが現れたら、どうしたかな。

僕は、この世界とおんなじように、自分の気持ちを言えるかな?)


聖跡あかしは何も答えない。

聖跡あかしはただ、僕の腕にしっかりと刻まれていた。


(早く、自分の能力ちからを知りたい。)


もし、知ることができたなら、

もし、操ることができたなら、

僕は自分に誇りが持てる気がした。


(音感以外なんもないもんな、僕は。)


ピアノ弾けることだけが、僕のなんとなくまわりに言える特技だった。


幼い頃、ピアノを馬鹿にされたことがあった。

ピアノは女の子の習い事、なんて思われやすいからだ。

そのうえ女顔なものだから尚更だった。


僕が苛められて泣きべそをかいて家に帰ると曾祖母がいた。

そして、右腕におまじないをかけてくれた。

それを僕は”右腕のおまじない“ってそのまま名付けて、悲しいときはいつもおまじないをした。


・・・・あれ?


(よく思い出してみなくちゃ。)


曾祖母はどうやっておまじないをしてくれた?

腕に指で何かを書いていた気がする。

ぐるぐるってしたあとに、十字をきったような見えないけど、そんな気がする。


僕は慌てて自分の聖跡を見た。

歩いていた足を止めた。


「水色?」


そんな僕に気がついたアルトとテナも足を止める。


僕は右腕を見つめる。

ぐるぐるしてから上にのびて縦に伸びた楕円。

その線をしたにもってきて左にはらう。

ト音記号。

それに上から十字をきる。


それはまさしく聖跡の形。

僕は恐る恐る聖跡をなぞった。


(そうだ、この位置・・・・右腕のおまじない・・・・)


なぞったその時、音が聞こえた。


ゲー・・・・?」


間違いないと思う。

ふとした瞬間に、“ソ”の音が聞こえた。


(・・・・そういえば、シモンに会うまえにも、何でだかわからないけど音が聞こえた・・・)


町からはずっと離れていた筈なのに聞こえた、トランペットの音。


まさか?

(今度はなんだろう?あの音・・・・オーボエみたいな・・・リードの独特な音。気のせいかな?)


「水色君?どうしました?」


テナにそう言われて、僕はハッとした。


「次の街まで、あとどのくらい??」

「まだシモンの町を出たばかりですからね。疲れました?」

「ううん、大丈夫なんだけど・・・・音がして」

「音?」

「うん。オーボエみたいな音で、ゲーだった」

「音程もわかったのか!?」

「うん」


アルトがそう言って、ウーンと考える。

テナも何かを思い出したように呟いた。


「絶対音感・・・・」


僕はテナを見つめる。

すると、テナは僕に向きなおった。


「もしかして、水色君。君は伝説の娘と同じ能力ちからを持ってるんじゃありませんか?

僕らの能力は、元々は楽譜を守ために娘が楽譜に分配した能力ですからね。

それを考えたら歌を歌ったときに楽譜が光だしたのも合点がいく気がします。ね、アルト兄さん?」

「確かに」


僕は目を見開いた。

つまり、僕は一度能力ちからを発動したことがあるということだろうか。


「伝説の娘の能力ちからって・・・・・」


まさかとは思った。

確かに僕は音楽は大好きだけれど。



「・・・・・・絶対音感・・・・・?」




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