第六話 郵便ラッパと錬金術師
ラッパの音が聞こえてきた気がした
真っ直ぐに響く、独特な音
唇の振動から音に変わる、あのなんとも言えない音
でも、なんで急にそう感じたんだろう――――――?
「城下町を出たのはいいですが、当てがありませからねぇ。どうします?」
翌日、僕たち三人は城下町を出た。
しかし僕はこの世界のことはわからないし、アルトもテナも街を離れたのは初めてだという。
「地図をみると、先ずは西から行ったほうがいい。西はまだ範囲も狭められるし、村も伝統あるところが多いしな。」
「そうですね。そうしましょう。」
旅とは言っても、全部が徒歩なわけじゃない。
馬車が拾える時は馬車を拾うし、ヒッチハイクして荷台に乗せてもらったり。
この世界の人は、優しい人が多いようだった。
しかし、僕が住む世界とは違う。
車はないし、電車もない。
辛うじて汽車があるくらいで、他にはなにもなかった。
「アルトの能力で飛んでいければいいんですがね。」
「悪かったな。知らない場所には飛べねぇし、そんな長距離二人も抱えて飛べねぇんだよ。」
「そうなんだ。」
アルトは風を操る能力が使える。
テナも何かしらの能力を持っているはずだ。
知らないけど。
「お前こそ、なんかないのかよ」
「ありませんね。僕が役にたつとしたら暖が取れるくらいですかね。」
今聞けるチャンス??
「テナの能力は何なの?」
「私ですか。私は焔を操れるんですよ」
「すごい!!」
「アルトと二人でしたら、結構強いですよ私たち。」
「風を上手く扱えば焔は力を増すからな。」
二人はとても仲のよい双子だった。
まだ少ししかともに生活してないけど、それだけはよくわかる。
それにしても、僕の能力は何なのだろう?
「水色君の能力が早くわかるといいですよね。」
「そうなんだよね」
「水色君は、何か特技とかあります??何故だか自分にしかない能力とか心当たりありませをんかね。」
「うーん」
正直、なにも思いつかなかった。
「ないかも・・・・。だって僕特技?とかないし。」
「そうなんですね。じゃあ趣味は?」
「趣味はピアノかなぁ・・・・。あと歌?」
「へぇ!それはすごいですね!」
そんな風に話しているうちに隣町の近況まできていた。
城下町からこの村まではかなり遠かった。
汽車も通ってなかったし徒歩も馬車も結構長かった。
「やっとついたね」
「宿探すか。」
ついた町は小さな広場と小さな店があり、郵便屋が広場で手紙を渡している。
腰にはポストホルンを引っかけていた。
郵便屋は長髪を後ろに束ねていて、とてもハンサムであった。
紳士的な振る舞いで丁寧に仕事をこなしている。
広場で配る分は終わったのか、郵便君は荷物を纏めていた。
「郵便屋に聞こうよ」
「はぁ?なんで」
「郵便届ける人なんだから町に詳しいよ、きっと。」
「わぁ、水色君ナイスアイデアですね!そうしましょう。」
僕たちは早速郵便屋に声をかけた。
「すみません」
「はい。なんでしょうか」
郵便屋の少年はにこやかに僕たちにそう答えた。
そして、アルトとテナを見つめていた。
僕はなんだかわからずになにも言えなかったし、アルトとテナも不思議がった。
すると、郵便屋は再びにこやかに笑う。
「もしかして、宿探してます?」
僕は声も出さずに頷くと、郵便屋は迷った様子もなくこう言った。
「僕の家で宜しければいらっしゃいますか。」
僕は迷わずに「じゃあ、お言葉に甘えて!」と言ってしまったが、アルトとテナは不安そうな顔で僕を見ていた。
「僕は水色です。こっちがアルトで、こっちがテナ」
どうしてこんなにトントン拍子に事が進むのだろうか。
この人は、何かを知っている?
それに、アルトもテナも気づいているようだった。
(なんなんだ、こいつ)
(兄さん、まさかですけど脱走してから賞金首になったとか勘弁してくださいよ?)
(あり得るよな、それ。けどよ、こんな西の端にある村にまで触れがまわるもんか??)
(それこそあり得ますよ。兵隊が国をあげて十二使徒を探してるんですよ)
二人のこそこそとした会話をよそに、郵便屋は郵便局の二階に僕らを案内した。
「こちらです。僕ら郵便局の二階が家なんで、少しせまいんですけど」
家では二人の男性が二人で料理をしていた。
「僕はシモン・レミギウス・クラベルといいます。」
郵便屋は名乗った。
そして料理をしていた二人は手を止めて、僕らの方へとやってきた。
一人は煙草を加えて、少し髭が不精している。
「スティーブン・アシュベリーだ。ステファンって呼んでくれな。」
それから背が高く褐色の肌。
金髪の美男がいた。
「リオです。よろしくね」
リオと名乗った男性は凄く感じのよい男性だった。
僕とアルトとテナはテーブルに招かれると、リオがニコリと笑ってスープを出してくれた。
「どこから来たの?この町って森を隔てた西側にあるから大変じゃなかった?」
「はい、まぁ」
「オレら、怪しくないからね。むしろ仲間かも。」
曖昧な返事に対しリオがそうゆうと、シモンが僕たちの向かい側に座った。
そして、テーブルの上に右手をのせる。
手のひらを上にして、シモンは言った。
「テーブルの上に手を乗せてくださいますか。あなた方の旅路を占いましょう」
アルトは僕を見て首を横にする。
アルトはテナを見た。
テナはただ僕を見つめている。そして首を横に振った。
こうゆうときの状況判断はテナの役割らしい。
しかし、それを無視して僕はシモンの手に自分の右手を重ねた。
その瞬間。体の中から何か沸き上がるものを感じた。
それに、この世界に来た時のように聖跡が熱い。
自分とシモンとの波長がシンクロするような、不思議な感覚。
ずっと昔から知っているような、懐かしい感じ。
まさか。
「貴方は・・・・」
「あ、わかったかな?僕があなた方を家に招いた訳が。」
シモンは爽やかな笑顔で言った。
アルトとテナは不思議そうに僕を見た。
すると、シモンはシャツの袖を捲った。
「僕は十二使徒です。」
アルトとテナは目を見開いた。
そして、ステファンもテーブルにくるとシャツを捲った。
「俺もだ。あんたと同じ、追われてる身だ。」
ステファンはアルトにそう言うと、顔が真っ青になった。
テナの「まさか」は「本当だった」
シモンが苦笑いをする。
「顔を見たときにまさかとは思ったんですよ。
あなた、楽譜を城に盗みに行ったでしょう。
おまけに脱走ですからね。郵便局に触れが届きました。町に張り出すようにと。あなたに1000万アークの賞金がかかってます。ちなみに、ステファンは3000万アーク。」
アルトは口をパクパクとさせ、テナは失笑していた。
シモンはその似顔付きのお触れを見せてくれた。
「まぁ、僕も鬼じゃないですからね。ステファンも賞金首ですから。この町には1枚も御触書はってませんよ」
シモンがそう言ったあと、僕はすかさずに質問する。
「どうして、ステファンは賞金首なの?」
ステファンは煙草を口から離した。
その質問に、ステファン自身が答えた。
「俺は、城で仕える国家の第一級錬金術師だったんだよ。」
「錬金術師??」
「あぁ。何かの物質から違う物質をつくる術さ。悪く言えば黒魔術っぽいがな。
錬金術師は、聖職者よりも稀少でな。隣国の欲しい王様は俺ら錬金術師に化学兵器を造るように命令を下した。
で、俺はムカついてリオを連れて逃げた。」
ステファンはめんどくさそうに再び煙草に火をつける。
「ステファンはね、僕の伯父さんなんです。リオは、ステファンの嫁。」
「嫁?」
嫁って、リオは男性ですよね?
「馬鹿言うなシモン。」
確かにその通りだ。
「でも二人ともラブラブじゃない?ま、いっか。
リオは、ステファンが錬成した人造人間なんですよ。」
和気あいあいと話をする。
アルトもテナも楽しそうにリオとしゃべっていた。
「ほら、テナ。十二使徒探しは余裕じゃねぇか。」
「ですよね。まさかこんなに早く二人も見つかるなんて。」
疲れた体に、リオが出してくれたスープは全身に染み渡る。
そう。この旅の主旨は十二使徒を全員集める事であった。
しかし、この世界に来たとき以来、コラールからの呼び声はない。
「え、あなた方、十二使徒を集めているんですか。」
シモンが食いついた。
それに、僕は頷いた。
そして僕がこの世界の人間でないことを話し、この世界に来たいきさつを話した。
シモンは慌てて席を立ち、カーテンを閉めた。
「ステファン、結界装置を。」
「あいよ。」
ステファンは煙草の火を消した。
ナイフで指先を切り、床に自分の血で魔方陣を書いていく。
「いいですか。これは重大な機密ですよ。
僕はあなた方がたが近いうちに現れることを知っていました。」
ステファンは魔方陣を書き終えた。
そして不思議な粉を魔方陣にかけて、発動の合図をした。
「発動条件は魔方陣と自分の血。指を鳴らすのを合図に結界装置を発動する。」
パチン。ステファンは親指と中指を合わせて指を鳴らした。
部屋の中を一瞬光が包んだ。
結界を張られたのだ。
シモンは真剣な顔で僕らを見ると言った。
「あなた方は知らなくてはいけませんね。このコラールの秘密を。」




