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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第三話 遥かなる場所へ

僕は楽譜を見つめた。そして、息を吸った。

それから楽譜を見る。曾祖母に教わった詩に変えて歌ってみた。




来たれ、たみよ この場所につど

来たれ、たみよ 天に祈れ


闇から黒い手がのびる時

たみははひたすら逃げ続け

いつしかなにも無くなる時

空は黒く成り果てる


天より降りし十二使徒

能力ちからをもつて凪ぎ払え

天より降りし十二使徒

闇を払いて救うのだ


来たれ、たみよこの場所につど

来たれ、たみよ我らに力を




すべての歌詞を歌い終わった時だった。

再び楽譜から光が放たれたのだ。


「・・・は!?」


楽譜は凄まじい光を放ち、思わず僕は楽譜を手放す。

それでも楽譜は光を放ったままだ。

光は段々強くなり、僕は目を開けてはいられなくなった。

思わずぎゅっと目をつぶり、てのひらで光を遮る。

その時だった。

腕が熱い。焼けてしまいそうな熱さだ。

そして、恐る恐る僕は目を開けた。

僕の知らない世界が広がっていた。


「ここはどこだ・・・?」

「いや、それ俺が聞きたいんだけどね。」


思わずつぶやいた言葉に返答が返ってきた。

バッと後ろを向くと、そこには見たことのない少年が一人。

髪の色は色素の薄いブラウン。

瞳は碧色だった。

短髪で頭にはバンダナのような布を巻いている。


「日本人じゃない・・・・?ここはどこなんだ?日本はどこだ?」

「―――ん?どこだよ、日本って。」


少年はかなり落ち着きを払っている。

僕は一度深呼吸をしてよく考えた。

僕はまず楽器庫で『コラール』の楽譜を探していた。

目映い光が起きたと思ったら、楽譜は現れた。

それは曾祖母から教わった、”とっておきの素敵な歌”で、僕はそれを歌った。

歌うと再び楽譜は光りだして、僕は目が開けていられなくて、楽譜を手放して目をつぶった。

腕が焼かれるように熱かった。

そして今、ここは楽器庫の中ではない。

・・・ということは?

考えられるとしたらだたひとつ。


「ここは・・・『コラール』の楽譜の中?」


すると、少年は僕に鋭い目つきを向けて僕に言った。


「お前のその腕の模様、十二使徒か・・・・??」


少年は眉間に皺を寄せたまま、僕をみらみあげる。


「急に現れた光のなかからお前は現れた。お前は、何者だ?」


少年は、僕に身構えている。

そして腕を見た。

肘と手の甲の間に書かれた青色の紋様。

ト音記号と十字架の重なりあったようなものがくっきりと記されている。

僕はどうしたらよいのかわからないまま口を開いた。


「僕は水色っていうんだ。僕はの家にあったコラールの楽譜を歌ったら突然光りだして気がついたらここにいた。」


僕は、自分の身に起こったことをそのまま話した。


「歌ったら楽譜が光だした?その『コラール』ってまさか王に捕らえられた娘の・・・・??」

「楽譜はそうだと思う。けど、わかんない。」

「お前は異世界から来た?」

「たぶん。僕は楽器庫の中にいたはずだ。」


少年はうーん、と考えて民族衣装のような不思議な服の袖を捲りあげると、碧色の紋様が腕にあった。

それも、色以外は僕とまるきり同じだ。

少年は僕に右腕を見せた。


「ほら、これ。これは聖跡って言うんだ。俺は生まれてからずっと持ってる。

『コラール』の楽譜ってはこの聖跡の中だ。この聖跡は、娘に選ばれて楽譜を護る使命を持つ十二使徒の証だ。」

「はあ・・・。」


僕は曖昧な返事をした。

感覚が全くついてはいけなかった。

僕が十二使徒?

十二使徒って本当にいたわけ?

しかも話からすると、家にあった楽譜は今僕の腕にあるってことだろう?


「水色とか言ったな、お前。なぜここに来たかわかるか?」


そう言われて、僕は慌てて首を横に振る。

しかし、思い当たることがひとつ。


「僕は、楽器庫でコラールの声を聞いて、他の楽譜を探して欲しいと頼まれたんだ。」


僕がそう言うと、少年は目を見開いた。


「この楽譜に頼まれたってことは、楽譜の声を聞いたのか?」

「ああ。」


少年は再びうーん、と考える。

そしてパッと僕に顔を向けると言った。


「楽譜を集めて欲しいと頼まれた異世界の人間、か。

まあいい。お前の言い分は信じてやらんこともない。」

「本当に!?」

「だがな、残念なことにお前は異世界からこの世界にやってきた場所が悪かったな。」

「は・・・?」


思わず間抜けた声をだしてしまった。

少年は続ける。


「ここは俺達の住む国の城の中さ。それも、一番高い塔の上。」


少年は落ち着きを払って言った。

近くにあった、たった一つの小窓から慌てて外を見た。

外は、僕の知らない世界が広がっていた。

赤い屋根の立ち並ぶ、煉瓦作りの町並みが広がり、ここは本当に日本ではなく、『コラール』の中の世界だとわかった。


「どうして、君はここにいるの?」


僕は聞いてみる。


「君じゃなくて、俺はアルトっていうんだ。」

「アルトは、何故ここに?」


僕は、何故少年・・・アルトがここにいるのかを尋ねた。


「俺は、捕まったんだよ。」

「なんで?」

「盗みに入ったんだよ、俺。つーか、正確にいえば取り戻しにきたんだが。」


アルトはため息をついた。


「なにを?」


思わず聞いてみる。

盗みにはいってまで取り返したいだなんて、どんなに大切なのだろうか?


「楽譜のままのコラールの楽譜だ。宿主がいなければ、コラールは楽譜に戻る・・・・」


アルトの言葉が途切れた。

何か深いことが、話の先にあるのかもしれない。

けれど僕はその先をあえて聞かなかった。

・・・・・なんせ初対面なわけだし。


「そっか。」


そんな僕を見て、アルトは不思議そうにする。

そして笑った。


「お前、変だな。」

「変って何処が?」

「まぁ、いい。お前、どうするつもりだ?これから。」


アルトにそう言われ、僕は「あっ、」っと叫ぶ。

ここは城の塔の中。それも一番高い場所。

小窓はあっても人が通れる大きさではないし、小さな入口は鉄格子で鍵がかけられている。


「お前、誰かが来たら、角の陰に隠れてろ。いいな。」


アルトそう言ったちょうどその時、階段を上がる誰かの足音がした。


「水色」

「う、うん。」


僕は急いで陰に隠れる。

アルトは小さな入口を覆うようにして鉄格子に張り付いた。


「よぉ。待ってたぜ。飯の時間!」


アルトがそう言うと、食事を持ってきた兵隊はアルトに怒鳴る。


「囚人の癖に何を言っている!!」

「暇なんだよ、囚人ってのはよ。だから筋トレしてたんだけど腹減って仕方ねぇよ。

だーかーら、今日はパンおまけしてくんね?」

「フンッ!お前は本来ならば即処刑なのだぞ。それなのに陛下も食事は充分に与えろだなんて。」

「囚人のほうが腹一杯飯が食えていいぜ。何たって平民はパンもろくに食えやしねぇ。」


兵隊はパンをアルトの前に置くと、荒々しい様子で階段を下っていった。

そして、アルトは兵隊が見えなくなると僕のほうを向いてにかっと歯を見せて笑った。


「見ろよ、このパンの量!これなら二人でわけれるだろ!」


アルトはパンとバターを抱えて僕の方へと歩いてくる。


「ほら、食えよ!」

「ありがとう。」


私は少し遠慮がちに受け取る。


「遠慮すんなって。仕方ねぇ。今夜にはここを抜け出すから、しっかり食っとけよ。」


アルトはさらりとそう言った。


「ここを抜け出す!?そんなことできるのか!?」

「あぁ。できるさ。十二使徒を探しに行こうぜ。」


僕は更に驚く。


「楽譜、一緒に探してくれるの?」


僕がそう言うと、アルトは少しそっぽを向いて言った。


「あぁ。楽譜の声を聞いて集めろって言ったってことは、これからなにか起こるかもしれねぇし、なんか面白そうだしよ。」


そして、僕に再び向き直ると、パンをひとがじりした。


「あ、今日のパン上手い。」


そう言ったアルトに習い、僕もパンをかじった。

今までに味わったことのないパンだった。

日本にはない、固いパン。

ライ麦の香りが、口いっぱいに広がった。


「美味い!!」

「お前の国のパンはもっと違うのか?」

「うん。もっとやわくて、一個じゃお腹一杯にならないよ。」


僕たちは、たわいもない会話をした。

僕の国の話。アルトの国の話。

たわいもないが時間は潰せた。

どっぷりと日は暮れて、僕たちのいる塔は、小窓からの月明かり以外の明かりはなかった。


「アルト、どうやってここを抜け出すんだ?」

「任せとけって。十二使徒は生まれついてそれぞれ魔力ちからがあるのさ。楽譜を守るためにな。まあ、楽譜に込められてる力なんだけど。ちなみに風を操ることができるんだ。」


そう言って、鉄格子に手をかける。


「今から、この鉄格子をぶっ壊す。そしたら、手を引いてやるから、一気に走るぞ!何処でもいいから外に出れる場所を探す。」

「りょーかい!!」


アルトが鉄格子に手をかけると凄まじい風が吹いた。


「風斬り!!」


アルトがそう叫ぶとガシャーンと大きな音をたてて鉄格子は壊れた。


「やべぇ、ド派手に壊しすぎた。こりゃ、兵隊がくるな・・・行くぞ水色!!」


アルトてに僕は階段を下って行く。

塔は一体どれぐらいの高さなのだろう。

窓から見えた景色は相当高いところだった。

外に出る場所を探すなんて絶対に時間がかかる。

下っていったところで城の本殿へと繋がる渡り廊下を発見した。

・・・のはよかったものの、兵隊に見つかってしまったのだ。


「見つけたぞ!」


一人の兵隊がそう叫んだとたん、沢山の兵隊が僕たちを囲んだのである。

じりじりと詰め寄られる。

渡り廊下は屋根はあるものの壁はなかった。

肩から下は囲いがある。

外に通じているがあまりにの高さで逃げることもできない。


「アルト、どうすんの?」

「囲いに上れ!」

「わかった」


僕は石で出来ていた囲いによじ登る。

アルトも軽々とその場所に上り、仁王立ちしていた。


「そんじゃ、まぁ、精々陛下のお守りでも頑張ってくれたまえ!」


アルトはそうゆうと、兵隊は少しずつ僕たちに近づく。

あんまり近づくと僕たちが落ちて死ぬ。

そう考えた兵隊たちは、むやみに僕たちには近寄れない。


「水色、飛び降りるぞ。」

「はあ!?」

「大丈夫!俺にしっかりつかまってろよ!」


そうして僕たちは城を脱出し、『コラール』を探すべく、外へと飛び出した。



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