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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第二十一話 戦い、再会、真実

十二使徒がホムンクルスとの戦いを始めてどれほどの時間が経ったのだろう。

歓声は、悲鳴へと変わり、ついにラピスは動けなくなってしまった。


集まった使徒のなかで最年少のラピスに、戦いは厳しいに決まっていた。

さらに、ステファンの予想以上にホムンクルスが多く、倒しても倒しても城から姿を現した。


「まじでなんなんだよ、この数は!!」

「僕らの体力が取られていくだけだね」

「・・・・」


あと一人。

あと一人の使徒が見つかれば、何か変わる。

のこりの一人が僕ら側につくか、ソプラ側につくか。


そんなことを考えた時だった。

慌てた様子でアルトが飛んできたのだった。


「お前ら!!やばいぞ!!」

「アルト!?」

「戦ってる場合じゃねぇ!北の街は冷害が尋常じゃねえよ!

逆に、南西のほうは砂漠化が進んでる!

コラールの予言はこれだ!」


僕は唖然とした。

その時だった。


「ならば今こそ決着をつけようじゃないか。」


ソプラが言った。


「これが神の提示ならば、やはり人間は一度滅ぶべきなのだよ。

ノアの方舟のように、選ばれたものだけが残ればいいんだ。」


僕は鳥肌がたった。

同じ人間が、こんなにも残酷なことを考えられるなんて。


「戦おう。アルト、テナ。

アドルフ、エドワードは他を頼むよ。

特に、あの異界からきた少年はやっかいそうだしね。」


ソプラは上着を脱ぎ捨てた。


「きっとこうなる日はくると思ったよ。

あ、そうだ、ここで作られたホムンクルスたちを完全に破壊できるのはアシュベリーとリオだけさ。

それか僕らを倒すしかない。」


ソプラはにやりと笑う。


元の世界では全く気づかなかった。


これが、本当に命をかけるということか。


「春日・・・・」


約束をしたことを激しく後悔した。

命を捨てるなんて考えた事も無かったけれど。

予言に逆らうのがよいのか。

コラールを集めて世界を変えるのがいいのかわからない。

しかし、時にはリセットが必要なときもある。

それだけで、それ以上のことはない。


僕の世界はどうだ?

地球温暖化は進だけ。

原子力発電所も事故を起こした。


そうか。

この世界が泣いてる。

この世界が泣いてるから、娘はコラールを集めたかったのではないだろうか。


「戦いをやめよう。」


僕は空を指さした。

雪が降り始めた。

それは瞬く間に大粒になった。


「この世界が泣いてる」


冷えが更に酷くなり、手がかじかむ。


「このまま世界を消してしまおう」


ソプラは笑った。


「人間が自然の断りに反した罰。受けようじゃないか。」


僕は右手をあげた。


「僕が戦う。みんなは手を出さないで」


世界が泣いている。

世界の終わりが近づいている。


「僕の楽譜、欲しいでしょ。」


僕は証を楽譜に戻した。


「僕らは戦う必要はもうないんだ。

世界はなくなる。

君の望むように。」


僕は、楽譜に手をかけた。

そして、楽譜を縦に引き裂いた。

楽譜はビリッと音をたててまっぷたつになった。


「世界はなくなるかもしれない。

それは、楽譜があってもなくても一緒だ。

だったら王様も貴族もやることがある。

滅びる世界をみんなで食い止めなくちゃ。

冷害のひどい地域は移住しなくちゃいけない。

砂漠の進むところは、植物増やしたり水道作ったり、それはコラールが無くてもできることだ。

必要ない。君にも、僕にも。

無責任なこと、言ってるかもしれないけど」


凍てついてるのは、世界だけじゃない。


隣国を手に入れたい王様も、ソプラも。

凍てついてるのは心だ。


心が死んでる。

そんな人達に、コラールを渡したところで何かが変わることなんてない。


コラールは、春日を守りたいと強く願った時、力を分けてくれた。

城下町の民衆の言葉も、ニコールがそれに応えたのも熱かった。

歌声広場の音楽だって、なにかがこみ上げてくるように胸にきた。


「・・・・くも」


ソプラは目を釣り上げた。


「よくも楽譜を破ったな・・・・」


僕は構えた。

楽譜がなければ聖跡がない。

僕はただの人間だった。


しかし、これでよかった。

元の世界と変わらないありのままの僕で死ねるなら。


ちっぽけな自分が嫌だった。

自分の思いを口に出せなかった。

そんな僕は今を生きている。


そんな勇気をくれたのはコラールだ。

自分の進む道を、自分が守りたいと思ったものを守る力をくれたのはコラールだ。

だから渡せない。

心が凍りついた人なんかに。


「春日、ごめん」


音楽祭、でれないかもしれない。

約束したのに。


ソプラが剣を片手に飛びかかってきた。

僕は目をつぶる。

僕は、死ぬ・・・・

瞬間的に思い出した春日の顔。


「天草!!」


幻聴?

僕の名前を呼んだ春日の声がした。

この世界に僕を苗字で呼ぶ人はいない。

目を開けると、神々しい光が見えた。

それが、ソプラの剣を遮っている。


「なんだ!?お前は!?」

「十二人目の使徒、春日夜羽です。」


ソプラはのいた。

春日の後ろにはリオがついてきた。


「リオ!?」

「ステファン!間に合った?」

「おせーんだよ!!馬鹿が!!ギリだ」


そんな会話をした後、春日は聖跡を楽譜に戻す。


「遅くなってごめんなさい。私は夜羽です。」


ニコールたちに向き直り、そう言った。

すると、ニコールは夜羽に飛びかかり、アメシスとシモンもそれに続く。


「待ってたよ!!ありがとう!来てくれて」


そんな茶番もつかの間。

夜羽は僕の破った楽譜を治した。

それから負傷していたテナに近づき、テナの火傷した手に自分の手を重ねた。

すると、瞬く間にテナの手が治っていった。


「もう大丈夫。これまで戦ってくれてありがとう、テナ」


夜羽の笑は女神のように、穏やかだった。


「私の名前を知っているんですね。」

「うん。みんなのこれまでのこと、ちゃんと見てからこの世界に来たんだよ」


僕は涙がでた。

こんな時に彼女に会えるなんて、考えていなかった。

本当に、夢のようだった。


「天草っ」


春日が僕のほうに飛び込んできた。

僕はそれをしっかりと抱いた。


「なんで来たんだ・・・・」

「行かなくちゃって思ったんだもの。天草に会いたかった」


こんなときまで春日は正直過ぎた。


「泣いてる」


春日は僕の頬を撫で、そして涙を拭った。


「大丈夫」


春日はそう言って僕から離れると、ソプラの方へ僕と自分の楽譜を渡した。


「あげるね。これ。」


春日はそういうと、ソプラは受け取る。


「力が発動するといいね。楽譜の全ての力が」


春日のその言葉を聞いたシモンはハッとして、自分の楽譜をソプラに渡した。

それにみんな続く。


ソプラは全ての楽譜を揃えた。


しかし、何も起こらない。


「なぜだ!?」

「だって、その楽譜完全じゃないんじゃない?」


夜羽のその言葉にシモンとニコールが頷く。

僕は意味がわからない。

ステファンはわかったようだった。


「そうか。」


ステファンは言った。




「その楽譜、題名が無い」












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