第二十話 チルチェンセス
闘技場で待っていたのは普通の人間であった・・・・・ように見えた。
「おいおい、ありゃホムンクルスだぞ!?」
ステファンのその言葉にみんなは驚いた。
「ホムンクルスだって!?」
「リオと同じさ。見た目は普通の人間と一緒さ!!」
それから聞こえた天からの声。
ソプラだ。
『さあ、これから戦いの祭りを始めようじゃないか。
ここにいるホムンクルスたちと戦ってくれたまえ!!
見物人は国中の国民さ!!』
僕は何がなんだかわからない。
あわててシモンが補足してくれた。
「暴君ネロって知らない??」
「え??」
「ネロはね、キリスト教を迫害した。
捕まえて、猛獣と戦わせて処刑した。
それが古代の祭りのひとつ、チルチェンセス。
同じことを彼はしようとしている。
能力を持つ僕らに、猛獣なんかじゃ足りない。だから」
「人造人間と戦わせて殺す・・・・!?」
「ホムンクルスは並みの猛獣なんかよりはるかに強いよ。」
シモンはそう言って臨戦態勢にはいる。
「もたもたしてたら僕たちでも殺られる!」
その言葉と同時に、ホムンクルスたちは襲いかかってきた。
そして、高らかに笑うソプラの声が聞こえる。
「さあ、民衆の前で苦しんで死ね!!
コラールの予言が、人々を苦しめたんたからな!
あんな不吉なもの、消してやる!!」
悲しみで、憎しみで、闘技場の空気に包まれた。
「早く殺せ!!」
「コラールがあるから王は狂ったんだ!!」
「早くしろ!!」
ニコールの言った通りだった。
一部の人だけがコラールを信じ、十二使徒を信じた。
なのに・・・・
「あと、一人早く来てくれ・・・・・!!」
シモンは祈るようにそう言った。
「あと一つ。
結末の歌詞は、最後の一枚にあるんだ・・・。
内容によって、まだこの国はきっと大丈夫。
そのための十二使徒なんだ・・・・・!!」
シモンの言った通りだった。
もしもなにかよくないことがあろうとも、それを防いだり、人を守り国を救うのが十二使徒の役目であって、そうでなかったらなにもいらない。
あと一人。
僕はふいにまた春日をおもいだした。
しかし、あわてて考えを捨てた。
(春日が十二使徒なわけない)
しかし、なにかつっかかった。
何故だろう?
「水色君、あぶない!」
ぼうっとした瞬間に、すかさずされた攻撃。
そして、とっさに守ってくれたテナ。
「ありがとうテナ・・・・・って、テナ、手が・・・・・・!!」
能力を使ったテナの手は火傷をおっていた。
先の戦いでもダメージのあったテナの手はボロボロであった。
赤く腫れ上がり、無数の水ぶくれが、再び力を使ったところで皮が裂け、見るのも痛々しかった。
慌ててラピスとシモンで氷壁を作り、避難する。
「今のうちに手当てを。
ステファンと僕でホムンクルスをひきつけます。
ラピス、ありったけの氷で火傷を冷やしてあげて。
」
「うん!」
「シモンたちは大丈夫なの!?」
「大丈夫。」
「俺は国家の錬金術師だぞ。俺はホムンクルス作ったことだってある。
対処法もわかるし、リオより精巧なホムンクルスは見たことねぇから大丈夫だ。」
ステファンは皮の手袋をはめた。
「アルト!テナの手当てはこれでしろ!アシュベリー家の秘伝薬だ。」
アルトはテナの氷で冷やされた手を握った。
「絶対無理しないでくれ。俺が護ってやるから、絶対にお前の夢をかなえさせたいから、手は大切だ・・・!!」
「大丈夫ですよ、兄さん。そんなに心配しなくったって。
私はちゃんとここにいますし、今は兄さんだって一人じゃないですから。
町の人も、シモンもステファンも、ラピスもアメシスもいますし。二コールも水色もいますから。」
「テナ」
「これが終わったら、歌を探しに。」
そんな話をしている間も、シモンたちは戦っていた。
アメシスを二コールが片腕ずつ薬を塗りながら包帯を巻いている。
「ほんと、あたしがいろいろもってきといてよかった。
テナ、極力能力は使わないようにしてね。あたしたちのことは気にしなくても大丈夫だからね」
そういったときだった。
シモンの大きな声がした。
「二コール!結界装置と魔方陣を!一人捕まえた!!」
「わかった。じゃ、テナにはそうゆうの手伝ってもらうね。
ラピス、水色は今は休んでて。アルト、お願いがあるの。
あたしたちはこの闘技場から出られないけど、アルトは飛べるでしょう??
残りの使徒を探してきてほしい。それから、リオを。」
「おう!!なんでリオも??」
「リオはこの世界で一番精巧なホムンクルスだから。
普通の人間より体力もあるし、そもそも人間じゃないから異界へ水色を帰せるかも知れない。
最悪の状況を考えた場合、一人でも使徒が残っていた方がいいに決まってる」
僕はそれに反論をしようとした。
僕を元の世界へ帰す??
そんな
「水色、悪く言ってるんじゃないよ。
ある意味では希望でもあるの。
絶対に王様やソプラに好きにはさせないためにも、コラールのためにも、最悪の状況になってしまったら、譜面を持ってもとの世界に帰るんだよ。いいね??」
納得するしかなかった。
コラールが望むのは、自分がちりばめた楽譜を集めることであった。
「わかった。」
僕はそういった。
「でも、そんな状況にはさせない。僕も戦うよ。みんなと一緒に。」
「頼もしいね。じゃ、任せるよ!」
「了解!!」
絶えない戦闘を、ソプラは見ていた。
不気味な笑顔を作りながら・・・・・




