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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第十八話 祈り、その時彼女は何を想ったのか

春日夜羽は真っ暗な空間に漂っていた。

自分の中に記憶していることといえば、水色の家でコラールを歌い、楽譜の中に入った。

とにかく水色に会いたかった。

歌を大切にしたかった。


どうしてたどり着けないのだろう。

ここは真っ暗で何も見えない。

その上何も聞こえない。


自分の意思が中途半端だった??

そんな風に考えた。


あれからどれほどの時間がたったんだろうか。

それすらわからなかった。


そんな時、聞こえたのは泣き声だった。

少しずつ、少しずつ視界が開ける。

そこにいたの年端もいかない少年であった。

容姿は端麗であった。

そしてそこから漏れた嗚咽交じりの泣き声は澄み切っていて凛とした美しい声であった。


『どうして泣いてるの?』


夜羽は尋ねた。

すると少年はこう答えた。


『僕はもう男の子じゃないんだって。僕は男の子でも女の子でもないんだって。

僕はもう結婚もできないし赤ちゃんもできないんだって。

毎日毎日お歌とお作法勉強するの。

僕はもうすぐパパとママが迎えに来てくれるはずだったのに・・・・

きっと僕は捨てられちゃったんだ。

僕が中途半端になっちゃったから・・・・・』


少年はひざを抱えて座っていた。


『一人ぼっちになったんだよ。それに、ここはずっとまっくらなんだ・・・・。

僕は・・・いつになったらお日様が見れるのかな・・・・??』


夜羽は何も言わずに少年を抱きしめた。

自分がどんなに幸せな世界で生きてきたか、急に思い立ってしまったのだ。


『大丈夫だよ。だから、泣かないで』


夜羽は率直にこの少年を救いたいと願った。


『真っ暗でこわいよお』

『怖くない怖くない。大丈夫』

『ほんとう??』

『もちろんだ』


夜羽はしっかりと少年を抱きしめた。

そしてそっと頭をなでた。


『昔、私たちが生まれるずーっと前はね、宇宙は真っ暗だったんだよ。

何にもなかったんだ。

でもねそこから星が生まれて光が生まれた。

だからね、光と闇は兄弟なんだよ。ほら、見て。』


夜羽は上を指差した。

そこには真っ暗な闇の中に沢山の星があった。


『闇がなくちゃ、光が輝けないよ。

でも、光が眩しすぎると、目を開けていられない。

だから二つでひとつ。

比べることなんて出来ないんだよ。

二つとも大切なの。』


少年は泣き止んだ。

そしてにこりと笑った。


『ありがとうお姉ちゃん。』


少年は華のような笑顔で夜羽をみた。


『お姉ちゃんに、素敵なお歌を教えてあげる。』

『え??』

『このお歌はね、不思議な力があるんだよ。

失われた歌マンカント・カントって言うんだ。

でも、みんなはこう言うんだ。僕しか歌えない歌だから、水色のコラールアン・コラール・チェレステって。』

水色のコラールアン・コラール・チェレステ?』

『そうだよ。きっとお姉ちゃんを助けてくれる。扉をあける為の最後の鍵。』


そして、歌を耳元で歌い、語った。

そして、最後


水色チェレステそれが僕の名だ。』


少年がそう言ったその時だった。

視界が開け、更には真っ白な空間があった。

それからその空間には聖母像があり、その前には美しい女性の姿があった。

恐らく、年は夜羽と同じくらいだろう。


『夜羽』

『貴女は・・・・??』

『チェレステ』

『チェレステ!?』

『そうよ。私が貴方をこの世界に呼んだの。』


夜羽は思い出した。

自分がコラールから聞いた声を。


『貴女が私に光と闇は兄弟だと教えてくれた。

私が愛したあの娘も、同じことを教えてくれた。

だから私は貴方を選んだ。水色を助けて。

早くあの世界を護らなくては、王の陰謀で真っ黒になってしまう。』

『え!?』

『だから私は十二使徒を選んだ。

闇に輝く、星がいなくては世界がなりたたないから。』

『そうだったんですね。』

『私の愛した娘に似た夜羽。』

『はい』

『水色は、私の愛した娘のひ孫なの。』

『チェレステは、男になったの?女になったの?』

『私はカントと十二使徒を護るために女になった。カントを異世界へと逃がして。』

『つまり、貴女が伝説の娘・・・・』

『ええ。』


夜羽はチェレステに近づいた。


『私はカストラート。余命は短く、歌以外になにもない』


夜羽はそう言ったチェレステに近づき、手を取った。


『あなたはあなたのままがいい。

無理に女の子のふりしなくたって、人を好きになるのは人だからなんです』


夜羽はにこりと笑った。


『私を、天草のところへ連れていって。』


夜羽がそう言うと、チェレステは夜羽を見つめた。

そして手を握り返した。


水色のコラールアン・コラール・チェレステ覚えてるね?』

『うん。』


夜羽の右手には、鮮やかに聖跡が刻まれていた。


『急いで。今こそ、貴女が行くんだ。今使徒たちを救えるのは、貴女だけだ。』


夜羽は頷いた。

そして、言った。


『貴女は貴方のままでいいよ。

幼い時のように、男の子の言葉使いが貴方らしい』


夜羽は、一筋の光の中に消えていった。


夜羽は光の中を歩いて行った。


その中には、水色のこれまでの旅の様子が写っていた。


初めに来たのは、お城の離れにある塔。

それからアルトに出逢い、脱走して星を見た。


それからテナに会い、街に出た。

歌声広場で涙を流し、旅に出た。


郵便屋のシモンと錬金術師のステファンに出会った。

さらに、ホンムクルスのリオがいた。


それから再び旅に出た。

そして夜羽は見たのだった。

水色が、自分のような真っ直ぐな心が欲しいと思ってくれていたこと。


今度は戦いが待っていた。

電気を操るアメシス。

そして氷の能力に目覚めたラピスラズリ。


そして再び旅に出ようとしたとき、水色は夜羽たちのすむ世界へ戻ってきた。


「そうだね・・・・。私、天草にすごい助けてもらったよ・・・」


大切な想い出が再びよみがえる。

そして戦いが始まり、夜羽を助けた。


「私、はやく行かなくちゃ。」


水色の顔を見て、夜羽は祈った。

どうか、無事でいて。

今度は私が貴方を護る。


その時だった。


「いたいたっ!!」


前髪を横に流し、長い髪を後に縛った青年が表れた。


「夜羽ちゃんだね?」

「はい」

「オレはリオ!」

「え!?人造人間ホムンクルスの!?」

「うん!そうだよ!迎えに来たんだ!大変なんだよ!!」

「え!?」

「まさか伝説の娘に呼ばれるなんて思わなかった。

君を迎えに来るようにたのまれたんだよ。

なんたってオレは人間じゃないからね!異空間で君を探すのも大変だったけど!見つけたよ!!」

「そんなことより、天草が大変って本当!?」

「そうだ!早く来て!」


リオは夜羽を横抱きに抱えると凄まじいスピードではしりだした。





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