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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第十六話 十二使徒の行方

「ひろいね。」


ニコールに案内された屋敷は、とても広かった。

写真や、映画でした見たことないようなゴシック調の壁や天井に、驚きを隠せない。


「シモンの実家も凄いんだよ。あたしの家なんて全然敵わないんだから!」


そう言われて疑問に思ったのは、なぜ貴族の二人が郵便局やピエロをしているのかだったが、そこは聞いても仕方がないのであえて聞くのをやめておいた。


ニコールはある部屋の前で止まる。


「ここだよ。どうぞ。」


大きな扉をあけると、そこにはソファとテーブルがおいてある客間であった。


「座ってて。ショコラでいい?」

「お構い無く。」


ニコールは近くにいた使用人に頼むと直ぐに席についた。


「でも、会えて本当によかった!

実はね、シモンからいろいろ聞いたあとにシモンとステファンと一緒に貴族中まわって情報収集をしたの!」


そう言ってニコールはまずアルトとテナを見つめた。


「ね、お城にいる十二使徒、二人の友達じゃない?」


アルトは目を伏せる。

テナも目をそらす。

ニコールは続けた。


「お城には一人、囚われてる十二使徒がいる。

その人は二人の友達。そして家族。違う?」


ニコールはまっすぐに二人を見る。

二人は観念したかのように、小さく頷いた。


「俺たちの住んでる城下町の外れには、孤児院があった。今も、俺とテナ、二人で暮らしてる。

結構小さな孤児院だった。それでも、頭がよければ学校に行かせてくれてたんだ。」

「私たちは、二人でヤンチャばかりしていたし、勉強よりも仕事が向いていたんだと思います。

まわりの子たちはみんな教育機関コンセルバヴァトーリオへと連れていかれました。」

「囚われてる十二使徒の名前はソプラだ。

ソプラは昔から歌が上手くてさ。俺たちと仲良しで・・・・十二使徒だったし。」

「貴族に夢を見て、よく貴族を真似て遊びましたね。そんなときでしたよ。

ソプラが教育機関コンセルバヴァトーリオに連れていかれたのは。

私たちは必死に止めたんですがね、牧師様は連れていってしまって、ソプラをカストラートにしてしまったんです。」

「そんで、宮廷に連れていかれた。

だから俺はソプラが持ってる楽譜を回収しようとしたんだ。

初めて水色にあった時は、独房のなかだったろ?

ソプラの持ってる楽譜を回収して、王様には渡らないように説得しようとしたら」


「案の定、ソプラがアルトに攻撃をし、アルトは捕まり賞金首にされたというわけです。」


話疲れた、とばかりにショコラを口にした。

甘っ、と言って顔をしかめたが。

僕はこの世界ではじめの方で疑問に思ったことがあった。

「カストラート」とは一体何なのだろうか。


「ね、カストラートってなに?」


僕が訪ねると、ニコールとアルトは耳を塞ぐ。

テナに説明しろとばかりに睨みつけている。

テナは苦笑して、僕に説明をはじめた。


「カストラートっていうのは、声変わりをする前の男性を去勢して、高い声を維持させた歌手のことです。

教会では女性は沈黙を保たなくてはいけませんからね。これまでは高い声部を子供が歌っていたのですが、子供では声量がないですし、成長するので入れ替わりも激しい。そんなわけでカストラートを作ったんです。」

「そうなんだ・・・」


僕はゾワッとした。

考えたくもなかった。

ペットとかの去勢はよく聞く。しかし人間をそんなことするなんて考えたくなかった。


「コンセルバヴァトーリオとは、教育機関です。

親のいない孤児をカストラートにしました。

かなりの激痛の伴う手術で、亡くなった少年も多いようですし。

カストラートはコンセルバヴァトーリオで教育をうけて、勉学、作法などを学び、劇場デビューを果たします。」


テナーは終わりましたとばかりにアルトの方をむいた。

確かに、耳を塞ぎたくなるのも無理はないだろう。


「でも、なんでソプラは僕たちを攻撃したの?

仲間じゃん。二人の判断は正しかったんじゃない?」

「二人はカストラートにはできなかった理由があったんだよ。あたしの調べでは。

そうだよね。アルト・エトナ・ド・マンツィアリ」


ニコールがそう言うと、二人は黙ってしまった。


「二人は本当は貴族だった。けれど、母は二人が十二使徒だと知ったとき、孤児院へと逃がした。」


僕は驚いた。

そして二人は家の紋章の入ったペンダントをだした。


「正直、知った時は驚きました。

どうしてマンツィアリ家がいつも孤児院へ寄付してくれるのか不思議に思っていましたから」

「ソプラには言えなかった。あいつは貴族になりだかってたし。けど、世襲だし、俺にはどうだっていいし。」

「ソプラはずっと自分には迎えが来るって信じてました。

本当は貴族の息子で、いつか豪華な馬車で両親が迎えに来るって、それから貴族として裕福な暮らしをすることを信じてました。」

「けど、カストラートになって貴族と関わる機会も増えて、俺たちの身元をどこか聞いたんだろうな。

ソプラの元へ行った時、俺はやつにかなり憎まれてたっぽいし。

ま、無理もないかもだが。」




僕は納得いかなかった。

友達だったはずのソプラとどうしてこんなに大きな溝ができてしまったのだろう。


「なんで?仲良しだったんでしょ??」

「私たちはソプラとどんな貴族ごっこを私的ないたか、水色君は知らなかったですよね。」

「俺たち双子は、本気で孤児だって信じてた。

俺たちこそ、そんな事実ないと思ってた。

だから俺たちは、ソプラが貴族で、俺たちは貴族をまもる騎手ナイトになって遊んでたんだよ。」

「ですから僕たちを憎んでるんですよね。きっと。」


寂しそうに笑ったテナを見で僕は少し悲しくなった。

自分の生まれた運命がそんなにも未来を別つなんて。


「だったら、早く楽譜を集めよう。」


僕は言った。

楽譜を集めて、この世界を変えよう。

カストラートなんて作れない、道徳を間違えない道を作ろう。

冷害も、水害も、なにもない。

自然を戻して。


「この世界を変えよう。皆が平等で、争いの無い世界にするんだ。

コラールに平和を願おうよ。

全部、自然の理に戻すんだ。」


そうしたら、悲しいことは減る。

草木は甦り、畑は潤う。

そしたら口減らしが減って、孤児も少なくなる。

きっと・・・・・


「そうだね!悲しい話より、未来が大事よね!」


ニコールね明るい声に、アルトとテナも表情が明るくなる。


「よっし!あと四人だな!」

「そうですね。」


いつもの調子が、戻ったその時だった。

部屋のドアがノックもせずにあいた。

息を切らした小太りの男性が入ってきた。


「お父様!?」

「使徒様を逃がせ!!ニコール!!」


そう叫んだ時は既に遅く。

二人の刺客に僕らは見つかってしまったのだった。





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