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水色のコラール  作者: 大路まりさ
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第九話 アメジスト色の瞳




草笛のような音がした

草と草が振動して鳴っているような、潰れた音色

独特な音がした

けれど、その音は不思議と心地よかった





確信はまだ持ててはいないが、僕の能力ちからは「絶対音感」であることが当てはまる。

しかし、正直絶対音感なんて世の中に沢山いるはずでだったら別に十二使徒は僕じゃなくてもいいような気もする。

不安にかられながら、今日は野宿。

仰向けに寝転がって空を見れば、やっぱり星が瞬いていた。


「この調子でしたら、明日の昼頃には着きますね。」

「だよなー。腹減ったなー。」

「リオさんがサラミとパン持たせてくれてます。

それからドライフルーツも。」

「不景気なのに、僕たちを気遣わせちゃったね」

「そうですね。大事にいただきましょう。」


疲れがたまっていた。

今日歩いている中で沢山いろんなことに気付いたことに、正直まだ整頓できていない。

自分の気持ちが一直線になっていかない。

寄り道と寄り道を繰り返して、考えていると気持ちが悪くなりそうだ。

しかし、歩くだけでとくになにもないから考えてしまうのだ。


「疲れてますよね?無理をしないで」


テナは水を僕に渡してくれた。


「大丈夫?って言葉って、時には人の不安になりますよね。そんなこと、ありませんか。」


テナは薄く切ったサラミを渡してくれる。

その言葉に、僕は思わず目を見開いた。


「大丈夫って返事はしますけど、本当は大丈夫でなんかないときもありますし、大丈夫って返事をしたら、まだ頑張らなくちゃいけませんし。」


テナは僕に笑いかけた。

すると、アルトがそっぽを向いたまま言った。


「無理な時は無理っていえよ?

お前、人に合わせようとするタイプだろ。」


再び、僕は目を見開いた。

間違ってはいなかった。

人を否定はしない。

合ってることでも、間違っていることでも、とにかくその場の空気になる。

それが僕だった。


「私たちはね、一緒に楽譜を探すと決めた時から仲間ですよ。仲間っていうのはですね、空気よりも自然で、宝石よりも貴重なものなんです。」


テナがそう言った時も、アルトはそっぽを向いたままだった。

それでも、アルトは口を開く。


「言っとくが、俺はお前、嫌いじゃないぞ。」


そう言って、アルトは僕の方を向いた。


「音楽が好きな奴に、悪いやつはきっといねぇから。」


僕は、そう言ったアルトを見つめた。

なんでだろう。

また泣きそうになる。

それに、この世界で出会った人の優しさに触れる度に、なんだか懐かしい気がしていた。

まるで、ずっと昔に来たことがあるような。


「ありがとう。本当に僕は大丈夫だよ」


心からそう言えた。

二人がいてくれなかったら、僕は帰りたいと駄々をこねたにきまっている。

アルトとテナは僕をみると笑った。

それから僕らは食事を済ますと眠りに着いた。


翌日。僕は雷の音でを覚ます。

空の色が変だった。

雷の音は聞こえる。しかし雨は降っていなかった。

紫色の雲が、不気味だった。


「急ぎましょうか。」

「だよな。こんな森のなかで雷落ちられたらたまったもんじゃねぇよ」

「それは言えてる」


変だった。

雷は遠くで鳴っているのに、雨は降らない。

風もない。

だからといってお天気雨でもない。


「寒いね」

「日がでてませんからね」


少し急ぎ気味にあるくと、予定よりも随分と早くに街が見えた。

そんな時だった。

草笛の音がした。


「まただ。」

「水色??」

「また聞こえた!!草笛の音!」

「ってことは?」


もしかしたら、十二使徒に近づいている可能性がある??

三人で頷いて、街へ急いだ。

先日のようにトントン拍子ですすんでいくかはわからないが、進むしかない。


「まだ聞こえるか?水色?」

「うん!近いよ。」


空は不気味な紫色のままだった。

寧ろ、街の方が濃い紫色・・だった。


街に着くと、誰も外にはいなかった。

シモンから聞いていた街並みとは違う。

女王さまの別荘がある街。

賑わっていると聞いていた。


「道を間違えたのか??」

「そんなはずはありませんよ。」

「だよな。」


静かすぎて不気味だった。

そして聞こえる、草笛の音。

優しさに包まれた、この街には似てもにつかない柔らかな音色だった。


「たぶん合ってる。音が近いよ。」


僕は耳をたよりに街の中を進む。

本当に、廃墟のような街だった。

街を進と広場に出た。

そこには一人の小さな男の子が、草笛を鳴らしていた。

間違いない。

この草笛の音だった。


「君の音だったんだ・・・・。」


僕が思わずそう呟くと、男の子は草笛を止めてこちらをみた。

にこりと笑って、僕に笛を差し出した。


「はい、どうぞ。」

「ありがとう。くれるの?」

「うん。」


僕は草笛に口をつけて息を少し入れた。

ビーッと独特なリードみたいな音がした。

篳篥ひちりきにも似たようなその音に僕は日本を連想させた。


「草笛上手だね。名前は?」

「ラピスだよ、ラピスラズリ。お兄ちゃんは?」

「僕は水色だよ。それから、アルトとテナ。」


傍らにいたアルトとテナにもラピスは笑いかけた。


「お兄ちゃんたち、旅人さん?」

「うん。ね、この街のこと教えてくれなかいかな?

僕たちね、人を訪ねて来たんだよ。来る前にも違う町でここは賑やかな街だってきいていたんだ。」


僕がそう聞くと、ラピスは俯いた。

僕はテナから貰っていたドライフルーツを出した。


「言いたくなかったらいいよ。ありがとうね。これ、お礼だよ」


小さな子を責めても仕方がない。

反応からして何かあったに違いない。

シモンから聞いていた街とは違う気はした。

けれど、広場から続く大通りの先には、大きな屋敷がある。


「アルト、テナ、あの屋敷へ行こう。」

「はぁ!??」


アルトのこの反応も当然のことであった。


「あのなぁ!お前それは危険すぎる!!」

「でも、絶対にあの屋敷に手掛かりがあるってば」

「なんでそう思うんだよ!!理由も無しに行けるかよ!俺は賞金首だぞ」

「理由なんかない。勘だよ」

「はぁ!?」

「じゃあ、アルトはここで待ってていいよ。」


僕はテナの方を向く。

テナは頷いて、歩き出す。


「兄さん、私の勘にも根拠とかありませんけどこの街はどこか変ですよ。

それによく見ると、紫色の雲はあの屋敷から出ているような気がします。

ですから私は行きますね。確かめる価値はあると思います。」


アルトはしぶしぶ頷いた。


「いいか、何かあったら直ぐに呼べよ。」

「はい。いってきますね。」


僕たちになんだかんだでアルトは甘い。

僕たちは軽く荷造りをして、屋敷の方面へと歩こうとしたそのときだった。


「お兄ちゃん、あのお屋敷に行くの??」


急にラピスが食いついた。

ラピスは僕の服の裾を引っ張って言った。


「僕も連れて行って」


その言葉に僕たちは唖然とした。

そして、アルトがあわててとめる。


「遊びに行くんじゃねえんだぞ!お前は俺とお留守番だ!」


こうゆうところもアルトっぽい。

なんだかんだでみんなに優しい。

アルトがとめる中、ラピスは連れて行けとダダをこねた。


「ラピス君は、どうしてお屋敷に行きたいのかな??」


テナがやさしく尋ねた。

アルトは少しだけふてくされている。

僕はしゃがんでラピスと同じ目線にした。

(この子、なんか知ってそう・・・・・)

僕は思い切って自分の聖跡あかしを見せてみた。

正直これはかなり危険な賭けである。


「ねえ、こんなマーク知らない??」


もしも十二使徒とこの屋敷が関係するとしたら?

この紫色の空も、能力に関係したら??


「知ってるよ。それ、お姉ちゃんの腕にもあるんだよ。」

「お姉ちゃん??」

「うん。この広場の通りにある、仕立て屋さんのお針子だよ。」

「そうなんだ・・・・それで??」

「一年前からずっとこうなんだ。紫色の空で、太陽も出なくて。作物も採れなくて、お店がみんな開けなくなって、お店あけると泥棒も来るし、みんな家の中に篭っちゃったんだ。

・・・・お姉ちゃんがあの屋敷に連れて行かれたのもちょうど一年くらい前なんだよ。

お姉ちゃん、それから帰ってこないよ。僕、お姉ちゃんに会いたい」


テナは僕を見た。

僕もテナを見た。

そして頷く。

すると、アルトも「仕方ねえな」と言った。


能力かぜで一気に乗り込むぞ。いいな。」

「うん!」


僕とテナはアルトの肩に手を置いた。


「ほら、お前も行くんだろ?」


そしてアルトはラピスに手を差し出した。

ラピスはその手に自分の手を重ねた。

すると、アルトはラピスを抱きかかえた。


「行くぜ!!」


アルトは風を起こした。

屋敷の敷地は上空から見てもとても広いものであった。

しかし。

庭に咲く花は枯れ果て、屋敷にはつるがまかれ、まるで何十年も人の手入がないようにもみえた。

不気味なほどに屋敷の周りは薄暗い。


「誰も住んでないわけないよね?ラピス?」

「うん。一年くらい前にお妃様を見たよ。」

「その後は?」

「うーん、わかんないなあ。」

「だよね。」


そんな話を上空でしていたときだった。

再び聞こえた。独特な音。

ビーっ何かを振動させたような、独特な。


「草笛!!」


僕がそう叫ぶと、ラピスも声をあげた。


「お姉ちゃんの草笛だよっ!!」


アルトに草笛の鳴ったほうへと案内し、テラスへと降りた。

屋敷の中を見れば、灯りもついていなくて真っ暗だった。


「窓、開きそうか??」

「はい。ちょっと待ってくださいね」


さすがは怪盗。屋敷内に入るのはお手のものだ。

窓から屋敷に侵入した。

部屋には一人の少女がいた。

紫色の、宝石の宝石のような瞳だった。



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