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放課後教室にて

 秋も深まりイルカが空を泳ぐ。


「う~ん、頭いた~い」

「受験組は大変ですねぇ」

「朝早くまで勉強だよ」

「夜遅くじゃなくて」

「うん、そう」

「ふ~ん」

「興味ないなら話題ふらないでいいのよ?」


 学校中は文化祭ムードなのだけれど三年生はそうも言っていられない時期。これが終わったら本気出すって言っている人もいるけれど、それは少数派。

 でも、高校生最後の行事位楽しみたいので、勉強も頑張るが文化祭も頑張るって生徒が多い。彼女は頑張る方。


「何で寝不足だと頭痛いんだろうね」

「知らない」


 彼女は僕がやっていた花を作る作業を勝手に手伝っている。


「眠けりゃ帰ればいいのに。コレ、僕の仕事だよ?」

「いいじゃん手伝ってんだから」

「僕的にはいいんだけど」

「私的にもいいんだからいいんだよ」

「う~ん。言いたいことはたくさんあるんだけれど」

「あぁ、あなたは頭良くないから」

「そうはっきり言わなくても」

「あはは、怒った?」

「ん~? いや本当の事ですから」


 つまんないなぁ~とつつかれたけれど怒る気がしないので、うっとおしくなるまでつつかせておこうとしたら彼女の方が先に飽きて止めた。


「弄り甲斐のない人……」

「どうして僕じゃなくて君がすねるの?」


 彼女はぶ~と机にだらしなくうつ伏して紙の花を弄る。黄色い紙と白い紙の花。外では紙でできたイルカの鳴き声とそれを聞いた生徒のはしゃぎ声が聞こえた。


「あの紙のイルカさぁ。文化祭終わったらいつの間にかどこかへ行っちゃうんだよね」

「へ~」

「で、去年私の友達がどこに行くのか気になって学校に残ってたんだけど」

「うん」

「いつの間にか寝ちゃって結局わからなかったんだって」

「不思議は不思議のまま残しとこうよ」

「それを探求すんのが楽しいんだって」

「野暮いね」

「結局分からずじまいだったんだからいいじゃない」


 この学校の文化祭では三年になると自由参加で出し物とかクラスでやる店なんかもしなくてもいいことになっているがほとんどのクラスが一応実施する。他クラスとの合同という形が多いのでこのクラスも隣のクラスと一緒に作業をしている。店と言っても食べ物は色々と許可が必要なのでバザーだ。売り上げの行方は知らない。


「あ」


 イルカが二階のこの教室の窓から顔を出した。空に染まった体がまるで水にぬれたように光る。

 イルカから反射した光で教室が水の中の様だ。

 少しするとイルカはぷかぷかと泡を出しながらどこかへ行ってしまった。この学校からは出ないだろうが。


「二階まで下りてきたの結構珍しいね」

「ほとんどが屋上にいるからね」

「ていうか給水塔近くに?」


 何となくもう作業が終わりそうだったので後は僕が家でやればいいなと思って、一緒に帰ることにした。


「イルカと目が合ったし今日はいいことあればいいな」

「もう夕方だけどね」

「今日勉強するとこがセンターに出たり!」

「出たらいいね。それまで覚えてたらもっといいね」


 校門近くにいた友達三人から残れ~とかお前だけ残れ~とか僕だけ隔離されそうになったのでIさんがまだ教室に残ってた事を言ったら急用を思い出したらしく教室へ向かわれました。


「Iさん誰?」

「僕のクラスの女子」

「ふ~ん?」

「人気者なんだ。性格とか非の打ちどころがなくて」

「そうなの」

「うん。……………………ぁ。嫉妬した?」

「思い出したようにそう言われてもね」


 少し呆れたように彼女は笑って、手を繋ぐ。


「暑くない?」

「いいの」


 そう言いながら指を絡ませるようにして遊んでいる。


「あなたの手は冷たいね」

「君の手が熱いんだよ」


 くるくると笑いながら彼女と帰路につく。

 その背中ではイルカが潮を吹きその周りをカナリアが飛んでいた。綺麗な虹がかかっていたけれど、僕たちはそれに気付くことはなかった。


もうそろそろ展開しようかなと思います。

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