教室にて
初めて彼女にあったのは高校二年の時だった。
本当は中学校の時も同じ学校だったのだがその時は全く存在を知らなかった。
それを言ったら、怒られたのだけれど。一応軽い会話もしていたようだし。
「初めてあった時から、私はあなたの事が好きだったの」
三年の終り。大学には行かずに隣町の工場で働くことにした僕に彼女は言った。教室の隅でがやがやと同級生が騒いでいたけれど、彼女の声だけははっきり聞こえた。ずいぶん短くなった髪を手持無沙汰にいじりながら、少しだけ恥ずかしそうにはにかんだ。
自分の席に座って読書をしていた僕の座っている椅子の背もたれに手を掛けて覗き飲んでいたので見上げると彼女の真剣そうに見える表情と目が合った
「いきなり何?」
「付き合わない?」
一瞬だけ思考が停止して、んー?
「あれ? 僕ら付き合ってなかったの?」
「付き合ってたと思ったんだけどね」
「思ったんだけど?」
「告白されてないことに気付いちゃったの」
少し怒ったような感じで口を尖らせたけれどすぐに彼女はくすくすと笑って。
「それで」
と言って話を打ち切られた。
言いたいことはあったけれど、まぁ、いいや。
周りはと言えば相変わらずガヤガヤとこちらには無関心のように騒がしいけれど、今はそれが心地よかった。