表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

4-03 三日目~四日目


走竜ランドラたちの疲れも取れたらしく、軽快に街道を走る。

キイトは昨晩から眠っていないので、竜車の中で寝ることにした。

揺れもないので、狭くて横になれないこと以外は快適に眠れる。

目が覚める頃には国境辺りだろう。


四日目


深夜に目が覚めた。

ジローとミナミも眠っているようだったので、御者台に移動する。

「リゲル」

「キイト、起きたのか」

リゲルの髪を梳き、キスする。

リゲルもそれに応える。

「今どこ?」

「そうだな……フロウのイルタ辺りだが……明け方には国境に着く」

リゲルの腰を抱き、密着する。

御者台は寒いが、リゲルの体温はあたたかい。

「明け方まで寝ておく?」

「ん……そうだな……このまま……」

キイトに凭れかかったまま、リゲルは瞼を閉じる。

すぐに寝息が聞こえ始めた。

リゲルを抱いたまま、景色を眺める。

この世界は緑が多い。

フロウは山が多く、海沿いで、夏に来ると楽しそうだ。

夏。

次の夏、リゲルとここに来れたら良い。



検問所を通り、ステープに入国した。

ステープは大陸の最南端に位置する小さな国だ。

この国を抜ければ大陸の東側に入る。

「ステープを越えたら街道から外れる。魔物も出るから注意してくれ」

いよいよか。

そこからは三人の睡眠を確実に交代制にする。

ミナミは戦闘力にならないので除外し、一人が寝ている時、常に二人は起きておく。

「ステープで出来るだけ食糧を買い込んでおこう」

気を抜けるのはこの国まで。

次からは気を抜けない。

手強い魔物は早々いないが、少しの油断が命取りになることもある。

少し走ったところに街があり、そこに寄ることになった。

テントのような布製の建物の多い、雰囲気のある街だ。

なぜか街の中に浅いプールのようなものがあり、そこで遊んでいる子供が大勢いる。

冬だからか中に入ってはないが、水を飛ばす玩具で遊んでいるようだ。

「元気っすねぇ。水鉄砲には見えないっすけど……」

気になるのかちらちらと子供たちを見てる。

「リゲルさん、気になるんでちょっと行ってきたいっす。ちょっと自由行動しましょう」

返事を待たず、ジローはプールに走って行った。

人のことを自由人だというわりに、ジローも大概である。

「……買い物を済ませるか」

食料品を取り扱う店に行き、日持ちのするものを買う。

エトランは国産の保存食が少なかったが、この国はそうでもないようだ。

カンパンのようなもの、干し肉、燻製、ドライフルーツなどを購入。

走竜ランドラたちの餌にするアカの実が売ってなかったので、代わりになる果物を探す。

魔物の餌は魔力を含む植物だ。

アカの実ほど含有量があるものはなかったが、大丈夫だろう。

質が足りなければ量でカバー。

「ジローが戻ったら食事にしよう。それまで雑貨でも見るか?」

果物屋の横に雑貨屋があるようだ。

布の上に様々な商品が並べられている。

「魔動石……?」

「これは魔光石だ。魔動石の一種ではあるが」

「兄ちゃんたち、観光? 天然魔光石はステープの特産だよ! 土産にどうだい?」

黒い石に黄色の筋が入っているという不思議な模様。

それを装飾品や雑貨に加工されているのだが、何というか、趣味が合わない。

装飾品なのに綺麗ともかっこいいとも思えないとはどういうことだ。

デザインの問題ではなく、石の色の問題だ。

日本では見たことのないものだから先入観が邪魔するのか。

「魔光石は暗い所で光るんだ」

「へぇ」

「普通の魔動石とは違い、人工ものがない。希少だから高値だ」

「……」

なるほど、わりと高い。

宝石だと思えばこんなものなのか?

今製造方法が解明されたら稼げるかな。

ケーキ屋の仕事だけでも生活は出来るだろうが、将来のことを考えると収入は多い方が良い。

「これください」

一番安い、加工されてない魔光石を購入した。

せっかくなので研究してみよう。

調理器具や服などを見ていると、ようやくジローが戻ってきた。

「おせぇよ、腹減った」

「サーセン!」

朝にしては遅く、昼にしては早い食事。

蒸された米が主食でおかずが数品。

メインは魚介と野菜を蒸したもので、これをタレにつけて食べる。

タレが旨い。

あとは串に刺さった獣肉や果物の和えものだ。

「あー、米は良いな」

やはり食べ慣れているものが一番おいしく感じる。


食事を終え、少し買い物をした後、出発した。

リゲルは次の検問所まで竜車の中で寝るというので、キイトとジローは御者台で時の魔術を練習することにした。

時の魔術は物質の時間を止めたり、早めたり、緩やかにしたり、戻したりである。

竜車の上で出来てわかりやすい練習方法ということで、咲いている花をつぼみに戻す、という練習することにした。

ちなみにキイトの最終目標は食品の長期保存である。

「時の魔術が完璧になったらかなり便利っすね」

「確かにな。悪用も増えそうだよな」

悪用されないよう対策を考えてから一般流通させないとまずいな。

特に生身の人間には使用出来ないようにしないと。

「あ、先輩の花、ちょっと元気になってません?」

長時間水に浸してなく、萎れかけていた花が、ほんの少し復活しているような気がする。

「ちょっと成功してるのかもな」

さらに魔術を上掛けする。

一時間程かけ続け、花はつぼみになった。

「出来た、けど、これ、マジ疲れる……!」

頭がクラクラする。

「大丈夫っすか? 今日はこんくらいにしときます?」

「そうだなぁ……」

出来始めにやめるより、やり続けた方がコツは掴めそうだが。

「もうちょい、」

汗が滲む。

冬なのにな。

今までにないくらいの集中で、花は種にまで戻った。

「すげえっす。俺のまだつぼみっすよ……」

所要時間と疲労具合がこれだけだと、常用に時の魔術を使うのは難しいな。

魔動具を作るときくらいは良いかもしれないが。

慣れれば上達するかもしれないし、練習を重ねていこう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ