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ノーグ・コンフェクショナリー  作者: クドウ
カネル公爵家
20/48

2-01 デート




キイト・カネルになって数日。

ようやくリゲルとデートに扱ぎ付けた。

マコが仕事で予定が合わず、偶然2人になっただけであるが。


前回同様ビストロで食事することになったのだが、今回はアルコール込みだ。

このエトランでは16歳は成人なので、アルコールも注文できる。

ボードに書かれているおすすめの食材の中から好きなものを選ぶ。

今回はピグゥという獣肉をアルコールのつまみに合うようにと注文した。

濃い目の煮込み料理に薄くスライスされたバケットのようなもの。

浸したあとハーブを乗せて食べるらしい。

アルコールはアカの実のワイン。

酸味があり軽い口当たりで飲みやすい。

「店はどうだ?」

「ぼちぼちかな」

店の売り上げは3人分の給料を十分に払えるくらいとぼちぼちだ。

店の純利益分はほとんどないが、給料が出るだけ上々である。

「まぁ少しずつ客足は増えてるかな」

前に来ていた人が戻って来たり、この店から流れて来たり。

順調である。

「それは良かった。マコとミナミも問題なく過ごしているよ……あぁ、ワインのおかわりはどうだ?」

そうか。

二人とも何もなくて何よりだ。

特にマコの侍女なんて不安すぎるからな。

「いや、そろそろやめておく。明日は討伐隊に参加しないといけないから」

そう。

初の臨時の討伐隊参加である。

登録されて即とはどういうことか。

ジローの呪いか。

「魔物討伐か。明日はどこに?」

「あー……確か西つってたかなぁ。ピグゥ討伐だってさ」

「ピグゥか。となると……また近いうちに食べられるな」

「食べられる?」

「ピグゥが大量発生すると討伐隊が組まれるんだ。群れは危険だからな」

草食動物だし、むやみに攻撃してくることはない。

ただ1匹に手を出すと群れで襲ってくる。

攻撃は単純だが力が強いこと、数が多いことがネック。

慣れていないと大変だろう。

「量が多すぎるからその後食堂なんかに配布されるんだ。それ目当てで一般人が暴走しないように。まぁ一般人に被害が出ないように取られた対策だ」

なるほど。

個人が狩りに行って負傷者が出ないように、か。

ピグゥは繁殖率が高いため、よく大量発生するらしく、よく臨時の討伐隊が組まれるようだ。

ピグゥの好物でもあるアカの実も、一年に何度も収穫出来る。

成長が異様に早いのは、魔力の影響ではないかといわれているが、まだ判明していない。

個人的には、この世界の食べ物と元の世界の食べ物で違うものは、魔力の影響があるんじゃないかと思う。

その証拠に同じ食べ物を食べても変化がないが、違う食べ物を食べると微量ながら魔力が回復しているように感じるのだ。


「せっかくだからな、デザートプレートを頼もうか。キイトは?」

「俺は良いわ」

リゲルがデザートプレートを注文する。

デザートプレートは日替わりで、プチケーキを2種類とアイス、果物とソースを添えたものだ。

今日はシューとチーズケーキでアカの実のソースと季節の果物を添えてある。

これは意外と人気があり、最初こそぎりぎり10、といった具合だったが、最近では20、30と出るようになった。

ありがたい。

美味しそうに食べるリゲルを見て癒される。

あぁかわいい。

しかしあれだ。

髪の長くて邪魔なのか、耳の辺りで押さえる。

その仕草も食事の時に結ぶ仕草もどっちも良いよな。

項も良い。うん。

「リゲルさん、お久しぶりです」

「ターシャ」

ビストロの女性店員が食べ終わる頃を見計らい、近付いて来た。

「お元気そうで何より。……ちょっと色々あって、戻って来ちゃいました」

「そうか」

「ふふ、やっぱり実家は良いですね。これからはもっとお店に来てくださいね!」

どうやら顔見知りらしい。

それはそうか。

元々この店はリゲルの紹介だ。

「あぁ、また来る」

「ところで、お二人はどういうご関係ですか?」

「え……」

リゲルが言い淀む。

珍しいな、即答しそうなのに。

「恋人候補」

「へー! そうなんですか! いいなぁ、青春だなぁ」

「ちょっ……!」

しれっと答えてみると、リゲルが慌てだした。

何故。

嘘は言ってない。

「俺が今一方的に口説いてるとこですけどね」

「がんばってね!」

「勿論」

「…………」

恥ずかしかったのか、顔が赤いまま、睨みつけてくる。

全然怖くないが。

「そろそろ恋人に昇格ってどう?」

そろそろも何もまだデート1回目ですが。

「……帰る。明日は早いだろう」

残念。

しかし拒否されなかったので良しとする。

耳まで赤いリゲルを追い、店を出た。

ツケが通用するって良いな。


「リゲル、送る」

「良い。すぐそこだ」

「そういう問題じゃないから」

強引に手を取り、そのまま繋いだ。

指を絡める。

「戦況はどう?」

「芳しくない」

せっかく手を繋いでいるというのに、色気のない話題を出してしまった。

「戦場に行くのは本当に及川だけ?」

「……ああ」

「残り4人は何のためによばれたわけ?」

「救世主はひとりだ。巻き込んで申し訳ないと……」

「そう言えって、英雄に言われた?」

リゲルがびくりと震え、手を払おうとした。

させないけど。

「5人、必要なんじゃねぇの?」

リゲルが俺を見詰める。

会話の内容がこれじゃなかったら良い雰囲気に持っていけたのになぁ。

「正直に話してくれれば、協力できるかもよ?」

揺らいだ。

キイトはそれに気付いていないふりをしながら、優しく髪を撫でた。

「悪いようにはされないってわかってるから。リゲルを、信用してる」

眉をきゅっと寄せ、目を瞑る。

その眉間に唇を寄せた。

「今すぐじゃなくて良い。マコもジロも、正直に話せば協力してくれると思う」

しかしこんなにわかりやすくてよく国の要としてやっていけてたな。

それほど平和だったってことか。

「いずれ、話す。今は、まだ……」

「待ってる」

そのまま無言で城まで辿り着いた。

ゆっくりと手を解く。

「また、誘うから」

リゲルが小さく頷いた。




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