1-qu 会議
会議室に宰相と魔女、それから四大公爵家の代表者が集まった。
魔術のカネル。
武力のランル。
人脈のフレネス。
資産のロア。
エディことエドワード・カネルはカネル家次期当主としてこの会議に参加する。
現当主の父親はこの会議、というより救世主召喚すべてに関して面倒臭がり、引き篭もっている。
おそら午前中のこの時間は惰眠を貪っていることだろう。
救世主云々に関して、というよりほぼすべてなのだが、カネル家の実権はエディが握っている。
「さてそれでは、改めて救世主と共にこの世界にやって来た4人の後見を頼みたい」
リゲルの言葉に真っ先に反応したのは、ランルだ。
「マコト・サワラとジロー・ミヤオはランル家が責任を持って保護しよう」
やはりか。
魔物討伐で先陣を切った二人だ。
強い人間が好きなランルらしい選択。
しかし個人としてもカネル家としてもそれはまずい。
四大公爵家とは名ばかりで、実際に権力を持っているのはカネル家だ。
続いてランル家という具合だ。
権力云々に固執したくはないが、魔術の研究にかなりの国家予算を割いているので仕方が無い。
もしもランル家がカネル家の上を行ってしまえばその予算は削られ、騎士団に持っていかれることは明白。
それだけは避けねばなるまい。
予算に関しては譲れない。
「せっかく公爵家も四家なのです、一家に一人保護すれば良いではありませんか。ジロー・ミヤオはカネル家が保護します」
「私もそう思います。我がフレネス家はミナミ・カスガを保護しましょう。妻は元々精霊の巫女ですから、その方がミナミ・カスガも助かるでしょう」
ランルは悔しそうに顔を歪め、睨んでくる。
これだから単細胞は。
「それではロア家にキイト・フジムラということでよろしいか?」
「……まぁ、仕方ないでしょう」
渋々といった風に了承する。
予想通りの反応だ。
「不服ならキイト・フジムラもカネル家で保護しましょうか」
ロア家は四家の中で一番資産が潤沢だ。
税で潤い、商売で潤い、何より出費にも煩い。
つまり無駄な人員など要らない、とそう考えるはずだ。
今回召喚された4人は使用人として引き取るのではない。
むしろ優遇しなければならず、本人が希望すれば大きな出費もありえる。
ロア家がそれを厭わないはずがない。
「まぁ、当方としても、それは助かりますが」
「ジロー・ミヤオとキイト・フジムラは仲が良いようですから、一緒だと知れば喜ぶでしょうし」
「カネル家がキイト・フジムラを保護するのならば、ジロー・ミヤオはランル家が……!」
「何を言っているのです。二人が一緒だと喜ぶだろうと言っているのに。それにもう一人というならばキイト・フジムラを保護するのが筋でしょう」
「くっ……」
「決まったな。キイト・フジムラとジロー・ミヤオはカネル家だ」
溜息を吐き、リゲルがどうでも良さそうに宣言する。
個人の権力は持つが、家族はなく、公爵家でもないリゲルにはあまり関心のない話なのだろう。
しかし、当初の予定通り、二人を確保出来て良かった。
キイト・フジムラが魔物討伐で活躍しなかったおかげである。
エディはひっそりと笑った。