不器用な男の恋愛
女を助けてから数日が過ぎ…
いつものように目的もなく街をただ歩いていると…
「ありがとうございました」
花屋から聞いた声が聞こえてきた。
「あっ! あなたは」
ナオは突然の事で言葉を失っていた。
あの日から、度々彼女の事が気になっていたから…
無言のまま、その場所から歩こうとした時…
「待って!」
「この間のお礼をしてなかったから…」
「お店に来て!」
そう言われ、何も話せないまま彼女の後を歩いた。
「この間は、ありがとう」
そう言って彼女は、コーヒーを出した。
「私の名前はマリ」
「あなたは?」
「あっ… ナオ」
店先から男の声が…
「ただいま~」
笑顔で部屋に入って来た。
「あれ?お客さん?」
「こないだは、助けてもらってありがとう」と間髪いれずに話す男は…
「弟のコウヘイです。」
ナオは一瞬安堵にとらわれた。「弟? なんだ弟か!」
そうか弟なんだ!
その場を笑って誤魔化した。
「でも、何で?絡まれてたの?」
コウヘイはナオに話した。
「お客さんに花を届けた帰りに、代金を貰うところを見られて…」
「それで…」
「その後に、母のお墓参りに行くので姉さんと一緒に…」
「そっか…」
ナオは何も言えなかった。
3才になった頃に両親はナオを、魔法の国に売った事を思いだしていた。
マリはナオの顔を見て…
「どうかした?」と尋ねたが…何も答えないままナオは店を出た。