気がつくと伝説の花になっていた
「俺は自室で寝ていたはずなのに……
“なんで花になってんだよおおーー”!!
おいおいよく考えろ、なんでだ……これは夢か? なら、頬を引っ張れば……って……届かねぇじゃねぇか!!」
男の名前は鼻野檀志。
檀志は広大な土地を見下ろすかのように、断崖絶壁の途中に異質なように咲く花となっていた。
見た目はひまわりの茎を低くしたニセモノのような感じで、花びらは紫色でなぜか発光していた。
そして、檀志は自分の頬を引っ張ろうと葉を動かそうとするが全然動かなかった。
「って、なんでこんな眩しいんだよ!!
マジでどういう状況だよ!! 帰らせろ!!」
檀志は不条理な状況にイライラが募っていくばかり。
だが、何も変わるわけがない。
「……ふ〜よし、状況を整理しよう。まず俺は自室のベッドで寝ていた。
転生の条件は大体死に瀕した時に起こるものだ……漫画によれば。
なら、俺は死んだのか? 何が原因だ?
もしかして……」
檀志は慌てていた心を落ち着かせて、必死に頭を働かせ始めた。
そして、一つの心当たりを思い出した。
「俺、確かあの日の前にピエロの仮面を被った、黒服の男?と肩がぶつかったんだった……
ふざけんなよ!! なんでそんだけで俺が殺されなければならないんだよ!!」
檀志は逆に殺してやると殺気立った様子で叫び散らかした。
その怒りは収まることを知らない。
「あとなんで、花なんだよ!! 普通はハーレムとか最強の魔法使いだろ!!」
「ついに見つけたぞ!」
檀志の下の方から開放感漂う声が聞こえてきた。
しかし、檀志は見ることができない。
ただ、耳をすませるだけしかなかった。
「あれが伝説のどんな毒でも治すことができる花びらを持つ、ビライン・テンパラ!」
女性の疲れたような声が聞こえた。
「これで王女様を救えるぞ!」
ハンサムで爽やかな声が聞こえた。
「俺は普通そっち側だろ!! 勇者が良かった!!」
檀志はもう我慢の限界で愚痴を吐き捨てるばかりだった。
「よし、ガケ・ノ・ボールー。これで崖登りなんかすぐだ!」
「ガケ・ノ・ボールー」
「ガケ・ノ・ボールー」
ハンサムな声を皮切りに、他の2人も呪文みたいなものを叫んだ。
そして、檀志に向かって来てるのがひしひしと感じてくる。
「あと、もうちょっとだぞ!」
ハンサムな声が檀志のすぐ下から聞こえてきた。
「えっ!? 俺、転生して10分たらずで終わるの?」
檀志が不思議がっていると目の前に革手袋をした手が現れた。
「“いやだ〜〜"」
檀志が死を覚悟した時、勇者っぽい姿の人は檀志を見て通り過ぎて行った。
「あん??」
檀志が困惑していると、今度は柔らかそうな手が現れた。
「いやだーやめて〜〜」
檀志は今度こそ死を覚悟した時……
「げぇ! こんな所にも生えてんのかよ!」
女勇者が汚物を見る目で見ていた。
「マジでどこでも生えるよな! “電飾”花」
「は? 俺が伝説の花じゃねぇのかよ」
檀志が怒りと困惑で吐き捨てると、女勇者が“ブチッ”と檀志の茎を引きちぎって捨てた。
「はああああ?!!!」
檀志は叫びをあげて落ちていく、そんな中で最後に目にした光景は、自分がいた所の真上に生えた金色に輝く花だった。
***
人間だった頃の檀志はタバコを吸っている時に寝落ちして家が全焼して亡くなった。




