表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

35




「離せねえ」


自分でも驚くくらい、はっきり言った。


格好つけず、


余裕もない。


ただ、本音。


その言葉が落ちたあと、


部屋が静かになる。


七瀬は、すぐには何も言わない。


目を逸らさない。


逃げない。


その視線が、試すでも、責めるでもなくて。


ただ、確かめてる。


そして。


ゆっくりと、息を吐く。


「……じゃあ」


声は小さい。


でも、震えてない。


「ちゃんと捕まえてて」


胸の奥が、強く打つ。


捕まえてて。


命令じゃない。


縋りでもない。


覚悟を渡される感覚。


離せるか、じゃなくて。


離すな、でもなくて。


“ちゃんと”捕まえてて。


中途半端にじゃなく。


衝動だけじゃなく。


気分だけじゃなく。


ちゃんと。


その重さが、一気にのしかかる。


でも。


怖くない。


逃げたくない。


「……ああ」


今度は、迷わない。


腕を伸ばす。


さっきみたいに乱暴じゃなく。


でも、遠慮もしない。


七瀬の体を引き寄せる。


抱きしめる。


今度は、確かめるみたいに。


縛るんじゃなく。


包む。


七瀬が抵抗しない。


むしろ、少しだけ体を預けてくる。


それだけで、呼吸が戻る。


「捕まえる」


独り言みたいに。


でも、はっきり。


「離さねえ」


さっきの暴走とは違う。


静かで、重い。


衝動じゃなくて、選択。


七瀬の髪に触れる。


乱れた呼吸が、少しずつ揃っていく。


三日間の呼吸困難が、


やっと抜ける。


奪われるのが怖くて暴れた。


でも今は。


奪うんじゃない。


選ばれてる。


そして、選ぶ。


七瀬の体温が、ちゃんとここにある。


「……ちゃんとだぞ」


小さく、念押しみたいに呟く。


自分に。


覚悟を、逃がさないために。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ