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さっきまで荒れていた呼吸が、嘘みたいに落ち着いている。


部屋の空気はぬるくて、重い。


やってしまった、という感覚が、遅れて胸に広がる。


衝動のまま、引きずって、押し倒して。


本音をぶつけて。


余裕なんてひとかけらもなかった。


七瀬は、何も言わない。


隣にいる。


逃げてない。


泣いてもいない。


でも、何も言わない。


それが一番きつい。


喉がひりつく。


さっきまであんなに言葉が溢れていたのに

今は出てこない。


最低だ。


距離置こうって言われて。


分かったって言ったのに。


三日で破って。


しかも、あんな形で。


独占欲丸出しで。


“俺のもんだ”なんて。


何様だよ。


視線を向けるのが怖い。


もし、呆れた顔してたら。


もし、やっぱり無理だって目をしてたら。


耐えられない。


七瀬は、静かに呼吸している。


穏やかだ。


さっきまでの熱が引いている。


俺だけが、まだざらついている。


「……ごめん」


小さく漏れる。


言うつもりなかったのに。


勝手に出た。


衝動で動いたくせに、今さら。


情けない。


「……やりすぎた」


認めるのも、きつい。


でも。


後悔してる。


奪われるのが怖いとか、


楽そうだったのが腹立ったとか、


全部本音だ。


でも。


怖がらせたら意味がない。


壊したら意味がない。


七瀬はまだ何も言わない。


それが、怖い。


怒ってくれたほうが楽だ。


殴ってくれたほうが分かりやすい。


でも。


静かに隣にいる。


その沈黙が、俺を追い詰める。


「……離れたほうが、よかったか」


ほとんど独り言。


聞こえてるのかも分からない声。


自分で壊しにいった。


もし今、七瀬が立ち上がって帰ったら。


止める資格、ない。


本気だとか言いながら、


結局、衝動に負けた。


最低だ。


なのに。


まだ。


隣にいる体温が、消えない。


それが、希望みたいで。


余計に苦しい。




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