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「……くそ」
三日。
たった三日だぞ。
それだけであんな顔で笑えるのかよ。
俺いなくても平気みたいな
呼吸できてる顔。
「楽なんだろ」
自分でも分かる。
八つ当たりだ。
「俺いねえほうが、息しやすいんだろ」
言いながら、胸が痛む。
これ、聞きたくない答えだ。
でも頭の中でずっと鳴ってた。
距離置いて、
あいつはちゃんと寝て、
ちゃんと笑って、
ちゃんと生活してる。
俺は?
夜、部屋で一人呼吸浅くしてるだけ。
「なんで俺だけなんだよ」
独り言みたいに吐く。
七瀬を見ない。
見たら止まる。
「好きって言っただろ」
掠れる。
「足りねえのかよ」
足りなかったんだろうな。
分かってる。
言い方も、タイミングも、覚悟も。
全部中途半端だった。
でも。
「奪われたくねえんだよ」
これだけは本音。
「他のやつの隣で笑うな」
情けない。
独占欲。
自分勝手。
「距離置くとか言っといて」
自嘲気味に笑う。
「置けるわけねえだろ」
三日でこれだ。
一週間? 一ヶ月?
無理だ。
「俺のもんだって言えよ」
最低だ。
人を物みたいに。
でも。
「俺の隣にいるって言えよ」
これが本音。
綺麗じゃない。
好きとか安心とか、
もう全てどうでもいい。
失うのが怖い。
それだけ。
七瀬の呼吸がすぐ下にある。
近い。
逃げてない。
それだけで、
理性が削れる。
「……離れて楽になるなら」
喉が詰まる。
言いたくない。
「俺は何なんだよ」
静かに落ちる言葉。
怒鳴らない。
暴れない。
ただ、本音が零れてる。
「好きなんだよ」
今度ははっきり。
誰に言うでもなく。
「めちゃくちゃ好きだよ」
呼吸が混ざる距離で。
「だから、余裕ねえんだよ」
七瀬の目を見る。
逃げない目。
それがまた、俺を壊す。
「奪われるくらいなら」
言葉が途切れる。
その先は、
綺麗じゃない。




