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最近、優しい。
触れ方も、声も。
ちゃんと彼氏。
私もちゃんと彼女。
隣にいるし、
キスもするし、
手も繋ぐ。
何も問題ない。
ない、はず。
「……七瀬」
帰り道、コンビニ前。
いつもの低い声。
「なんですか」
ちゃんと笑う。
完璧。
鷲尾さんは珍しく少し黙る。
「……不安か?」
え。
一瞬、分からなかった。
「は?」
素で出た。
「俺といるの」
なんで。
なんで今それ。
胸、ぎゅっと縮む。
不安?
そんなの。
ずっと。
でも。
「別にぃ?」
反射。
軽く。
上手くできた。
「……嘘だろ」
なんで分かるの。
何も言ってないのに。
「俺、なんか足りねえ?」
その言い方、ずるい。
自覚あるんだ。
あの日。
私には言わせたくせに。
自分は、ちゃんと渡してないこと。
分かってるんだ。
喉、乾く。
言えばいい。
「好きって、ちゃんと言ってくれないから不安です」って。
簡単。
なのに。
言ったら、
重い。
面倒。
面倒な女になる。
「……足りないとか、ないですよぉ」
笑う。
ちゃんと笑えてる。
「ちゃんと彼氏だし」
ちゃんと。
その言葉、自分で刺さる。
ちゃんと、って何。
十分じゃないってことじゃん。
近いのに、遠い。
本当は。
触れられるたびに思う。
体温はあるのに、
核心がこっち向いてないって。
私だけ、先に言った好きが、
宙に浮いたまま。
言え。
言えよ、私。
でも怖い。
また、あの間があったらどうするの。
「七瀬」
「俺、お前が思ってるより本気だぞ」
“思ってるより”。
そこ?
比べるの?
確信じゃないの?
やっぱり。
本気なんて、分からない。
「……そうなんですかぁ」
笑う。
完璧。
でも胸の奥、
まだ冷たいまま。




