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――廊下


笑ってる。


あの声。


他部署の女の人と、距離が近い。


楽しそう。


自然で。


あの日みたいな低さも、緊張もない。


普通。


それが一番、刺さる。


私が離れた。


私が逃げた。


だから正しい。


ああやって普通に戻るのが、正解。


……なのに。


胸の奥、じわっと熱い。


息がうまく吸えない。


ヒールの音が、やけに響く。


角を曲がるって立ち止まる。


喉が、詰まる。


違う。


泣くほどのことじゃない。


本気でもない男に、何期待してるの。


「……っ」


だめ。


目、熱い。


こんなの、最悪。


ぐっと、唇を噛む。


父に言われた。


「泣くなら、家で泣け」


ここは外。


私は、七瀬。


ゆるくて、あざとくて、誰にも惑わされない女。


……の、はず。


「七瀬」


背中が固まる。


振り返らない。


足音、近づく。


「……なんですかぁ」


声、上手く出た。


いつもの、ふわふわ。


完璧。


「なんで泣いてんの」


近い。


近い。


来るな。


「泣いてないですよぉ」


笑う。


目、合わせない。


「七瀬」


名前。


低い。


やめて。


「……やめてください」


掠れる。


仮面、ひび入る。


「話、きいて」


何それ。


今さら。


「話すことなんてありません」


きっぱり。


これ以上近づいたら、


本気になってくれないくせに、とか。


期待させないで、とか。


放っておかないで、とか。


言いたくない。


言ったら、負ける。


「……俺はある」


心臓、うるさい。


「逃げたのはお前だろ」


分かってる。


分かってるよ。


でも。


「追わなかったのは、そっちです」


言っちゃった。


目が熱い。


でも泣かない。


絶対。


「……泣いてんじゃねえか」


優しく言うな。


優しく言うなよ。


「七瀬」


また、名前。


触れそうで、触れない距離。


あの日と同じ。


でも今日は。


逃げられない。




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