表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

13




「おはようございますぅ」


笑顔。


軽い声。


距離。


絶対に二歩。


昨日のことはなかったみたいに。


鷲尾を見ると心臓がうるさいから、見ない。


資料はメールで送る。

直接渡さない。


昼も違うテーブル。


徹底。


——止めるなら、今。


あれ以上いったら戻れない。


キス、されなくてよかった。


ほんとに。


……ほんとに?


「七瀬」


反射で肩が揺れる。


「これ」


デスクに置かれた書類。


それだけ。


触れない。


距離も詰めない。


でも。


「昨日の、続き」


低い声。


視線が上がる。


「俺、ちゃんと考えた」


やめて。


「考えなくていいです」


鷲尾の眉がぴくりと動く。


「なんで」


「仕事中です」


鷲尾は少し黙る。


それから、いつもの調子に戻した声で言う。


「今日帰り空いてる?」


は?


「空いてません」


「嘘つけ」


「予定ありますぅ」


「誰と」


近い。


声が少し低い。


「関係なくないですか?」


昨日言った台詞。


鷲尾の目が一瞬だけ細くなる。


でも怒らない。


代わりに、少しだけ口角が上がる。


「逃げんなよ」


怒りじゃない。


余裕でもない。


決めた顔。


喉が鳴る。


「逃げてません」


「逃げてる」


同じやり取り。


でも、今日は違う。


鷲尾は一歩も詰めない。


触れない。


「分からせてやるって言っただろ」


低く、真っ直ぐに。


「ちゃんとやるから」


「……何を」


聞くな。


聞くな私。


「本気」


視線逸らさない。


ああ。


これ。


怖い。


衝動じゃない。


昨日みたいな勢いじゃない。


ちゃんと、覚悟みたいな目。


やめて。


そんな顔で追ってこないで。


もっと好きになる。


「意味わかんないです」


震えてない。


ちゃんと、言えた。


「私、軽いの嫌いなんで」


挑発で、防御。


「だからちゃんとやるって言ってんだよ」


逃げたい。


でも。


追われるの、嬉しい。


最悪。


ほんと最悪。


「……好きになんて、なりませんから」


小さく。


でもはっきり。


鷲尾は少しだけ笑う。


「同じセリフ、言えるといいな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ