(第5章 若くて魅惑的な新しい母)
ヒトミは、新しい母親というより、姉のように家族の中に馴染んでいた。今までの母とは違い、すぐに打ち解けることができた。実際、よく兄妹に間違われた。二人一緒にいるだけで絵になった。
「男の子なのに、本当に綺麗。タレントかモデルにでもなれそう」
とヒトミは無邪気にドレスコードを選び、着せ替え人形のように悠一で遊んだ。
「永井家の当主になられる方が、モデルですと?」
と、ハル爺やは憤慨していたような気がする。
テレビも雑誌も見ない悠一には、ヒトミの言っていることが、あまり理解できなかったのだが、ヒトミの手で髪型を変えられ、化粧までされたら、まるで別人のようになった。
「私、美容師の資格持ってるの。悠一君がモデルだったら、世界のコンテストで優勝できたかも?」
と言って、またハル爺やに叱られていた。
とはいえ、ヒトミママが来てから、永井家は明るくなった。若くて美しい女性が近くにいるだけで、こんなにも華やぐとは思いもよらなかった。
結婚した当初は、海外にもヒトミを頻繁に連れて行っていた父だったが、英語のできないヒトミは、父の
顔に泥を塗らないようにと、一緒に行くのを拒み始めた。
「何を言っているのか、さっぱりわからないし。毎日、あんな豪華な食事ばかりしていたら太ってしまう」
と言って、自ら食事を作ったりして、使用人の仕事を奪い、怒られてばかりいた。
「やっぱり、育ちの違いでしょうね。施設で育ったヒトミ様には、こんな生活も窮屈なんでしょう」
と女給たちが噂をしていた。
そこで、一番年齢の近い悠一だけが、ヒトミママの話し相手であり、ほっとできる居場所になっていたのだろう。多忙を極めていた父は、ほとんど海外にいて、新婚なのにヒトミに会えることは滅多になかった。
年齢の近い二人の無邪気な姿は、それでも永井家に、明るい陽光を運んでくれたかのようだった。最初は遠慮がちにじゃれ合っていたが、次第に打ち解け、仲良しになった。
まるで映画【小さな恋の物語】のように、目が合うだけで頬を染め、指が触れ合うだけですぐに離れようとする、プラトニックな関係だった。そして、それはきっと、ずっと続くだろうと、お互い信じて疑わなかった。
周囲の目など気にすることが不思議なくらい、子供だった。さすがにハル爺やが、
「一応、男女なのですから、二人きりでの行動は、変な誤解を受けますので、おやめください。」
と叱ったが、二人は笑い転げて、相手にしなかった。
思えば、一番美しく、幸せな時だった。




