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(第57章 結婚新婚旅行)



結婚式には葵も出席してくれていた。あとは、永井の美人秘書たちや社員ばかりだった。美子には家族もおらず、どこにいるかもわからない。友人とていない。

奥野が「綺麗だよ」と言って赤面するのが可笑しくて、噴き出して怒られた。

ふと見ると、永井悠一が悲しい目をしてこちらを見ていた。孤独で、凍りそうな目でじっと見つめられ、声をかけることもできなかった。

すぐに美人秘書に飲み物をもらい、談笑していたが、その寂しそうな顔が美子は気になって仕方なかった。

『奥野先生のことが好きだって言ってたから、寂しいのかしら?』と、美子は「女を愛せない」と言っていた永井の言葉を取り違えていた。

悠一は、その日は決して美子と目を合わせなかった。それは不自然なほどだった。

そして美子も、奥野との結婚を心から喜び、幸せだと周囲にアピールしようと必死だった。

奥野は、美子の望む結婚式を挙げ、新婚旅行もヨーロッパの国々を周遊するという贅沢なものだった。初めて行く都市ばかりだ。イタリアのベニスではゴンドラに乗り、仮面舞踏会にも出席した。怪しい仮面に隠された素顔。そこに永井の気配を感じたのは、思い違いだろうと首を振る。

美しい麗人たちの秘めたる世界。ただただ奥野の腕にしがみつき、「グラッチェ」を繰り返した。

ワインに酔ってホテルに帰り着くと、意識がなくなった。朝起きると、

「昨夜は可愛かったよ」とウインクされた。

何も覚えていないなどとは言えず、下を向いて裸の体にシーツを巻きつけ、シャワー室に逃げ込んだ。

鏡に映る体には、あちこちにキスマークのような跡がついていた。

『何も覚えていないなんて、失礼なことをしてしまった』と後悔と自責の念にかられ、

「これからは、調子に乗ってアルコールを飲むのはよそう」と決意した。

シャワーを浴びると、永井の匂いがした気がした。

『男の人って、みんな同じ匂いがするのかしら? それとも、同じフレグランスを愛用しているのかな?』と思った。

次のドイツのリューベックでは、山の上からリフトで下りながら古城を眺め、フランクフルトでビールと乾杯をした。

パリのルーブル美術館には二日続けて行き、名画を楽しみ、カフェで会話に夢中になった。

エルメスやヴィトン、シャネルで鞄や財布、マフラーや靴を買ってもらい、五つ星レストランでフレンチをいただいた。

ホテルも、格式があり落ち着いた、ヨーロッパの歴史ある宿だった。

朝食のフランスパンやクロワッサンの美味しさに驚き、夕食のボリュームの多さに閉口した。

贅沢な結婚生活のオープニングにふさわしい、新婚旅行だった。

しかし、半月ほどの新婚旅行から帰ると、美子は病床に就き、微熱と体のだるさで一日中寝てばかりいた。








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