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(第56章 愛の饗宴)



トントン拍子に話は進み、美子は奥野と結婚した。永井も何事もなかったかのように、手放しで二人の結婚を祝ってくれた。結婚前夜、永井の部屋に美子は訪ねた。

「親もいないし、お世話になったのは永井社長だけなので、最後の挨拶をさせてください。短い間でしたが、お世話になりました。本当に感謝しています」

まるで、嫁に行く娘が両親に挨拶をするかのようだった。

「美子ちゃん、本当に綺麗になったね。恋をすると女は美しくなるって、本当なんだね」

と永井は、初めて一緒に飲んだワインを片手に乾杯を促した。そのワインを受け取って、

「ありがとうございます」と言い、永井のグラスと合わせる。

「美子ちゃんの、永遠の幸せを祈って」と祝福して、永井は真っ赤なワインを一気に飲み干した。

美子は、その豊潤な香りを楽しむように匂いを嗅ぎ、目を輝かせながら口に含んだ。

何か違和感があったが、喉に無理やり流し込んだ。その途端、ワイングラスが手から落ち、ガラスの割れる音がしたが、そこからの記憶はない。

目が覚めると、美子は自分の部屋で寝ていた。ちゃんと寝間着に着替えてあり、メイクもきれいに落としてあった。

以前にも、こんなことがあったのを思い出す。あの怪しげなパーティで、意識を失くし、起きたら自分の部屋だった。体に、かすかな痛みがあった。それも、きっと酔いつぶれて永井に迷惑をかけたのだと思っていた。

そして今回も、体のあちこちが腫れていた。青あざまであった。

ウエディングドレスは、肌を露出したものではなかったので気にはならないが、奥野の仕事の関係で、三日後にしか出発できない新婚旅行までに、このあざは消えるのだろうかと不安になった。

悠一と朝に顔を合わせたが、別段いつもと変わりはなかった。それでも、聞かずにはいられなかった。

「昨夜は、ご迷惑おかけしたみたいで……」

悠一は無邪気な笑顔で、

「ごめん。僕が飲むはずだった方のグラスを渡してしまったみたいで。びっくりしただろう? 僕の精神安定剤が入っていたから、美子ちゃんが失神してしまって、どうしようかと思った。結婚式前なのに、大丈夫だった? ケガしてない?」と心配してくれた。

『ああ、そういうわけだったのか。そういえば、永井社長は時々、仕事が忙しい時に覚醒剤のようなものをよく飲んでいた。それを飲むと、逆に眠れなくなると言っていたし、他にも海外で手に入れたという怪しい薬を持っていた。それらをワインに混ぜて飲もうとして、間違えたに違いない』

と納得した。







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