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(第12章 別人格の隼人の脅威)



気がつけば、犯人たちの車を運転していた。悠一には見覚えのない風景だったが、隼人は迷うことなく小さなアパートの前に車を停め、三階にある部屋のブザーを鳴らしていた。中から怪しげな、同年代の陰キャラでオタク間違いなしのペケが顔を出し、招き入れた。

中は四畳半ほどの狭い空間に、コンピューターが数台、誇らしげに並んでいた。どのモニターにも、悠一たちの足取りがムービーとして映っていた。

「ペケ、奥野弁護士とは連絡はついたか?」と隼人が聞く。

「もちろん。すでに交渉は終わり、三億円は振り込まれました。すぐに外国の銀行数社を仲介して、隠し金庫に積んでもらっています」と、ニヤニヤ顔で応えた。「グッド・ジョブ」と隼人は礼を言って、部屋から飛び出し、階段を何段も飛ばして駆け下り、車に乗って山中を目指した。そして、山の中の洞穴に車を乗り入れ、火を放った。洞窟から出た途端、大きな爆音がして、熱い空気に吹き飛ばされた。そして、すぐ近くにある吊り橋からダイブした。『まるでハードボイルドみたいだ』と感心したが、そこで気を失っていた。

流れ着いたのは、見知らぬ街だった。血のついた服は、いつ脱いだのだろう。流されて岸に着いた時には、ほとんど全裸状態だった。川べりの岸の上で寝転んでいたところを、朝早く新聞配達の子が見つけ、救急車で病院に運ばれた。

何も持っていなかったので、どこの誰なのか分かるはずもなかった。遠く離れた田舎町まで、悠一の誘拐事件は知られていなかったからだ。

意識が戻っても、当分は本当に記憶喪失だった。というか、忘れたい殺人の事実を無理矢理消してしまいたいという衝動から、そうなったとも言える。しかし、次第に記憶は鮮明によみがえったが、警察にそれらを聞かれるのが怖くて、当分は記憶喪失のフリをした。

あの犯人たちを殺したという信じられない結末に、一番驚き、衝撃を受けたのは悠一だった。こんなにも隼人が残虐に人を殺すなんて信じられなかった。たったシャープペンシル一本で、必殺仕置き人のように慣れた手つきで鮮やかに命を絶つなんて、嘘みたいだった。情け容赦なく、本物のヤクザのようだった。

この人格を封じ込めなければ、将来大変なことになる。手慣れすぎていた。『知らないだけで、隼人は他にも前科を重ねていたかもしれない』と思うと、元の世界に戻るのが怖かった。






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