(第10章 孤独を癒すためのパーティー)
夏休みの只中、猛暑を逃れるため、軽井沢の別荘に仲間たちを誘って行くことになった。貧しく、軽井沢など行ったこともない悪ガキたちは、興奮と喜びに包まれた。同時に、あまりの貧富の差を目の当たりにし、悠一に敵意を持ったのかもしれない。だから誘拐という現実も見て見ぬふりをしたのだろう。もちろん、ヤクザまがいの犯人たちの仕返しが怖かったという面もあったかも知れない。別荘でアルコールや薬物で夜を狂騒する中、悠一は眩暈で意識が飛び、体も自由に動かせなかった。簡単に犯人たちに拉致され、囚われの身となったのだ。朝になって、悠一とチンピラ二人がいなくなったのに、他の仲間は騒がず、警察にも届けなかった。悠一の別人格の隼人は恐れられていたのだろう。お金と暴力で従わせていたが、反発する者は痛めつけ、仕返しを考えていたに違いない。
後ろ手に縛られ、口をガムテープで塞がれ、車の後部座席に転がされても、悠一は恐怖よりも期待の方が大きかった。この地獄から誰かに連れ出して欲しかったのだ。自分では死ねないので、誰かの協力を求めていた。車内は暑く、熱中症になりそうで、喉も乾き、意識も遠のきそうだった。
犯人たちは何度も悠一の家に電話したが、両親は不在で、使用人を脅しても驚くばかりで、身代金は用意できなかった。「親に連絡しろ」と言っても、「今は連絡できない場所にいらっしゃるので、どうにもなりません」と返事があるだけだった。




