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18話


エピローグ


 三年後。

 無事に未来の私が自殺する未来を止めた私は、今ではもう大学二年生になっていた。

 広いキャンパス内に設けられている食堂のテラス席に、私は一人腰を下ろしている。季節はもう冬になっていて、コートとマフラーを身につけていてもまだ寒い。

 ふぅ、と吐息を出せば、白い息が出てきた。少しばかり雪も降っていて、それが冬の寒さを際立たせる。

「……寒いなぁ」

 つい、独り言が溢れる。

 私はあれから、小説家を目指すことにした。自分が好きなものはなんだろうと考えた時、パッと思いついたのが小説だったからだ。あと、時守にも小説家になるのはどうだろうかと言われたから。

 それもあって私は今、大学の文学部に所属して、小説家を目指して日々頑張っている。今まで何かに向かって頑張ることなんてなかったから、なんだか自分でも不思議な気持ちだ。

 けれど今では、生まれて初めて、前を向いて生きていけている気がする。

 時守が私にくれた未来を、無駄にはしたくない。だから私は、必ず小説家になると誓った。

 私は今都内で、一人暮らしをしながら大学に通っている。

 自身の態度や振る舞いを改め、今は父ともそれなりに良好だ。……母のことも、少しずつ受け入れていくことにした。

 年末年始くらいは、一度実家に帰ろうと思う。

ちなみに白雪とは同じ大学に通うことになって、今でも友達として仲良くやっている。彼女は歴史の教師になりたいらしく、教育学部に所属している。


 ……そして、クロノスはというと。

彼とは、未来の私の自死を止めた後、すぐに契約を解除させてもらった。三年分の寿命は戻ってこなかったけれど、それは仕方がないと私は受け入れた。

 契約を解除してからは、彼とは一度も会っていない。 

 ……いったい、どこで何をしているのだろうか。

 私はなんとなく、曇り切った空を眺めていた。……すると―。

『よっ、久しぶりだな!』

 背後から、元気の入った懐かしい声が聞こえた。

「……何しにきたのよ」

 私はゆっくりと後ろを振り返った。声が聞こえた瞬間から声の主はわかっていた。けれど、私はあまり驚かなかった。そのうち、またひょんなことから現れるような気がしていたからだ。

 私の背後にいたのは、私が三年前に契約を解除した、悪魔のクロノスだった。

『別に、お前がどうしてんのか気になっただけだ。暇だったし、久々に様子を見に行ってみるかと思ってな』

 ……私に寿命が残り三年しかないのを黙っていたくせに、よく顔向けできたものだ。

 ……けれど、私は彼を恨む気にも、責める気にもなれない。残りの寿命が三年しかないことを聞かされていなかったとはいえ、契約を結ぶと決めたのは自分自身なのだ。結局のところ、やっぱり私が悪い。

 ……時守のことだって、全部私のせい。

「……ふつう」

『ふっ、相変わらずだな』

 クロノスはつまらなさそうな顔をして、すっと顔を逸らした。

『残りの人生、せいぜい自分なりに頑張りな』

 どういう気持ちで言っているのかはわからないけれど、クロノスはそう言い残した。そして、そのまま空へと向かって飛び立っていった。悪魔界かどこかに帰っていったのだろう。

 そんな空へと消えていく悪魔の後ろ姿を見上げながら、私は時守の、穏やかな笑顔を思い出していた。

「……言われなくても、せいぜい自分なりに、これからも生きていくっつーの」

 もう時間を止めたりなんてしない。私は、これから先の時間を、しっかり前へ進めていくと決意した。


読んでいただきありがとうございました。

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