【超短編】秘密
僕には秘密がある。
親友には絶対に言えない種類のものだ。
実は彼の彼女とキスをしたことがある。
あれは三人で出かけた帰り道だった
親友が「ちょっとジュース買ってくる」と離れた。
必然的に彼女と俺が二人きりになった。
夜の冷たい空気が街を包み、静けさが二人を包んだ。
ふいに彼女が僕の腕を掴んで、唇を重ねた。
「びっくりした?……でも、あなたのことの方が好きかもしれない」
彼女はそう言った。
僕は何も答えられなかった。
けれど、彼女の目はしっかりと僕を見ていた。
夜風の匂いは消え、その代わり彼女の甘い香りだけがかすかに残った。
そして今日、彼はその彼女と結婚する。
僕は親友として結婚式に出席し、慣れない讃美歌を歌っている。
教会のステンドグラスから淡い光が降り注ぎ、神父の宣誓に続いて二人は誓いのキスを交わす。
その瞬間、彼女の視線が僕を捉えた。
ほんの一瞬。
でも確かに僕を見た。
その時の目は、あの時の目のままだった。
あとがき
この物語を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
私の書いた物語が皆さんの心に何かを残すことができたなら、それ以上の喜びはありません。
ぜひ、皆さんの感想やレビューをお聞かせください。皆さんの声は、私にとって次の物語を描く大きな励みになります。良かった点、もっと読みたかった点、感じたこと……どんな小さなことでも構いません。
どうか、皆さんの思いをお聞かせください。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
サクラヒカリ




