1、一人で病院に行けない
当時31歳、つまり一年前、私にはあるコンプレックスがありました。それは、基本的に一人で新しい場所へ行けない、というもの。いや、今も苦手なのですが。これ、発達障害のせいなのかな、と思って、職場(A型作業所)の発達障害者を見てみるも、なんかみんな意外と一人でどっか行ってる気がする。東京のゲームマーケット(ボードゲームの祭典)だったり、発達障害者同士で海外行ったり、簡単なものでは、フードコートで一人食事をしたり。その全部が、私はできませんでした。当然(?)、病院に一人で行くことも。
普通、病院って、子供の頃、親に連れて行ってもらって、そこで作法を勉強するものだと思うんですよ。今もそう思っています(違うのかなぁ)。だけど、子供の頃の私は、というか、大学生まで大体全部「親任せ」が基本でした。役所での手続きだったり、携帯電話の契約だったり。甘えているのは当然そうだったのだけど、常に「他人と関わるのが怖い」とか「新しいものや場所が怖い」という気持ちが根底にあって、そういう臆病な性格だったから、親に頼るしかなかったともいえます。耳鼻科も、母と一緒に恐る恐る行った思い出があります。確か高校生の時だったかな。どうすればいいかわからなくて、ビクビクしてました。初診の場合は受付に言う、といっても何と言えばいいのか、とか、医者にかかるにはどう返事して、どう話せばいいのか、とか。そういう「表面上のこと」が気になる。こういうのも、発達障害の細部へのこだわりに入るんじゃないかと勝手に思っています。どうでもいいこと、どちらでもいいこと。でもその頃は、これという正解があると思っていた気がします。あ、それと、自意識過剰な性格もグイグイ足を引っ張ってくれます。これは本当、直そうと思っても直せないです。
そんな私なのだけど、どうしても、さすがに一人で行かないといけない、と思ったのが、病院でした。病院に一人で行けないって、そろそろやばいのでは……漠然とは思ってたのです。ちょうど私がコロナに感染した時に、母に病院に連れて行ってもらったのを見た父が「病院くらい一人で行け!!」と声を荒らげていて(父は発達障害に理解なし)、当時28歳くらいだった私は、限界を感じたのでした。でも精神科なんて34歳の娘が母と通院してるパターンを知ってるし、その子お母さんにべったりだし、そういう子はザラにいるはず!(入院の時に知り合った子です)と、言い訳を並べて心を鎮めていました。だけど、やっぱり、そろそろやばいかな……。
そんな折、2023年2月。A型作業所の仕事柄、手元をずっと見続けているためか、何となく、眼精疲労という感じが出てきます。物が二重に見える時があるのです。それを休み時間の話題として振ってみました。いつも黙ってみんなの会話を聞いているだけなのですが、この時は珍しく。そうしたら、パートさんが「それは眼科に行ったほうがいい」という結論を導き出して、正直私は「うわー言わんかったらよかった」と思いました。だって、言われたら行かざるを得なくなるじゃない。こっちは病院に行くつもりはなくて、ただ、何か話題を、と思って……。でも「そうですよねー眼科行ったほうがいいですよねー」と返してしまったからには、もう行くしかない。こういう見栄っ張りかつ人情深い(?)ところがあるのが私です。というわけで、私は一人で眼科に行く決心をしたのでした。