7.モノクロの少女
ヒロイン登場です!!
「あんな食生活で暮らしていたら直ぐに倒れてしまうよ」
「大丈夫ですよ…結構美味しいんですよ」
「そういう事を言ってるんじゃないよ」
呆れる様に運転しながら苦笑する桜川さん。
信号で1度止まると質問される。
「今は頭は大丈夫かい?」
「大丈夫です」
「もう1つ……景色に色はついてるのかい?」
「白と黒だけですね」
「そうか」
解答を知った上での質問だったのだろう。全く驚いた様子は無かった。
そんな会話をしていながら車に揺られて暫くすると車が止まる。
「着いたよ。ここが僕の家だ」
「ここが?」
「ようこそ!桜川家へ」
目の前にあるのは極一般的な一軒家で二階建てだった。
「庭が有るんですね」
「昔は娘も庭で走り回っていたんだが今は使われて無いな」
「光輝君は高校に行く気は有るかい?」
「え?」
「だって今日も行ってなかったんだろ?行ってたらあの時間に会う筈がないからね」
「そうですね…校門までは行ったんです。けど、幸せそうな学生を見てたら苛立って来たんです。初めてあった女の子に八つ当たりしてる自分が情けなくて帰ってた所で桜川さんと会いました」
「それで彼処に居たのか。で明日は行けそうなのかい?分からないですね」
「君は今色が分からない……そんな君にお願いがある。娘と友達になってくれないかい?」
「さっきも言いましたよね?知らない子に八つ当たりなんかしてた俺じゃ何も」
「娘はきっと眼の色の違いが分かる相手に心を開けないんだ。もし君に目を見せる事が出来れば娘も前に進めると思うんだよ」
玄関を開いて中に招かれる。
君に使って貰おうと思うのはこの部屋だよ。
階段を上がり突き当たりの部屋だった。
その途中に3部屋有りそれぞれにネームプレートがあった。冬弥、秋子、佳乃と書いてあった。
「この佳乃が僕達の娘だよ」
「佳乃さん……」
「少し待ってて」
佳乃さんの部屋の前に行くと冬弥さんが話し掛ける。
「佳乃!!今日から男の子を居候させるからね!」
えっ!俺の意見は?強制なのか?
「や……嫌ぁぁぁー」
「えぇぇ…」
泣きたくなる程の拒絶。
「嫌なら出て来なさい」
1度ガチャっとドアの鍵が開く。
そしてドアが開く。
佳乃さんが出てくると思ったら出て来なかった。
爪先だけ床にチョンっとつけてそのまま篭ってしまった。
「出たっ!だから追い出して!」
あれで良いのか?
冬弥さんを見る……全然諦めて無い眼をしてる。
ギラギラと今回こそ出て来てもらうと覚悟を決めてるようだ。
そんな事を考えながら1つ疑問を思い出す。
「そう言えば佳乃さんって1週間とかってお風呂とか入ってないんですか?」
そんな質問の後に部屋からドタンバタン音がしてドアが勢い良く開け放たれた。
――バンッ――
そして、不運にも冬弥さんはドアの前にいた。
「ゴブ……」
「そんな訳ないでしょ!ちゃんと身体位洗ってるます!!」
部屋の中からはロングで背中の当たりまで伸びた髪、右眼は黒で左眼には話に聞いた眼帯。
身長は結構低く、胸は…どんまいって感じだった。
遺伝なのだろうか?それとも引き篭って運動をしてなかったからとか理由は有るのだろうか?お母さんを見た事が無いから分からないな。
「え…………………………あれ?嫌っ!」
「させないぞ!」
「ちょっと!パパ!!」
ウッソだろお前って冬弥さんが娘さんの部屋に侵入して内側から鍵しやがった。
「冬弥さん……流石にそれはやり過」
「こっ来ないで!!見ないでよ!お願いだから」
頭を両手で抱えて床にしゃがみこんで震えている。
「分かった…寄らない」
「…………………………」
動かない俺をそぉ〜と頭を上げて確認した佳乃さん。
「私の事虐めない?眼の事言わない?」
「1つ見た事ないから言えない。2つ今の俺は色が分からない」
「貴方も色が分からないの?」
「俺の目の色分かる?」
「黒目」
「違うんだな…いつか見えるさ」
「私の目の色分かってる?」
「ん?右が黒の左が桜色何だよね?桜色の眼って見た事ないし綺麗だと思うから色が分からなくなる前に会いたかったな」
「ズルい…貴方だけ目の色知ってる。教えて!!」
「いつか分かるって君が泊めてくれるなら」
彼女は少し考えていた。
「眼の色がそれぞれ違うのどう思う?」
「オッドアイだろ?綺麗じゃないか」
「そう…分かった。許す」
「そう」
扉が開く。
――バン――
「よく言った佳乃!!」
「ふんっ!」
「おっ!って佳乃!」
――バン――
速攻でまた開かずの扉になった。
「パパなんて大っ嫌い!」
両眼を見開いていた冬弥さん。
「お慈悲をパパに頂戴!お願いだよ!佳乃!」
「嫌っ!」
「そんな…光輝君。何とか出来ない?」
「初対面の俺に何が出来るんですか」
呆れながら答えたら冬弥さんは出直すと言って肩をガクッと落として歩いていた。
「佳乃さん……あの唐突にこんな事になってそのゴメン」
中から返事は来なかった。