3.保険金受け取りと買い出し
「やっと揃った……あの電話から数日掛けて全ての書類を集め終わった」
俺はあの時の田中さんの会社に電話する
「もしもし以前に田中さんに対応して貰った本郷です」
『本郷様ですね。只今代わった田中です。書類の用意は出来ましたか?と言うよりも揃った若しくは質問しかありませんね』
「揃いました」
『そうですね……そちらで最後ですね。お疲れ様です。こちらで手続きしてしまいますね』
「お願いします」
暫くするとパソコンや物を書く音が携帯越しに聞こえる。
『こちらの保険金は光輝様の口座に移させてもらいます』
「ありがとうございます」
携帯にあるネットバンクシステムを確認するとそこには多額のお金が振り込まれていた。
「これが……父さんと母さんの遺した物なんだ。重いな」
『お疲れ様でした』
「こちらこそありがうございます」
『これが仕事ですから』
でも田中さんが居なければ保険金の事をそもそも知らなかった。
そして5日後……そこには残金が増えて2500万増えた額になっていた。
その金額を見て実感させられた。
「もう1人なんだな……俺は」
それから家に帰ると保険金のお金に手をつける気になれなかった。
「高校生でも働けるバイト探すか…家に通帳をしまうと求人情報を探して家を出た。見た事あるって思ってたら今日が高校の入学式だったのか」
新入生が入学式をサボるってやってる事が不良の道まっしぐらだな。
「はぁ……」
自らに呆れながらも真面に思考が動かない。
元々インドアで陰キャグループの俺は他人を家に呼んだ事も無いから心配して確認する人も居ない。
「あった。これ貰っていこう」
目の前にあったのはバイトの求人情報雑誌だ。
これから使う生活の為に2500万から少しだけ引き出したお金で箱買いのカップ麺を買う。他には栄養ゼリーとカロリーバーと健康や栄養価何てものは判断基準から捨て去っていた。
「簡単に手早く食えるもん後なんかあったかな?」
考えるが特に思いつかなかったからそれを買って御会計をした。
料理をした事も無ければ買い出し何て母さんに頼まれたのを買った事しか無い…そんな俺に1人でまともな夕飯の買い物なんて出来る筈も無かった。
「食えれば何でも良いや」
そのまま自宅に向けて歩き出す。
自宅に着いた俺は見るからに非常食にしか見えないラインナップを家の隅へ無造作に置く。
保険金の通帳を見て実感して変わった事が1つある。
「色が……分からない」
光輝の目には全てが白黒のモノクロの世界にしか周りが見えなかったのだ。
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保険金の制度や金額等は大分緩く設定として使ってるので現実との誤差の指摘等は控えて貰えると助かります。