若者と男の話
若者「おじさん、元気?」
男「やあ、若い人。まあ元気だよ。」
若者「そう。」
男「そういう君はあまり元気ではなさそうだね。」
若者「そんなことはないよ、元気。でも、元気なんだけど、ずっと曇ってるからかなぁ。元気じゃないみたい。」
若者「そうか。それじゃあ元気じゃないんだろうな。ここのところずっと曇ってるからかな。」
若者「そうかもね。」
男「きっとそうだ。」
若者「それじゃあさ、元気って何なんだろうね。」
男「元気なのは元気ってことだ。それ以外にはないよ。でも、元気って何なんだろうね。」
若者「うん。そうだね。やっぱり私は元気かもしれない。」
男「そうか、元気ならそれでよかった。」
若者「うん。」
若者「なんで元気?って聞くのかな。」
男「さあ、なんでだろう。元気だから。それか、元気じゃないから。」
若者「誰が?」
男「自分が。」
若者「じゃあ私は元気がないから、おじさんに元気?って聞いたのかもしれないってことかな。」
男「やっぱり元気じゃなかったのか。」
若者「そうだったみたい。」
男「そうかい。」
若者「天気がどんよりしてると気分も落ち込むのって、どうしてかな。」
男「さあ、どうしてだろうね。」
若者「外が曇ってるから、私も曇っちゃう。同じみたいに。同じなのかもしれないけど。」
男「そうだ、同じだよ。違うことなんてない。同じことは同じなんだし、違うことは違うことなんだから。同じなら同じなんだ。」
若者「そうか。じゃあ元気って晴れてるってことなんだ。」
男「そうだ。そういうことだ。」
若者「曇り続きも悪くないね。」
男「そうだろう。」
若者「うん。」
男「今度はいつ晴れるんだろうなぁ。」
若者「やっぱり晴れていてほしいな。元気に元気って言えるもんね。」
男「そうだね。」
若者「私が晴れなら、外も晴れるのかな。」
男「それはそうなるね。」
若者「じゃあ天気予報って、私の元気を予想してくれてるってこと?」
男「そうなるね。」
若者「じゃあ天気予報なんていらないじゃん。」
男「そうかもしれないね。」
若者「私が晴れなら外も晴れて、外が曇りだったら私も曇るんだもん。」
男「そう。だから”予報”なんだろう、きっと。」
若者「じゃあ本当は分かってるんだ。」
男「そう。きっと分かっていて分からないと言っているんだ。」
若者「なんか意地悪。」
男「そんなこと言うもんじゃないよ。分かってることを分からないって言うことは、どんな形であれ大変なことなんだから。」
若者「それもそうか。いつも私が元気だったら、予報士の人も困らないのにね。」
男「そうだね。だから必要なのでもあるってことだね。」
若者「そうか。やっぱり同じなんだね。」
男「そうだ。どうしても同じなようだ。不思議だ。」
若者「うん。皆は元気かな。」
男「お、晴れてきたみたいだね。まあ元気だよ、きっと。」