1話 回想
俺は悠人という冴えない高校生。
俺は今ビルの屋上に立っている。
俺は普通の家に生まれて、普通に学校に行って、
普通に恋していたただの高校生だったんだ。
何故、こんなことになったのか?
自分でもまだ状況を理解しきれない。
俺はいわゆるいじめにあってたんだ。
始まったのは高校に入って2ヶ月がすぎた頃だった
最初は別にたいしたことがなかった。
筆箱を隠されたりとか教科書を破られたりとかだった。
それくらいは我慢してた。
それがいけなかったんだろうなぁ…
自分が抵抗しないことに味をしめた男子たちは暴力を振るった。
みぞおちを何発も殴られた。顔も数えきれないほど殴られて、アザもできた。
でも、耐えた。
今思えばあの時誰かに相談できていたなら結果は全然違ったのかもしれない。
俺には幼馴染がいた。
家が隣で小さい時からよく遊んだ。
名前は夕華で、小柄でとても可愛くて頭も良かった。
自分は顔も普通でなければ頭も普通。
でも、俺は彼女に恋をした。
釣り合わないと思っていた。
叶わないとも思っていた。
そして中学を卒業したあと玉砕覚悟で告白した。
結果はOKだった。
淡い春の早咲きの桜が僕らを祝福するように花弁を散らした。
嬉しかった。
言葉では表せないほどに。
もう、このまま幸せな気持ちで死んでしまいたいとさえ思った。
あの時死んでいられたらどれだけ楽だったか…
それから時は過ぎて高校に入学した。
もちろん彼女と同じ高校だ。
元々彼女には勉強も教えてもらってて、少し難易度は高い学校だったが、無事入学できた。
それからは忙しかった。
部活も5月から始まりあまり会う機会はなかったが、休日の1日は必ず会うと決めて、その日まで必死に忙しい日々を耐えた。
デートにも行った。
昼はショッピングモールで買い物を楽しみ、夕方にかけてはファミレスなんかで食事をとった。とても、充実した時間に「時よ止まれ」と願ったりもした。
それから6月になって夕華が同じ部活の先輩に告白されている現場に出会った。
彼女は
「ごめんなさい。付き合ってる人がいるので、その告白は受け入れられません」
と、きっぱり断っていた。
自分はなんと幸せ者だろうと涙すらこぼれそうになった。
その時からいじめは始まった。
どうやら彼女はつけまわされ俺との関係もあらわになったようだ。
同級生の男子から嫌がらせを受けた。
その度に夕華は俺を守ってくれた。
それもエスカレートした原因なのかもしれない。
俺はただ、彼女とのささやかな幸せを分かち合いたかっただけなのに。
そして時は流れ9月となった。
あいも変わらず続くいじめに慣れてしまっている自分すらいた。
そんな時だ。
その知らせが届いたのは。
「夕華が救急車で搬送された!?」
何か嫌な予感がした。
親に連れられて病院に来た俺が見たのはひどく荒れ果てた彼女の姿だった。
医者から話を聞くと理由は強姦だそうだ。
どうやら俺がいないところでも言い寄っていたようだった。
そして幾度となく言い寄って来た先輩だった物にに夕華は塩対応をしていると、体格の良い物に無理やり押し倒されたようだ。
付き合ってはいたが行為には及んでいなかった。
そうつまりだ。
彼女は強姦魔と化した物に処女を散らしたのだった。そして幾度となく侵される。
その物は他のものも呼び彼女を輪したようだ。
彼女は何度も犯され、意識が飛んでもなお犯され続けたようだ。
その後いくら経っても帰らない彼女を不安に思った彼女の両親は警察に電話をした。
そして犯され捨てられた彼女を警察が今朝見つけたようだ。
彼女は意識が戻った時もう生きる気力すらなくし自殺したようだ。
見つかったのは皮肉にも俺が告白した場所だった。
そして今に至る。下には沢山のギャラリーがいる。
俺はもう死にたいのにさブルーシートなんて構えちゃってさ…
どうしてかな…
俺はもう…
怖く、
ないんだ。
俺は今ゆっくりと流れる時の中にいる。
あぁ、夕華の声が聞こえる。
彼女は、
「生きて!」
そう言っている。
あぁ、君が生きてさえいれば俺は幸せだったんだ。
君の声が本物なら良かったんだ。
結局は走馬灯の中の君の声と姿しか見えない。
もう、生きる意味なんてないんだ。
私が苦しむ必要なんてないんだ。
そう思い俺はそっと目を閉じた。
そして俺は夜の空に願った。
「もう、誰も苦しまない世界にしてくれ」
と、するとどこからともなく声が聞こえた。
「なら、お前がやってみろ」
そして俺は今何もない虚無の上に立っている。