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七通目

 前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?


 余り大した変化ではないのですがどうしても報告したくて手紙を出してしまったことをお許しください。


 さて何が変わったのかと言いますと僕はこの度独立することとなりまして、所謂コンサルティングを行う会社の責任者となった次第であります。


 最も従業員は僕一人で、魔法関連のアドバイザー兼護衛として時折魔術師様にも協力してもらっていますがその程度の規模の小さな会社です。


 なぜこうなったのかと言いますと前に勤めていた会社を発展させすぎたとでも言えばいいのでしょうか。


 何せ適当に動いている社会の中でうちの会社だけ日本基準の時間厳守と品質管理を徹底したために信頼が増して、どんどん取引先が増えていきその中にいつの間にか王国相手の取引も含まれるようになりました。


 そこまで大きくなるとどうしても噂はついて回るようで、いろんなところから引き抜きの声がかかる様になり困っていたところなんと王宮からお呼びの声がかかったのです。


 緊張しながら赴いて大臣閣下との会談を行うと租税関係もしっかりしていたことを褒められ、王国内にある会社全体の租税管理についての相談を受けるようになりました。


 そのうちに僕が企業に赴いて経営方針に口出しつつ内部の改革を行いながら数字の管理をする立場になることが求められたのです。


 これにより会社のほうは無駄がなくなり経営状態が良くなるし、王国としても税金の徴収がしっかりできるようになるのでお互いにお得だと結論づいたようです。


 なので独立とは言っても現実は王国からの指示の元で相手の会社に赴き、そこで総務としてふるまうというのが実情なのでコンサルティングと言うより派遣業かもしれませんが上手い言い方も思い浮かばず敢えてそう表現した次第です。


 最初は不安もありましたがこれが意外と上手くいっており金銭面での問題はなくなりました。


 代わりとばかりにかつてのブラック企業で働いていたころのような忙しさが戻ってまいりました、一週間の睡眠時間の合計が5時間というのは久しぶりです。


 魔術師様はしきりに僕の身体を気にしておりますが、疲労回復の魔法をかけて頂いていることとしっかり評価されていることへの満足感もあるので正直当時よりはるかに楽だし面白いと感じております。


 まさか異世界に来て労働を楽しいと思える日が来るとは予想もしていませんでしたが、とにかく今は毎日が充実しております。


 というわけで今回は自慢話のような形になってしまいましたがまことに申し訳ございません。


 さてこのまま筆をおくのも心苦しいので、前回書きました通りこちらの世界で体験したそちらの世界ではありえない数々の出来事について紹介してみたいと思います。


 まず紹介したいのは魔物……ではなく自然現象についてです。


 最初の頃の手紙に少し書いたとは思いますがこちらではマナという魔法の元となる目に見えない未知のエネルギー源が存在し、それらが何かのきっかけで結びつき災害という形で具現化し発散されるのです。

 

 そちらの世界では雨に例えると分かりやすいのではないでしょうか、水が蒸発し雲となり一定量貯まるとふり注ぐイメージをしたところで水をマナに変えてみてください。


 とはいえマナにも種類があるらしく僕にはわからないのですが、それにより発生する災害の種類も規模も千差万別です。


 最初に僕が見たのは火の雨でした、そういう炎のマナが溜まりやすい季節を火の刻と呼ぶようです。

 

 これは僅かに桃色めいた霧が発生するのが前兆で、段々と色の濃さに偏りが出てくると特に濃くなった部分が燃え上がります。


 そして燃えた部分は重力、なのかはわかりませんがとにかく大地にひかれて落ちていくのです。


 なので火の雨とは言うものの現実にはそこまで高いところから降り注ぐわけではなく、目の前で炎が発生するのもざらにあります。

 

 大地に落ちた炎もしばらくの間、マナを燃料として使い果たすまでは燃え続けるわけで当然近くに可燃物があると燃え広がっていきます。


 この燃え広がった炎に関してはマナとは関係ない普通の火災となりますがこれはこれで厄介なことです。


 お陰で森のように可燃物だらけの場所ではあっという間に大火災になり果ててしまいます。


 これへの対処としては前兆を見た時点で穴を掘って地下に隠れる、霧がない場所へ避難する、燃えない素材の傘でガードするなどが有効だそうで僕の場合は魔術師様に穴を掘っていただいて通り過ぎるのを待ちました。


 安全な穴から見たその時の世界が燃え落ちていくような光景は一種幻想的ですらありながら、風に乗って届く熱波は否が応でもこれが現実なのだと突き付けてきてその差に困惑したものです。


 さて明日も早いので今回はここで終わらせていただきます、では失礼いたします。

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