四通目
前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?
発声もおぼつかない王国へとついに到着し、今は宿で筆を執っている次第でございます。
ちなみにこちらの世界の言語は当然日本とはまるで違うものであり、意志の疎通に関しては魔術師様が拵えてくださった翻訳札によって成し遂げている有様で尚のことあの方には頭が上がらない状態が続いております。
最も先に書きました通り翻訳札でも固有名詞は訳しきれません、当然魔術師様も名前で呼ぶことができず普通名詞で呼び続ける他ないのは辛いところです。
なお今泊まっているここの宿も当然魔術師様のお支払いです、僕は馬小屋でいいと伝えたのですがわざわざ個室を二人分取ってくださり感謝の言葉もありません。
最後の最後まで面倒をかけてしまってどうしようもなく心苦しいですが、今の僕には何も返せるものがないので困っております。
とりあえずここが王国で人が集まる場所である関係上、雇用も発生しているはずですので今から何か仕事を探して出来る限り恩返しをしたいと考えています。
魔術師様はやることがあるらしく街に出ているので初めて一人でこの世界を歩くことになりますが、流石に王国内では野生の魔物に襲われる危険はないので安心して散策することができます。
そういえば僕がこの世界に始めてきたときについて、また魔術師様に初めて出会ったことについてまだ書いていなかったような気がしますが手紙の余白も少なくなってきたことですしそれは次回から書いて行きたいと思います。
最もその時がくればですが、次からは手紙の費用ぐらいは自分で用意したいと思ってますので少し遅れるでしょう。
案外この手紙が最後になるかもしれませんね、それでは失礼いたします。