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三十五通目

 前略、皆さま方いかがお過ごしでしょう?


 またしても様々な出来事に見舞われてしまいました、手紙が長くなるでしょうがお付き合いをお願いします。


 あれから暫くは無難な旅が続きました、特に妨害を受けることもなく近づく魔物は魔術師様が一蹴して下さるため先日までの遅々とした進行が嘘のような進み具合です。


 そんなある日でした、いつも通り馬車に魔術師様と双子を寝かせレイには外にテントを張ってやり僕たちは焚火に当たりながら魔物の襲撃を警戒していたときのことです。


 おずおずとテントから顔を出したレイが、馬車のほうをちらりと見てから僕たちに話しかけてきました。


 あれ以来ずっとふさぎ込んで何事か考えていた彼女が声を出すのは久しぶりでした、だけど僕は返事をする気になれなかったのでジーク様が相手をしてくださいました。


 レイは帝国での自分の行いとそれに対する周囲の反応、先日受けた元部下の心情の暴露、それらを踏まえてそれまでの自分に対する疑問が浮かんだというのです。


 その上で帝国では異種族とは人間の奴隷で下等種族であると教えられてきたのじゃが、違うのかとポツリと口にしました。


 ジーク様も僕も即答しました、レイはうつむいてしまいました。


 そして何度も助けてくれたそなたらを信ずるべきだろうが、やはり帝国の……父上の教えを疑いたくないと言ってそれっきり黙り込んでしまうのでした。


 相変わらず沈黙が苦手なジーク様が代わりとばかりに話し出します、異種族だってちゃんと考えて生きてるし中にはそりゃあ乱暴な奴らもいるけれど大抵人間のほうがやっかいだぜと。


 さらに僕のほうを見て魔術師様みたいにあそこまで強くしっかりした異種族も珍しいけどなとおっしゃいました。


 そこからはジーク様が会ってきた異種族の話から冒険譚に変わっていきました。


 人魚に惚れられて溺れ死にさせられそうになったこと、岩石族に砂を御馳走されお腹を壊したこと、ラミアのような下半身が蛇の異種族に文字通り絡まれて口説かれ続けたこと、とある国の討伐軍に追われていたゲル状の異種族を鎧の中に隠したこと、吸血鬼のような種族に集団で襲われて逃げ出したこと、モフモフの羊毛に身を包んだ種族に眠らされ夢を食べる形でマナを吸い上げられたこと。


 異種族を全肯定するわけでも全否定するわけでもなく個人的な観点からみた等身大の姿をジーク様は話し続けました。


 なんか大抵ろくな目にあってないような気もするけれど、ジーク様の口調からは一つ一つが大切な思い出のように感じているようでした。


 そして一つ分かったことは人間を含めて大抵の異種族は自分の種族を基準に考えて相手に接するから、迷惑なことになることも多いがそこに悪意は殆どないのだと語ります。


 きっと帝国も最初は人間本意でこそあれど相手を下等種族だと見下してはいなかったはずだと、どこかでボタンをかけ間違えただけだと思いたいといいました。


 人間はそこまで愚かではないと信じたいのでしょう、ですが元の世界でも使いつぶされてきた僕としては同じ種族内でも奴隷のように扱える人間というものをそこまで信じられないのでした。


 つくづくジーク様との器の差を感じさせられます、こうした話の中でも僕らを貶すこともなく自分の母国を信じたいというレイの気持ちに配慮できるのですから。


 そこでジーク様は最初にあげた魔術師様の話に戻りました、彼女は相手の種族の観点に立った上で行動しているようで本当に素晴らしいとおっしゃってくださいました。


 僕は自分のことのように誇らしくなります、さらにジーク様は魔術師様の能力の高さも称え始めます。

 

 長い旅の中でもあれほどの魔法使いは見たことがないと言います、魔法を使う際は呪文を唱える時間が長いほど威力も精度も増すというのに魔術師様は僅かな単語だけで魔物相手でも通じる威力の魔法を的確に操作し当てて見せているのですから。


 僕は少し興味があったので仮にジーク様が戦ったらどっちが勝つのか尋ねてみました、ジーク様は悩みながら速攻戦術で接近戦に持ち込める自分のほうが有利だと前置きしたうえで、相打ちに持ち込めるかどうかだと言います。


 最初の一撃は多分当てられると言います、ただ同時にこちらも確実に魔法をぶつけられていて間違いなく戦闘不能に追い込まれると断言します。

 

 そして魔術師様はわずかでも魔法が使えれば自らを回復してしまいますから、そう考えるとやはり良くて相打ちで十中八九こっちの負けだと笑いながらおっしゃいました。


 最もそこまで追い込めるジーク様も十分すさまじいと思います、何せ魔術師様は僕という足手まといを抱えていた状態でも苦戦はおろか傷一つ負ったこともないのですから。


 全くこんな強い二人に護衛して貰えている僕たちは幸せ者です。


 レイはジーク様の話を聞き終えると、少し考えたいと言ってテントに戻られてしまいました。


 その後姿を見送って、僕たちは改めて見張りに戻るのでした。


 そして次の日を迎え、出発すべく馬車へと乗り込もうとしたときのことです。


 レイは魔術師様と双子に呼び掛けると、もじもじととても言いずらそうにしながらもはっきりと謝罪を口にしたのでした。


 今までの無礼な態度を許されよと慣れてなさそうな様子で頭を下げるその姿を見て、双子はいいから一緒に遊ぼうと無邪気に声をかけるのでした。


 そして双子に差し出された手をレイはおずおずと握り、馬車内に引っ張られていくのでした。


 魔術師様はそんな彼女たちの姿を複雑そうに眺めておりましたが、最後にはふっと笑って自分も馬車へ入っていくのでした。


 ジーク様はとりあえずもう大丈夫だろといい、今日から暫く運転を変わってくださるそうなので僕も馬車に入り魔術師様の隣に座り彼女の手を取って双子とレイの様子を見守ることにしたのでした。


 レイは子守どころか同年代の友達と遊んだこともないのでしょう、ましてやこないだまで軽蔑していた異種族が相手です。


 全体的に行動がぎこちなく、時には子供相手に真剣に怒鳴り、時には我儘を言い合いよくケンカをしました。


 だけどかつてのような見下しは見られず、そして不器用に仲直りをしてまた喧嘩をしてを繰り返し馬車内はとても騒がしくなりました。


 こういう経験は初めてだった双子は最初は不満そうにしてましたが、どんどん楽しそうに笑うようになりました。


 僕たちはそんな風景をいつしか笑って見守るようになりました、ようやく平穏が訪れたようです。


 ……これで手紙を終えられればどれほどよかったでしょうか、実はもう一つ事件がありました。


 ようやくリース様の領土に入りジーク様はフード付きローブを上から羽織り正体を隠しながら馬を操っておりました。


 そして僕たちはいつも通り笑いながら取っ組み合う双子とレイを見守っていたのですが、魔術師様が唐突に表情を一変させるとジーク様に止まれと叫びました。 


 すぐに馬を止めたジーク様でしたがその衝撃で馬車内が揺れて、僕たちは慌てて近くの物にしがみつきました。


 僕らが不安そうに見守る中、魔術師様は少し目を閉じて呪文をいつもより長く唱えた後でジーク様に別の道を行くよう指示を出します。


 その方向に馬を走らせながらどうしたと尋ねると、魔術師様は苦々しそうな顔でアレがいると答えました。


 呪死行軍です、何とこの先でそいつらがうろついているというのです。


 直進してないのかとジーク様が訪ねます、魔術師様は頷きました。


 前にも同じようなことがありました、魔術師様はそのときの教訓を忘れず見分け方を見出していたようでした。


 とはいえ戦える相手ではありません、魔術師様の指示に従い別の道から通り抜けるしかないのです。


 流石にレイも呪死行軍のことは知っているようで青ざめておりましたが、何も知らない双子が不安そうにしているのを見ると大丈夫じゃと虚勢を張って見せました。

 

 しかし直後に魔術師様が馬鹿なと怒声を上げられました、あそこまで焦っている魔術師様はいつ以来でしょうか。


 再度魔術師様は馬を止めるように指示すると同時に全員を地上に降ろし、地面に巨大な魔法陣を描きかつてと同じ見た目と匂いを遮断する結界を引きました。


 一体何を焦っているのか聞きこうとしたところで、ジーク様も何かに気づいたようでマジかと悲鳴混じりの声を上げます。


 訳も分からずにいる僕ら凡人四人を魔術師様とジーク様が地面に押し倒し、いつかのように剣を盾代わりに構えました。


 そしてやはりいつかと同じように暴風が吹き荒れました、今回は防護結界を張ってませんので衝撃波がすさまじくぶつかってきます。


 直撃を受けた馬車は馬ごと潰されて飛ばされていきました、マジカルバックを持って降りていなければ一文無しになるところです。


 ジーク様だけではなく魔術師様も武器に手を添えマナを込めて剣の硬度を更に強化させました、それでもいつ壊れてもおかしくないような金属音がガンガンと聞こえてきました。


 おまけに横から入り込む暴風が僕らの身体を傷つけようとします、こちらは僕が身体で守るしかありませんでした。


 風自体はすぐに収まりましたがこの時点で僕はボロボロです、勿論魔術師様がすぐに回復魔法をかけてくださいましたが。


 そして顔を見上げた僕の目にまた、あの空を飛ぶ蜥蜴の巨体が映りこんだのです。


 同じものを見たレイは今度こそ脅えを隠せず悲鳴を上げて蹲りました、何せ自分の故郷を滅ぼした化け物なのですから無理もないです。


 しかも厄介なことに魔術師様が言うにはあれは呪死行軍の一部だとおっしゃるのです。


 ジーク様はあり得ないと断言しました、ドラゴンの血液に流れるマナには特殊な効果があり強力な回復効果のほかにも呪いなどに対する免疫機能のようなものも持ち合わせているらしく呪死行軍の呪いなどに侵されるはずがないのだと言います。


 さらに言えばドラゴンの咆哮はあらゆる魔力を打ち消します、呪死行軍など呪いごと蹴散らされるだけだともおっしゃりました。


 だけれども魔術師様は全てを知っていると言ったうえで、だが間違いないとこちらも断言されました。


 彼女が嘘をいう理由も、ましてそんな質の悪い冗談を言う人ではないと知っている僕たちは絶望するしかありません。


 当然そうなるとドラゴンが移動時に巻き起こす旋風によって腐臭と共に呪いが辺りに振りまかれているはすです。


 実際に結界を張る前の魔術師様の叫び声を聞いて駆けつけてきた音食馬が苦しそうに倒れ込み悶え苦しんでいます。


 動けないでいる僕たちに更なる絶望が襲います、近くにドラゴンが着地した振動が伝わったかと思うと周りをうろつき始めたのです。


 起き上がりゾンビの仲間入りをした音食馬も同じように近くをうろついています、まるでこの辺りに僕らがいることに気づいているかのように。


 魔術師様が重い口を開きます、他のゾンビ個体もここに集合しつつあると……完全に囲まれていると。

 

 確かにどんどんゾンビの姿が増えていきます、そしてみんなこの辺りをうろつき回ります。


 やはり妙でした、こんな動きをするはずがないとジーク様は頭を抱えながらどうするか考えています。


 魔術師様も泣きそうになる双子を抱きしめながら、どうすればいいのか考えています。

 

 レイは震えていてとても動けそうにありません、そして僕は……やることは一つだけです。


 僕はジーク様に前にあったことを話し、マナがない僕が囮になると告げました。


 魔術師様は駄目だと言って僕をつかみとめようとします、何せすぐ近くにドラゴンもいますしあの時とは事情が違いすぎると言います。


 だけど他に手なんかありません、誘導するだけだからと言っても魔術師様は約束を破るのかと問い詰めます。


 魔術師様より先に死ぬなとの約束でしょう、だけどこのままでは魔術師様だけでなく双子もジーク様もレイも死んでしまいます。


 それは耐えられません、魔術師様の約束を破るのも心苦しいけれど魔術師様の行くなという命令を無視するのも辛いけれどこれだけは譲れません。

 

 絶対に生きて帰りますと自分でも思ってもいない言葉を吐いて魔術師様の手をほどくと、僕はジーク様に後を頼み結界から飛び出したのです。


 そしていつぞやのように腐臭に耐えながら走りだしてすぐに、何かが視界をかすめるのが見えました。


 ドラゴンが僕に気づくなり間髪入れず尻尾で薙ぎ払ってきたのだと気付いたのは、吹き飛ばされた後でした。

 

 すさまじい苦痛が身体を襲い、全身の骨が折れたような衝撃を受けて僕は少し離れた地面にたたきつけられました。


 はっきり言って即死しなかったのが奇跡だと思います、だけどそこまででした。


 ゾンビ達が僕に向かって走り寄ってきたのです、先ほどまでの動きとはうってかわり生前と変わらない俊敏な動きでした。


 怪我をした僕が抵抗できるわけもなく近寄ってきたゾンビ達に、今回は蹴り飛ばされました。


 口内から血液が吐き出されて痛みも逆に殆ど感じなくなってきました、だけどこのまま死んでは何の意味もありません。


 僕は無様に転がりながら少しでも距離を稼ごうとしましたが無駄なあがきでした。

 

 再びゾンビ達に群がられ死を間近に感じながらも、僕は皆への申し訳なさと自らの無力さに苛まれておりました。


 そこへ強烈な一撃が放たれ僕、ではなくゾンビ達が蹴散らされました。


 応急処置とばかりに顔に布を巻いたジーク様が苦しそうにしながらも、周りのゾンビ達を蹴散らしてくれたのです。

 

 どうせ死ぬなら暴れてから死んでやるさ、そういってジーク様は呪いに蝕まれながらも持ち前の筋力だけでゾンビを切り裂いていきます。


 ドシンドシンとドラゴンが近づいてくる振動を感じました、そちらへ目をやって僕は思わず痛みも忘れて叫んでしまいました。


 だって魔術師様が、苦しそうに呪いで身体が汚染されながら魔術師様がドラゴンの足間を縫って僕の元へ駆けつけてきていたのですから。


 どうしてと呟く僕を魔術師様はただ抱きしめました、ジーク様は僕たちを痛まし気に見つめましたが最後の時間ぐらい稼ぐとドラゴンへと立ち向かいました。


 そして魔術師様は僕に馬鹿、嘘つきと怒鳴って涙を流し……僕の口に自らの唇をそっとくっつけたのでした。


 こんな極限状態だというのにファーストキスの感触に、僕は状況も忘れて幸せを感じてしまいました。

 

 そしていつまでもこの状態が続けばいいと思ったのですが、不意に魔術師様がはっと身体を離してしまいました。


 惜しいなと思ったのもつかの間魔術師様が必死の形相で回復魔法を唱えて、何故か効力を発揮して僕の身体を癒してくださいました。


 呪いのせいで魔法が使えないはずなのに何故だろうと思ったのですが、気が付けば腐臭は消えていたのでした。


 何が起きているのかもわからないでいる僕たちにジーク様の声が聞こえます、そちらを見ればこちらに駆け寄ろうとする双子をレイが抱き留めていてそんな三人を守る様にジーク様が剣を構えているのがわかりました。


 とりあえず僕は魔術師様に抱き抱えられて皆と合流しました、どうやら呪いの効果が消えているようでジーク様も魔術師様も体調に問題はなさそうでした。


 魔術師様に降ろしてもらい泣きついてきた双子の頭をやさしく撫でながら一体どうなっているのかと周りを見回して見て、そしてゾンビ達が一様に列をなし首を垂れていることに気が付きました。

 

 ドラゴンまでもが何か偉大なる主を迎えるかのように跪いていて、何が起きるのかと思っていた時にその声が聞こえました。



 やっぱり、あなただったの



 声の主はゾンビ達の列の中央を堂々と歩いてこちらに向かってきます、とても美しく耳が尖った背の高い赤茶けた瞳と牙のような犬歯の持ち主……魔術師様にとても良く似ておられました。


 久しぶりねと魔術師様の名前を口にして微笑んだその女性を見て、魔術師様は杖を落とし呆然して呟きました……姉さんと。


 ふらふらと弱々しい足取りで魔術師様はお姉さんに近づいていきます、お姉さんはそんな魔術師様をやさしく抱き留めました。


 そして頭を丁寧に撫でるのでした、魔術師様は涙声でお姉さんを呼び続けます。


 暫くの間そうしていた魔術師様でしたが、沈黙が苦手なジーク様がこの呪死行軍はどうなってるんだと声をかけたところで少し正気を取り戻したようです。


 魔術師様も同じように尋ねました、お姉さんは笑顔を絶やさず答えます。



 私が作ってみたの、うまく改良できてるでしょ



 穏やかな口調で答えるお姉さんを見て魔術師様は固まってしまいました。


 代わりにジーク様がどういうことだと問い詰めると、お姉さんはちらりとそちらに目をやり静かに片手を持ち上げました。


 咄嗟にジーク様が地面に寝そべる様に伏せると、ちょうどその背中ぎりぎりをお姉さんの指先から発せられた閃光が通り抜けました。


 そしてかなり先の方で大地に触れると大爆発を引き起こしました、余りの轟音と爆風に飛ばされないように堪えるのが精一杯でした。


 魔術師様が非難の声を上げますがお姉さんはくすくすと笑うばかりです。


 もう一度魔術師様が何でこんなことをするのか尋ねます、するとお姉さんは決まってるとばかりに宣言いたしました。



 人類滅ぶべし……人なんていらないでしょ?



 血の気が引いた様子の魔術師様がお姉さんから身体を離してこっちへ戻ろうとします、そんな魔術師様をお姉さんはしっかり掴んで離しません。


 双子がママと叫んで駆け寄ろうとしますが、危険を感じた僕とレイは必死で抱き留めました。


 ママという言葉に不思議そうにこちらへ視線を向けたお姉さんは、レイの姿を見つけると初めて表情を歪めました。



 帝国のお姫様……まだ生きてたのね……死になさい



 憎悪を隠そうともせずにお姉さんは再び片手を持ち上げると僕らに向けて火球を打ち出しました。


 ただの火球でした、ただ威力と規模が桁違いでした。


 ドラゴンの巨体すら丸のみにできそうなほどの火の玉が僕らの元へ飛んできます、避けることもかなわないと見た僕にできることは三人を抱きかかえて盾になることぐらいでした。

 

 ふざけるなと叫びながらジーク様が割って入りました、全速力で駆けつけその勢いを載せた剣を火球に叩き込みました。


 パンッと破裂音が響いたと思うとジーク様は跳ね除けられて崩れた体勢を立て直そうと剣を大地に突き刺します、火球は僅かに軌道が逸れて僕らの脇を通り抜けた先で大火事を引き起こしました。


 魔術師様もお姉さんの手を振り払い、杖を拾って僕らの元へ駆けつけました。


 そしてジーク様と並んで僕らの前に立ち、お姉さんを睨みつけます。



 あらあら……お姉ちゃんに逆らっちゃ駄目でしょ?



 そんな魔術師様をお姉さんはやっぱりニコニコと笑顔で見つめております。


 ジーク様はちらりと魔術師様に目配せすると、悪いなと呟いてお姉さんに切りかかりました。


 魔術師様はジーク様を制止することもできず、何かぶつぶつと呟きます。


 風のように素早く距離を詰めたジーク様が全力で振り下ろした剣をお姉さんは避けるどころか一瞥もせずに、虫でも払うかのように乱暴に手をふるいました。


 それだけであらゆる魔物を一撃の下で打ち払ってきたジーク様の剣は鈍い音を立ててへし折れました。


 さらにお姉さんの手首から先が僅かに触れただけでジーク様の身体はボールのように吹き飛び、地面にたたきつけられてしまいました。


 そして追撃とばかりに片手を差し向けようとしたところで、魔術師様が全力で雷撃呪文を放ちました。


 閃光が辺りを眩しく照らし同時にすさまじい轟音と暴風が吹き荒れました。


 初めて長々と詠唱した魔術師様の魔法は、もはや天変地異を思わせる圧倒的な威力を発揮しました。


 極太の雷、いやもはやレーザービームと表現したほうが正しいぐらいのエネルギー量でもって降り注いだ落雷が大地を飲み込み何もかも蒸発させていきます。


 いつぞやのドラゴンのブレスにも勝るとも劣らないほどの眩しさと轟音、そして激しい熱風が砂埃を舞いあげます。


 これが直撃して原型を保てるものが存在するでしょうか、流石に魔法を打ち終えた魔術師様は荒く肩で息をしているほどで僕が咄嗟に肩を抱くと体重を預けてきて悲しそうにぽつりとつぶやきました。


 殺すしかなかったと、そう魔術師様はお姉さんを殺してしまったのだ……と思った次の瞬間旋風が巻き起こり砂埃を打ち払いました。



 うーん、10点満点



 その場にそぐわない能天気な声が聞こえてきました、そちらを見ると落雷の威力で大地に開いた大穴の中心に傷一ついや汚れ一つ付いていないお姉さんが浮かんでいたのです。



 さすが私の妹、聖杯なしでここまでできちゃうんだ



 その言葉はとてもうれしそうでしたが、僕らにとっては絶望的な悪魔の声に聞こえました。


 ジーク様が文字通り身体を張って作った時間で、魔術師様が最高の威力に仕立てた魔法が直撃したのです。


 それが完全に無駄だった今、これ以上僕らに何ができるでしょう。


 しかもお姉さんはクスクス笑うと、お返しと称して軽く吐息を吹きかけました。


 それがドラゴンの飛翔にも匹敵する威力の暴風となって僕らに襲い掛かりました、魔術師様が咄嗟に張った防壁が紙切れのようにぶち破られ竜巻に巻き込まれたように皆ぐしゃぐしゃに跳ね飛ばされました。


 僕は咄嗟にいーちゃんを抱きかかえていたからいーちゃんは何とか気を失っただけですみましたが、僕はもうボロボロで指一つ動かすだけで全身を苦痛が襲います。


 それでも魔術師様とこーちゃんの様子を確認しなければと顔を上げると、こーちゃんはレイがしっかりと抱きかかえてくれていてこちらも無傷そうでした。


 だけど代わりにレイはあちこちぶつけたのでしょう、特に頭から酷い出血をしていてピクリとも動きません。


 そして魔術師様は僕らの前面に立って防壁を張ったがために直撃を受けたのでしょう、杖もへし折れ身体中が壊れた人形みたいにあちこち変な具合に捩じれておりましたが回復魔法をかけて強引に治療するとまたお姉さんの前に立ちはだかります。


 また魔術師様が長々と呪文を唱えます、だけどお姉さんはそれを面白そうに見守るばかりで何もしません。


 そして氷嵐呪文が完成し、お姉さんの姿が見えなくなるほどの猛吹雪が周りを包み込みます。


 余波だけで地面が凍り付くのがわかりました、僕らの元にも氷より冷たい冷気が届いてくるほどです。


 パンッと音がしました、お姉さんが両手を叩いた音だと分かったのはそれだけで吹雪が完全に吹き飛ばされてしまったからでした。


 魔術師様はもう一度呪文を唱えようとします、だけどお姉さんは今度は私の番だと呟き地面を指し示します。


 途端に大地が地震のように揺れたかと思うと隆起し四つ足の岩でできた獣が生み出されました、恐らくゴーレムの一種なのでしょう。


 ただサイズが桁違いでした、背中は雲にかかるほどデカく全長など見通すこともできません。


 そいつがゆっくり振り下ろした足を魔術師様は何とか避けました、しかし巨体から発生する強力な一撃は大地にぶつかり衝撃波を生んで近くにいた魔術師様をゴミ屑のように吹き飛ばしてしまいました。


 受け身も取れず地面にぶつかった魔術師様は、それでも回復魔法を使い身体を立て直すとさらに呪文を唱えようとします。



 もーまだやるのー、しつこい子はきらわれちゃうぞ



 お姉さんはそういうとゾンビ達を動かしました、再び辺りに軽い腐臭が漂い始めます。


 それはつまり魔法が使えなくなったということ、そのはずなのに魔法で宙に浮いているお姉さんはまるで変化がなく作り出したゴーレムも消えることはありませんでした。


 魔術師様もまた苦しむ様子は見られませんでしたが魔法が使えなくなってしまったようで、何度呪文を唱えても何も起こりませんでした。



 私が改良したコレは呪いを任意で解除したりマナだけ吸収したりできるし……何より吸収したマナを私に届けてくれるの、便利でしょ?



 だから前にあなたが巻き込まれた時もすぐわかったわ、それで退かしてあげたの……優しいお姉ちゃんでしょ?



 くすくす笑うお姉さんの言葉を聞いて、僕は前に呪死行軍が立ち去った時のことを思い出しました。


 あれは炎におびえたのではなく魔術師様の魔法を吸収した際に妹のマナだと気付いてその場を立ち去ったのだと分かりました。


 その間にもゾンビは魔術師様に群がり、強引に身体を拘束していきます。



 さあ行きましょ、他のゴミは全部処分しておくから



 そして自らは動くこともなくゴーレムに指示を飛ばして、僕らに向けて腕を振り下ろさせようとします。


 このままでは全滅です、しかし抵抗しようにももう動けるのは僕だけです……なら僕が動くしかありません。


 だけど魔術師様たちがかなわない相手に僕ごときの力で何ができるというのか、せめて他に戦力があればと思います。


 せめてこの周りにいるゾンビ達を、特にあのドラゴンをお姉さんにぶつけられれば逃げる隙ぐらいは……僕はレイの国を滅ぼしたドラゴンの能力を思い出しました。


 あれなら上手くいけば……僕は全身の苦痛をこらえて立ち上がると身を断ち切られる思いでいーちゃんをその場に残し魔術師様の元へ駆け寄りました。


 そしてこちらを気にしていない無防備なゾンビを腰の剣で切り捨てて魔術師様を抱きかかえました。


 そのまま僕は走りだしました、皆を見捨てるのかと魔術師様は僕に叫びかけましたが僕の顔を見ると何か理解してくれたようで静かになりました。


 

 あらあら、誰がうちの妹に触っていいと言ったのかしら?



 お姉さんは自らの手で僕を優先的に仕留めようと判断したようです、ゾンビ達とゴーレムの動きが一時停止しました。


 僕は腐臭が漂っていない場所まで移動すると魔術師様に思いっきり高く飛ぶようお願いしました。


 このまままともに戦っても勝ち目はありません、一か八かに賭けて隙を見て逃げようと提案しました。


 魔術師様は少しだけ目を見開きましたが、すぐに笑顔を浮かべるとお前がそういうならそうしようと受け入れてくださいました。


 そして僕を回復してから飛翔呪文を長々と唱えて解き放ちます、僕らの身体は弾丸のような勢いで真上を目指して飛び上がります。



 逃がさないわよ



 想像通りお姉さんもまた追いかけてきます、魔術師様の飛行速度より遥かに早くあっという間に僕らを追い抜いてしまいます。


 やはり隙を作らなければ逃げることは出来そうにありません、だけど今はこの高さまで来れれば充分でした。


 条件を満たしたことで即座に三匹のドラゴンが飛んできましたから。


 一匹はお姉さんに反応したドラゴン、二匹目と三匹目は僕らに反応したドラゴンです。



 あはは、蜥蜴さんと蜥蜴さんに蜥蜴さんこんにちわ



 てっきり一度の飛行で一匹が来ると思い込んでいましたが、ご丁寧に人数分駆けつけくれたドラゴンは本来なら絶望的なのでしょうが今回はとても好都合でした、


 僕らはすぐに地面に向かいましたがお姉さんはドラゴン達に笑いかけています、当然ドラゴン達は浮かび続けているお姉さんに攻撃を仕掛けました。


 三つの口が開き魔力を収束させてブレスを放とうとしましたが、一匹は下から巨体のタックルを受けて体勢を崩しました。


 ゾンビのドラゴンをお姉さんが操ったのでしょう、ドラゴン同士の猛烈な戦闘が始まります。


 もう一匹はゴーレムの攻撃が迫り躱すことを優先しました、雲にかからない程度の高度ですのでゴーレムの攻撃が届いてしまうのです。


 最後の一匹のドラゴンがブレスをお姉さんに向けて放ちます、お姉さんは笑いながら片手を持ち上げ手のひらを向けました。


 そこから照射された閃光魔法がドラゴンのブレスと激しくぶつかり合い押し合いが始まりました。


 上手くいったとは言いがたいですが良い意味で予想外の展開です、後はあの三匹がどこまで持ってくれるでしょうか……いやそもそも都合よくお姉さんを襲い続けてくれるでしょうか。


 完全に博打です、僕は一生分の運を使い果たしてもいいからと神様にお願いしました。


 魔術師様はこれからどうすると僕に聞きます、僕は地上のゾンビが止まっている間に全員回復して集まろうと提案しました。


 すぐにジーク様の元へ駆け寄り回復魔法をかけます、復活したジーク様は上空を見渡し地獄絵図だなと乾いた笑みを浮かべました。


 次に三人一塊になりレイの元へ行き傷を癒し、双子と合流します。


 上空から轟音と暴風が届いてきました、ドラゴンがゴーレムに向かいブレスをぶつけた余波のようです。

  

 お姉さんと戦っていたドラゴンは身体のあちこちが穴ぼこだらけになって悲鳴を上げています、お姉さんが指先から連続して放つ閃光はドラゴンの身体をも簡単に貫いてしまいその高い回復能力ですら治療が間に合わないのでしょう。


 ドラゴン同士で争っていた個体はどんどん弱々しくなりゾンビに一方的に噛みつかれています、恐らく時折つく傷跡から体内に直接呪いを流し込まれ続けてじわじわと体調とマナを削られているのでしょう。


 こりゃあ長くもたねえなとジーク様は呟きます、これからどうするか魔術師様は尋ねます。


 僕はもう一度賭けに出ようといいました、疑問符を浮かべる魔術師様に全員抱えて飛べるかと逆に尋ねました。


 バランスが悪くなるし速度は出せないだろうが飛べないこともないと言った魔術師様は、ようやく僕の言葉に合点がいったようです。


 ジーク様はやけくそ気味に笑っております、レイと双子は震えながら僕たち大人の顔を見回しております。


 いいかなと僕がもう一度魔術師様に尋ねると、敬愛するお前様が言うのなら私は喜んでやりますとどこかで聞いたような返事をされてしまいました。


 そして僕たちは万が一にも離れないよう紐で互いを結び付けて、飛び上がりました。

 

 ドラゴンは僕らに構う余裕もないようでお姉さんたちと戦い続けています、お姉さんだけが僕たちを首を傾げて見つめていました。


 そして僕たちは再びその高度に達しました、一度着地してから飛んだためかまたしっかりと人数分のドラゴンが飛んできます……その数六匹。



 今更蜥蜴さんなんて何匹来ても……っ!?



 お姉さんの言葉を無視してまたすぐに高度を落とした僕らの耳に凄まじい六重の咆哮が鳴り響きました、そこでお姉さんはようやく僕の馬鹿げた目論見に気づいたようではっきりと表情を歪ませました。


 そうこの咆哮こそが僕の本来の狙いだったのです、今度こそ上手くいきました。


 先ほどの三匹は咆哮を上げる間もなく乱戦に入ってしまいましたが、ドラゴンの咆哮には周囲の魔法を打ち消す力があるのです。


 僕らも魔法を失い墜落してしまいましたが、ある程度高度を落としていたために骨が折れない程度の痛みで済みました。


 上空では魔法の効力を失ったゴーレムとゾンビのドラゴンが、地上ではゾンビの群れが崩れ落ちていきます。


 しかし僕らにつられてドラゴンが来る高さまで上昇していたお姉さんは落下死しているはずでしたが、何故か宙に浮き続けていました。


 不思議でしたが魔術師様が咆哮で分解される以上に魔力をつぎ込んで強引に維持していると解説してくださいました。


 一匹ですら魔術師様の魔法をも分解しきれるほどの咆哮です、それを六匹分受けて堪えられる事実にはもはや驚きを通り越して笑うしかありません。


 しかし高度を維持しているせいで全部のドラゴンの標的がお姉さんに向かいます、咆哮を止めて攻撃を始めたドラゴンの巨体に埋もれるようにしてお姉さんの姿は見えなくなりました。


 こうなったら後は走って逃げるだけだなとジーク様はおっしゃいます、確かにそれでもいいのですがいつドラゴンが気まぐれを起こしてこちらを襲撃してくるかわかりません。


 だから出来るだけ早く逃げるために馬を呼ぼうと僕は言いました。


 どんなのどこにいるんだと聞かれましたが、都合よく駆け付ける奴がいるじゃないですかと僕は答えました。 


 それに対してはレイが即答しました、わらわが見たあの魔物じゃなと……正解です。


 咆哮が止まった今魔術師様は二人までなら抱えて高速で飛べます、だから双子を抱かせると三人に大声で叫んでもらいました。


 予想通り音食馬が人数分駆けつけてきます、前に説明したと思いますがこの魔物はあくまで音源を攻撃しようとするのです。


 魔術師様が攻撃の届かない程度の空中に滞空していると、その場で必死に跳ね続けます。


 僕らは万一にも口から声を漏らさぬよう猿轡をした状態で、荷物から縄を取り出すと何とか魔物の身体に自分の身体を括り付けました。


 一苦労でしたがジーク様が協力してくださり僕もレイも何とかくっつくことに成功し、ジーク様に至っては力づくで乗りこなそうとしています。


 そして魔術師様と双子が声を上げながら移動を始めると、そのあとを追って魔物も駆け出すのでした。


 最後にちらりと上空の様子を窺うと激しい閃光に包まれた数匹のドラゴンが丸焦げになって地上に落ちていき、次いでお姉さんに殴りつけられた別のドラゴンが大地にたたきつけられましたが残りのドラゴンにタックルを喰らい尻尾をぶつけられて爪を振り下ろされております。


 さらに地上に落ちたドラゴンもすぐに回復して再度上昇しお姉さんに襲い掛かっていました。


 どちらが勝つかはわかりませんが、どっちにしても戦闘の余波でこの辺りの土地は暫く使い物にならなくなるでしょうね。


 あとでリース様に謝らなければいけませんが、とにかく僕たちはお姉さんから逃げ出すことに成功したのでした。


 今は王国のすぐ近くで野宿しているところです、かなり距離を稼ぎましたから明日には王国に到着するでしょう。


 前に僕らが使っていたテントとジーク様のテントに分かれて女性陣は眠りについていて、僕とジーク様がいつも通り見張りをしております。


 基本的に疲労回復魔法が使える魔術師様は優先的に休んでもらいいつでも魔法が使える状態を維持しておくようにしているのです、特に今日は最後にはヘロヘロで魔力を使い果たしてしまっていましたから珍しく寝落ちしてしまっていました。


 最もあれだけのことがあったので僕もかなり疲れていますがジーク様は慣れっこのようで、既にいつも通りでした。


 ただ失った剣は王国の至宝であり何より旅の間ずっと使い続けていた愛刀だったので、何度も惜しむ言葉を口にしております。


 僕は謝りましたが、いやいや仕方がなかったし誰が悪いわけでもない……ただ惜しいだけさと言うのです。


 出来れば代わりの武器を用意したいところですが魔法の武器は作れるところは限られており、当然ですがリース様の王国はあの剣が一番の一品でしたから代わりを見つけるのは一苦労でしょう。


 とりあえず今は僕の剣を渡してあります、ただの剣ですが僕が使うよりははるかにマシでしょう。


 しかしこれからどうしましょう、ドラゴンが勝利すればまだ良いのですがもしもお姉さんが勝った場合この世界はどうなってしまうのでしょうか。


 明らかに人間に恨みを持ち、しかも獣人の幼子を巻き込むような攻撃を平然としてきたお姉さんはもう正気とは思えません。


 説得は難しいでしょう、かといって最終的にドラゴン九匹で何とか抑え込めたあんな化け物に誰が勝てるというのでしょう。


 あんな戦術二度と通じないでしょうし、人間の軍隊では論外です。


 考えると頭が痛くなってきます、僕は魔術師様には申し訳ないけれどお姉さんがドラゴンにやられていてほしいと思ってしまいました。


 まあ何はともあれ、領内にドラゴンを呼び寄せてしまったこともあるのでリース様に状況報告もしなければなりません。


 そこで何かいい考えが浮かべばいいのですが……長くなってしまいましたね、ではこの辺りで失礼いたします。

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