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二十九通目

 背景、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?


 こちらは地獄と言わんばかりの光景を目の当たりにして正直気分がとても悪いです。


 想像通りドラゴンは帝国の上空で暴れまわったようですが、僕らが辿り着いたときには全て終わっていてそこには廃墟が広がるばかりでした。


 帝国は軍事に力を入れていて兵士も沢山いたはずですし、城壁にも防衛設備らしきものが大量に見受けられましたがそれでも手も足も出なかったようです。


 何もかも灰塵と化していてあちらこちらにクレーターができていて、そして焼け残った人々の死骸が転がっております。


 双子はジーク様に護衛をお願いしてフード付きローブを着せた上で馬車に置いてきましたが本当によかったと思います、こんな光景見せられたものではありません。


 僕ですら先ほどから吐き気をこらえるのに精いっぱいです、肉が焼ける匂いに死臭が混じり肉料理がトラウマになりそうです。


 たまに生き残りらしき人間も見受けられますが話しかけても返事もできない様子で完全に活力を失っております、財産も住む場所も親しい人間も何もかも一度に全て失えば当然のことでしょう。


 魔術師様はその全てを無視するようにひたすらに探知魔法を使いながらお姉さんの痕跡を探しました。


 ただ離れないように僕の手を握るその手には強い力がこもっていて、悲痛な思いが伝わってくるようです。

 

 それでも何も見つけられないでいるうちに、僕たちは件の豪商が住んでいたであろうエリアに辿り着いたのです。


 そこには何もありませんでした、瓦礫の欠片すら残っておらずただ大きな穴が深い谷のように続いておりました。


 恐らくこの辺りにドラゴンを刺激した何かが居たのでしょう、ここをドラゴンのブレスが薙ぎ払ったのでしょう。

 

 圧倒的な熱量によってこの場所にあったあらゆるものが、屋根も壁も道具も人も異種族も何もかも例外なく消滅してしまったようです。


 魔術師様は何も言いませんでした、フードを深くかぶったご尊顔は確認することもできません。


 ただ握られた手だけがとても痛かったです、本当に痛くて辛いのが伝わってきます。


 いったん帰ろうという僕の意見に逆らうことなく、魔術師様は力なく僕にひかれるままその場を後にしました。


 馬車に戻るとジーク様と双子がお出迎えしてくれました、魔術師様はやはり無言で馬車に引き込むと双子を抱いて横になりました。


 双子の言葉からすると魔術師様は顔を背けて涙をこぼしているようですが、僕たちはあえて聞いていないことにしました。

 

 そのうえでこれからどうするかジーク様と相談しましたが結論なんか出るはずがありません。


 魔術師様の為にここまで来たのですから、魔術師様の意見がなければ動くに動けないのです。


 とりあえず少しだけ帝国から距離を取って安全そうなところを見つけようということになりました。


 その移動中のことです、生き残りらしき人が僕らに助けを求めてまいりました。


 馬車に同乗させてもらいたいとのことでしたが、その方には面識がありました。


 前に王国に来ていた新規開拓した会社の重役でした、接待で浴びるようにお酒を飲まされたのを覚えております。


 できれば今この状態で人と関わるのは止めておきたかったのですが、彼が恐怖からか支離滅裂に当時の状況を話し始めたから大変です。


 何とその話の中で件の豪商の話が出てきたのです、詳しく聞こうとしたところで彼は気絶してしまいました。


 仕方なく僕たちは彼を馬車に乗せて比較的安全そうな場所で野宿することにしました。


 これからどうなるのでしょうか、先行きが全く見えない状態に心が重くなります。


 せめて助けた方が何か有益な情報をもたらしてくれればいいのですが……すいません、今回はこの辺りで失礼します。

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