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二十六通目

 前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?


 子供の成長は早いものですね、まして獣人ということで早熟なのでしょう。


 この間ハイハイを始めてうっとりしていた僕らの目の前で、ついにうちの子たちは二本足で立ち上がって見せたのです。


 弱々しい足取りでふらふらしながらも尻尾でバランスをとってつかまり立ちする姿は可愛らしいのですがハラハラしてしまいます、転んで頭を打たないかとか無理に動こうとして躓いて怪我をしないかとか心配で心配で仕方ありません。


 できればもう少しハイハイしていてほしかったという思いも強いです。


 というのも獣人ということで尻尾をフリフリしながらハイハイする姿は物凄く愛らしく魅力的で僕たちは何時間も見惚れてついつい無意味に距離を取ってハイハイさせてしまうぐらいでした。


 いやあ赤ちゃんは本当に可愛くて……っと全然クールダウンできてませんねすみません。

 

 そういえば僕は今一時的に魔術師様のことをママと呼んでおり、魔術師様も僕のことをパパと呼んでおります。


 お互いに名前が上手く発音できない関係上、どうせなら赤ちゃんにそう呼んでもらえたら幸せだなと思って始めたのです。


 僕がパパと呼ばれることには色々と思うところがありますが、一番気になった点としてこれだとまるで僕たち夫婦みたいで赤ちゃんはその子供みたいだねと告げたところ、その日フードをかぶっていた魔術師様に淡々とそれがどうしたと言われてしまいました。


 全く気にしてなさそうな言い方に意識してるのは僕だけかと落ち込みそうになった時、魔術師様にまとわりついていたこーちゃんが悪戯してフードをめくってしまいました。


 するとどうでしょう、顔どころか耳先から首元まで真っ赤にした魔術師様のご尊顔が現れたではないですか。


 魔術師様はすぐに今日は暑いからフードなんか被るもんじゃないとおっしゃるのですが、季節的にはそろそろ夏が終わろうという時期ですのでそこまで暑いとは思いませんでした。


 そこを指摘しようとすると杖で小突かれてしまい、結局本意は聞けずじまいでしたがまあ魔術師様が可愛かったので良しとしました。


 そのような日々を過ごしておりますが、最近では双子が寝ている隙に昼も夜も構わず睡眠時間を削って運転することで距離を稼げるようになりました。


 勿論魔術師様に指摘されましたが疲労回復の魔法をかけてもらっていることと、三日に一度は皆で並んで眠る様にしたことで渋々許されております。


 何せお姉さんの現状を思えば出来る限り早く到着しておきたいところですからね、少し頑張らないといけません。


 他に何か書きたいことはないかと考えましたが、どうしてもいーちゃんとこーちゃんのことばかり思い浮かんで仕方がないので一旦ここで最後にいつものご紹介を書いて手紙を打ち切らせていただきます。


 さて今回はですね僕らが立っている大陸の地形についてお話ししたいと思います。


 最も実のところこちらの世界には正しい世界地図が存在しないのでひょっとしたら間違っているかもしれませんがそこのところはご了承ください。


 とりあえず僕が二つの王国で入手した世界地図を確認したところ、共通するのは前に話しました通り世界が平面であること、その形が楕円形であること、楕円の縁に氷の大地がドーナツの輪のようにぐるりと一周していることでした。


 あとはお互いの王国の位置も付近の地形図も違いがありますが、どうやら自国の周囲はある程度正しいのですが相手の国の領土まで行くと途端に縮尺やら森の位置やら高低差だとかがずれていくのです。


 まあ衛星写真のように上から観察することが不可能な世界ですし、あちこちに魔物やら危険現象やらが跋扈している関係上測量して歩くわけにもいかないから当然ですよね。


 ちなみに国境というか領土の境目ですが僕が見た二つの王国に関しては王都とその周囲だけで収まっており、点在する村々は入っておりません。


 魔物のせいで遠くまで管理下に置こうとすると治安維持や通行路の確保に逆に金が掛かるためでしょう、自分のお膝元だけしか支配力は及ばないようです。


 となると村々は自給自足で細々と暮らしており、他に必要な物資はたまに通る旅人や商人相手に交換という形で入手していれたり月に一度近くの王国にまとめて取引しに行ったりようですがまだ僕はこっちの世界でちゃんとした村を見たことがないのでわかりません。


 村の跡地ならいくらか見たことはあるのですが……やはり魔物が跳躍する世界では高い税金を払ってでも王国の管理下に入るのが賢い生き方なのでしょうね。


 そういうわけで基本的にどの王国も領土は小さく収まっているので国境同士が触れ合うことはめったになく、それに伴ってか戦争自体起こったりすることはほとんどないようです。


 やはり魔物という共通の敵がいるおかげでしょうか、人間同士争う暇があるなら魔物を討伐して領土を広げたほうが賢そうですしね。


 逆に言うと魔物のせいで遊んでいる土地が多いのも事実であり、それをどうにかしていくのがこの世界の今後の課題と言えるのではないでしょうか。


 何か途中から話が脱線してしまった気がしますね、次回はもう少し王国のありかやこの大陸や海の形について書けたらいいなと思います。


 それでは赤ちゃんも寝たことですし本格的に移動を開始したいと思います、失礼いたします。

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