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二十四通目

 前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?


 長らく過ごした王国を後にして、僕と魔術師様は馬車に揺られて旅路を進んでおります。


 あれから準備を済ませた僕たちはついに次の帝国に向けて出発したわけです。


 しかしスピードは緩めです、何せ僕は馬を操るのなんて初めてですから安全運転を心がけているわけです。


 そう僕たちは定期便ではなくわざわざ自前で馬車を用意したのです、理由は魔術師様たち異種族が人目を気にせず寛げるようにしたかったためです。


 魔術師様達と書きました通り、今荷台には獣人の双子が魔術師様に抱かれていらっしゃいます。


 リース様やクー様も交えて皆で相談した結果、やはり今の時点であの国に異種族を置いていくのは危険だと判断したのです。

 

 申し訳ないとリース様は頭を下げると次までに必ず異種族を受け入れられるように改革すると断言いたしました。


 それはともかく問題はどうやって双子の面倒を見るかです、馬の扱いもあり僕一人では難しいと言うと自然と皆の視線が魔術師様のほうへ向きました。


 魔術師様は溜息をつきながらわかっているとおっしゃり、それから出発の日までクー様に教えられるままに双子の世話を覚え始めました。

 

 最初はやはり罪悪感もあってかぎこちなかったですが、元々子供好きだったためか気が付けば僕よりはるかに上手にあやせるようになっていました。


 やはり魔術師様はすごい人です、僕は改めて尊敬してしまいました……でも赤ん坊に授乳を求められて困惑している姿は可愛かったですが照れ隠しとは言えあんなに殴ることはないと思いました。


 そうそう授乳と言えばこっちでは魔法で強引に母乳を出せるようで、その話を聞いた僕はそれとなく母乳で育てたほうがいいんじゃないかと魔術師様に伝えてみました。

 

 すると魔術師様はジトーっと僕を呆れたような目で見つめたかと思うとそれもそうだなと言って魔法を唱えました、すると確かに母乳があふれ出したのです……僕の胸から。


 魔法ですから胸の大小はおろか性別やら妊娠の可否すら超越しているわけです、その日僕は涙ながらに皆から隠れて双子へ授乳したのでした。


 それ以降は普通に市販のミルクで育てています、念のため言っておきますが決して子供に乳を吸われて変な趣味に目覚めそうだったからではありませんからね。

 

 話が逸れましたね、とにかくそういうわけで僕たちは役割分担として基本的に僕が馬を操り魔術師様が赤子をあやす係になったのです。


 そして出発の日、僕たちはクー様とめーちゃんさらにリース様に見送られて王国を後にしました。


 寂しそうに泣いているめーちゃんにまた会えると約束して、色々ありがとうとお礼を言うクー様にこちらこそ今までお世話になりましたととお礼を言い返し会社のことをお願いいたしました。


 最後にリース様へ感謝の言葉を述べようとした際に、第一王子の似顔絵と共に一通の手紙を渡されました。


 リース様から僕らの話を聞いたお妃さまが、もし旅路にて第一王子に出会えたら渡してほしいと書いたものでした。


 王族から王族への手紙などというトップシークレット級のアイテムを渡されて正直困惑しましたが、リース様は無邪気にそなたらなら信用できると自信満々におっしゃるので受け取らないわけにはいきませんでした。


 そのうえで近くを通ったら必ず寄ってほしい、歓迎するからと言われ最後に直筆で書いた命令書のようなものを頂きました。


 内容はこの王国の領土内で自由に活動していいという許可と領内の人間がこれを見たら出来るだけ協力してやれとのことでした。


 ありがたい限りです、僕と魔術師様は改めて皆に頭を下げると行ってくると告げ王国を出立したのでした。


 そして今に至るわけです、日差しの良い中をこうパカパカと揺られて進んでいると眠気が襲って仕方ありません。


 しかも後ろからは魔術師様が優しい声で子守唄を歌っているのが聞こえてきて、重い瞼との戦いは厳しいものになりそうでした。


 しかし居眠り運転なんてシャレになりませんからね、一生懸命睡魔を抑えるために筆を執った次第であります。


 さて今回は何を紹介しましょうか、道を進みながら思いましたが道路事情についてまだ書いていませんでしたね。


 こちらの世界では整地されているといってもたかが知れており、基本的に草木だけ取り除いて馬を走れるようにした程度のあぜ道ばかりです。


 だから仮に車などがあっても走ることは難しいでしょう、勿論馬車も非常に揺れますが魔術師様が車輪に衝撃を吸収する風のバリアのようなものを張っているのである程度抑えられているのです。

 

 王国内は流石に魔法で石を精製したブロックで埋められておりますが、やはり現代日本におけるアスファルトやコンクリートのような滑らかさはあり得ません。


 これは魔法文明だからというよりまだ馬車が通れる程度にしか交通の便に気を配る理由がないためだと思います、特に旅路に関しては魔物が出没する関係上仮に動きやすい道路を作ってもすぐに壊されてしまうでしょう。


 そうなると逆に破片だとかで危険ですし修繕費もかかりますし、要するにデメリットのほうが大きくなるのです。

 

 ですからこちらの世界にも魔力を利用した駆動機関自体は存在しますが、車のような乗り物はそうそう作られることはないでしょう。


 そして空はドラゴン君が頑張っているので飛行機が作られることもないわけで、こちらの世界には乗り物が中々発展しておりません。


 他にもそちらの世界では馬に食べさせる飼料をどう運ぶかが問題になりますがこちらの世界ではマジカルバックで簡単に持ち運べてしまえるのも馬車一強で乗り物不要論に拍車をかけているような気がします。


 この調子だと長い年月の果てには、意外と車より先に魔物と戦える戦車ができるかもしれませんね。


 さて段々日も暮れてまいりました、そろそろ野宿の支度をしないといけませんのでこの辺りで失礼いたします。

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