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二十二通目

 前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?


 相変わらず大忙しですが、僕はほっとしながら戦後処理を行っております。


 そう、戦後処理と書きました通り討伐は無事終了見事成功いたしました。


 無事に帰ってきた魔術師様の姿を見たとき、僕は崩れ落ちてしまい安堵の余り涙を漏らしてしまったことをここだけに記載しておきます。


 僕は見事功労者として表彰され勲章を頂きましたが、その手柄の中には魔術師様のものも含まれております。


 何故なら魔術師様は姫騎士様の協力者として討伐軍に加わり見事に活躍されたのですが、流石に異種族であるため表彰式に出るのはやめておいたのです。


 結果として僕の胸元には色んな種類の勲章がぶら下がっているわけで、特に武勲章がやばいことになっています。


 魔術師様は大活躍だったようですね、フードとローブで体格を完全に隠していたから僕が受け取ってもそこまで疑問には思われませんでしたし勲章の数にも異議が出なかったほどです。


 ただ流石に帰ってきた魔術師様は意気消沈していました、仕方ないのですが異種族の討伐という関係上どうしても人間至上主義的な発言が多かったらしくて姫騎士様は気遣ってくれたのですがそれでも気が重かったのでしょう。


 唯一の救いとして獣人たちの繁殖相手などはどこぞから攫ってきた女の人ばかりであり非戦闘員を倒す必要がなかったことでしょう。

 

 退治したのは全員人間を殺すことを喜ぶ極悪獣ばかりだったそうです、そうでなければ罪悪感も上乗せになってもっとひどいことになっていたでしょう。


 それでもその日魔術師様は忙しくて目が回りそうな僕を捕まえ、休めと言ってベッドへ連れ込まれました……ローテーションを無視して。


 そして眠れずにいる僕に腕枕をさせて、残った手で頭を撫でろといい……僕の腕の中で安心した様子でお休みになられたのでした。


 基本的に魔術師様は下手な男よりはるかに颯爽としていて逞しく格好いいのですが、それゆえに時折見せるこのような姿は可愛すぎて破壊力がすさまじいのです。


 何よりそんな姿を僕に見せてくれるということ、すなわち頼りにされているという事実と心を許してもらえているのだろうという思いから僕はドキドキとわずかな興奮と共にもっと頼れる存在になろうという思いに満ち溢れるのです。

 

 話を戻しますが討伐軍は魔術師様達が下調べした通り獣人の住処を見つけて、魔術師様の雷竜巻で奇襲し混乱しているところを一気に攻め滅ぼし、非戦闘員というか奴隷としてこき使われていた捕虜を保護した上で残党も探知魔法で確実に殲滅したのでもう安全だと言います。


 おまけに敵の攻撃は全て魔術師様が風魔法で吹き飛ばしてガードしてくださったようで結局こちらの被害は何と0人という完全勝利でしたから王国内での称賛の声はすさまじいことになっておりました。


 皆口々に姫騎士様の名前を称え、僕もいつも通り呼べるところを組み合わせてリース様と称賛したものです。

 

 とにかくそういうわけでもはやこの国の空気は王女派一色に染まりつつあり、王様も王女の派遣で評価が上がってしまったがために口が裂けても継承権を移すなど言えない状態に陥っております。 


 大臣たちは悔しそうにしながらもこうなっては逆らっても何の得にもならないので王女にすり寄る様になってきました。


 第二王子は国の空気に流されて純粋に喜んでおります、困ったものですね。


 さて僕のほうはと言いますと先に書きました通り今は必死で書類と格闘中で、今回の戦後処理は被害がなかったがためにもっぱら会社の収益に関することを中心に行っております。


 何せ全面的に支援を行い成功させたのです、見返りは相応のものを頂く権利があるのですがその前に支援で失った資金も補わなければいけません。


 とりあえずは年内における税の免除、これ以降の王宮内における備品等の補充時に優先して利用して貰う権利、後はこれから拡張する領土の整地などに携わることぐらいでしょうか。

 

 要するに公共事業の独占、とまではいきませんが優先して回してもらうことで利益を上げさせてもらおうというのです。


 余りやりすぎては他の会社との間に不和が生じてしまいますが、流石にこの盛り上がりを全力支援したのですから暫くの間は文句は上がらないでしょう。


 勿論出来るだけ儲けを共有できるよう下請けとしてほかの会社にお金を回すことも考えていますが、何やら僕も汚い大人になってきた気がしてげんなりしてしまいます。


 まあとにかく忙しい日々を送っております、クー様が手伝ってくださらなければパンクしていたでしょう。


 クー様もこれからここに住むこともあり討伐の成功は喜ばれておりましたが、何より今回のことで近隣住民から好意的に見られるようになったのが一番良かったのではないでしょうか。


 何せ自分で言うのも何ですが王女様を除いた中で討伐の一番の功労者となっている僕を住まわせており、さらには秘書をしていたわけですから評価が上がらないわけがないのです。


 ただ困ったことに一緒に暮らしている専属秘書ということで、何やら僕と特別な関係にあるのではという目で見られてしまい恥ずかしいやら申し訳ないやらで頭が上がりません。


 クー様本人が気にしてない様子で笑ってくださったのが何よりの救いです。


 後はリース様が約束通りお姉さんの情報を集めてくだされば良いのですが、今はやることが多すぎてもう少し時間がかかりそうです。


 さて今回も忙しいのでそろそろ終わりにしたいと思いますが、最後にこちらの世界の一面をまた紹介したいと思います。


 何を書こうかと迷いましたがそういえば天候について詳しく説明してなかったと思いました。


 とは言っても基本は同じで太陽が照り付ける晴れ、雲が光を覆う曇り、雲から雫が降り注ぐ雨、寒さで雨が結晶化する雪や雹など。

 

 湿気が濃く視界を遮る霧、風によって大地の粉が舞い上がる砂嵐に地吹雪、そして雨に伴い発生する雷。


 ただそれぞれ僅かに異なる性質を持ち合わせており、特に雷が厄介なのですがですが今回は置いておいてもう一つの天候について語りたいと思います。


 それは何だと思いますか……実はこちらでは生物が降り注ぐ日があるのです。


 何となく想像がついているかもしませんがやはりマナがかかわっております。


 前に地形が平面説であることを伝えたと思います、そしてその端から落ちたものが蒸発して雲になることも。


 当然それはマナ自体であったり、マナを含む生き物であっても例外ではないのです。


 それらはマナ同士でくっつきあった特殊な虹色をした雲になり、一定以上に膨れ上がると様々な姿に具現化して降り注ぐのです。


 この具現化する形ですがどうもマナに分解される前の生物がくっつきあった歪な形をしていて、これらキメラ状の生き物を魔獣と称しております。


 魔獣は融合しているすべての生物の特徴を兼ね備えており、また等しく凶暴で手あたり次第にその能力を駆使して動くものがいなくなるまで攻撃を繰り返すのでとても恐ろしく危険な存在です。


 最も無理やりくっついているためか大抵の魔獣は長生きすることができないし、まして番って増えることはあり得ないのが救いです。


 そのため虹色の雲が見えたら隠れて潜むのが常識で、また魔獣に出会ったら一目散に逃げて時間を稼ぐのが鉄則だと言います。


 僕は雲自体は見たことがありますがまだ成長途中であったらしく、魔獣が降ってくることはありませんでした。


 魔術師様も魔獣にはあったことがないと言います、前兆が分かりやすく避けやすいことと魔獣が降るほどに雲が成長するまで時間がかかることもあって意外とレアなイベントなのだそうです。


 しかし過去には街中に振ってきたことがあるようで、その際は住人は避難していたので犠牲者はいなかったようですが街自体は全壊した上に毒霧が発生してしまい、結局人が離れて無人の廃墟と化してしまったようです。


 本当に恐ろしい世界ですねここは、ただ虹色の雲自体は透明感もあって幻想的でありながらも青空によく似合っていました。


 ではこの辺りで失礼いたします。

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