十四通目
前略、皆さま方いかがお過ごしでしょうか?
あれから暫く間が開いてしまいましたが、僕たちはついに目的地である次の王国へと到着いたしました。
今回も個室を二つ取っておりますが片方は馬車の持ち主だった奥様と娘さんが寝泊まりしているため、僕と魔術師様は必然的にもう一つの部屋で一緒に寝泊まりをしております。
あれだけ美人の魔術師様と同室で生活してると正直ドキドキしっぱなしです、しかも大分心を許してもらえたのか二人っきりでいるときはフードはおろかローブまで脱いで室内着でくつろがれているので露出面が増えてもはや視覚の暴力と言わんばかりです。
ローブで秘められていた身体はスタイルも大変よろしく、出るところは出て締まるところはしまっているという男性はおろか女性の目からしても魅力的に感じてしまうことうけあいです。
当たり前ですが胸部に至っても僕とは比べ物にならないグレープフルーツさんであって、どうしても視線が引き寄せられそうになってしまい困っております。
ちなみに隣の部屋に泊まっている奥様、最近では名前で発音できる部分を伸ばしてクー様と呼んでいるのですがこちらも年齢に似合った魅力の持ち主であり先日ちらりと寝間着姿を見る機会があったのですがもっとたわわに実っていて梨さんでした。
そのクー様ですが娘のサクランボさん、ではなく先ほどと同じ理由でめーちゃんと呼んでいる子供を養うべく仕事を探しておりますが中々難しい有様です。
今回辿り着いた王国は前の国よりはるかに治安がしっかりしているところなのですが、逆に戸籍やら保証人やらがないと面接の段階ではじかれてしまうのです。
当然同じ理由で僕はおろか、魔術師様も仕事にありつけておりません。
当面の食事等の生活必需品については僕の物資から賄えますし、宿代などの金銭での清算が必要な場面では関しては魔術師様が里から支給された宝石で多少は持つでしょうがこのままではいずれ野宿生活に戻らざるを得ません。
とはいえ僕や魔術師様ならともかく、クー様とめーちゃんには目の前で旦那さんを失ったトラウマもあるのであのような辛い生活はもうとても耐えられないでしょう。
最も僕らが面倒を見なければいけない理由はないのですがそこは魔術師様、一家の大黒柱を失い生活に困っている方を放っておくわけにはいかないと断言されました。
全く持って立派な方だと思います、僕もそんな魔術師様に仕えられて誇りに思いますと言ったところいつから主従関係になったのだと小突かれてしまいました。
話がそれましたね、ともかくあの二人に関しては旅の途中である程度打ち解けましたし特にめーちゃんは魔物から救われたからというのもあるのでしょうが非常に僕らにべったりと懐いてくれていて、要するに面倒を見るのは決して嫌ではないのです。
しかし負担はやはり大きく、兎にも角にもどうにかして仕事にありつかねばと今は奮起しております。
できれば僕が三人を養えるようになって魔術師様には本懐である姉探しを、クー様とめーちゃんには生活の地盤をきっちり固められるよう専念できるようにしてあげたいところです。
さてそろそろ前回書く余裕がなかったこちらの不可思議な光景についてまた紹介していきたいと思います。
こちらの世界で僕は魔術師様と結構な期間をサバイバル的に過ごしていて、当然その際に食べる物は寝る場所はどうしても自然に委ねる部分が多くあります。
特に食料に関しては前の王国で調達するまでは野生に生っている植物や退治した魔物の肉を食べていたわけです。
そのうち植物で食べるところといえばそちらの世界では野菜と果物をイメージすれば大まかに種、葉っぱ、根っこ、茎、果肉に花や蜜などといったところではないでしょうか。
しかしこちらの世界ではマナの関係上かもう一つ食べれる部分があるのです、それはいわゆる花粉と呼ばれるものです。
前に蒲公英に似た種を飛ばす植物のことを書いたと思いますが、こちらの世界の動植物はマナを繁栄のために利用しているものも当たり前のようにいるのです。
それらの植物の中でも溶粉と呼ばれる花粉を飛ばす種族がいます、この花粉はマナに触れるとどろりと溶けて液体になるので溶粉と呼ばれているようです。
本来はめしべが仄かに発するマナに触れることで変質してくっつき繁殖するのですが、この性質を応用して手のひらにマナを溜めた状態で受け止めて液状化させて飲めるようにするのです。
これがまるで点滴のように非常にエネルギー源として優れていて、一口分飲むだけで一日生活できるようになるのです。
味のほうはというとクー様曰く某白濁としたタンパク質の味に似ているようですが僕らには苦みが強いとしか判断できません。
ともかくこれらの花は非常に有益なので旅に出る者達のためにあちらこちらで栽培されていて、また食料不足に備えてその花を非常食代わりに摘んでいったりもします。
更には新たに拠点を作る際に植える用に種を持ち歩く人も多いそうです、ですからこちらの世界では旅に出る人はみんな花を身に着けているといっていい状態なわけです。
そして食べる際には異世界だというのにまるで時代劇のワンシーンのように茎を口に咥え、手のひらで花粉を受け止めたりするわけです。
中々面白い光景だとは思いませんか、少なくとも僕は初めてその光景を見たときにクスッと笑ってしまいました。
少し地味だったかもしれませんね、次回はまた派手で危険な現象について書いてみたいと思います。
さてそれでは長々とお付き合いいただきありがとうございました、失礼いたします。




