たった一つの冴えない、都合のいいやり方~後編~
遅くなりました(´Д`)
書いては消し、書いては消し。
そして、誰もいなくなった……的なことになるとこでした。
あのあと、すぐに警備兵のような、やはり軽装備の動きが悪い集団が車で来て襲撃者を引き連れて行った。それを最後まで見ることは叶わなかった。帆乃佳によって馬車へと強引に乗ることになったからだ。
「なぁ、帆乃佳。なぜ警備兵は車で姫たる君は馬車なのさ?」
「あら? 由岐様、王族たるもの、いつも優雅に馬を駆る。これは、貴族も一緒でなくて?」
「ほのっち……帆乃佳様、ウチには御者が居ないので」
「咲桜様、昔のようにほのっちでよろしいのですよ? ところで、第一夫人を譲ってくれる気には」
「ないわよ。ほのっち」
「いじわるですわ!」
そう叫ぶと、向かいにすわる由岐に帆乃香は抱きついた。
「そこっ! 断られるのわかってて聞いた上に、それをダシにお兄ちゃんに抱きつかない!」
由岐は、抱きつかれたまま手を泳がせどうしたものか、そう悩んでいたらどうやら学校についたようで、馬車が緩やかに止まる。
「残念。もう着いてしまいましたわ。クラブ活動がなければ帰りも、ご一緒にと誘えますのに」
「悪いな、帆乃佳。今日の午後は予定が有るんだ」
そう言った由岐の顔を『そうなの?』とうかがう咲桜をよそに、扉の開いた馬車から降りて手をだし、咲桜をエスコートする。
「ねぇ、お兄ちゃん。予定って?」
「あぁ、咲桜とわか姉の三人でこの状況をどうにか出来ないかの相談でもしないか?」
「わかった。というか、お兄ちゃん何か考えがあるの?」
「まぁ、期待しないでくれ。都合のいい考えだから」
それじゃ放課後に空き教室で、そう告げて二人は四階の階段で別れた。
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放課後、しばらくしてようやく三人が集まる。わかなの生徒会の仕事が終わるのを待っていたのだが、陽はすでに大きくかたむいていた。
空き教室を茜に染め上げ、桜並木も淡い色を赤く染め、並木道に影を伸ばしていた。
「で、話ってなによ。由岐」
「あぁ、もう入れ替わってくれてたのか」
「まぁね。一応、もう一人のわかなも聞いてるわよ」
「まず、ドッペルゲンガーによる強制力、それを無かったことにしたい」
「無理ね」
「最後まで聞いてからにしてくれ」
無言で咲桜とわかなはうなずく。
「要は、入れ替わっても望んだように強制力が働かなければいいわけだよな」
「なら、望めばいいんじゃないか? と僕は考えた。そして、僕は望んでみたけど結果はなにも変わらない」
「そうね。確かに由岐の考えは新たな世界を、並行世界を産み出してソコからの干渉で強制力が起こらなくする。その考えは、まぁ間違っては無いけど」
「お兄ちゃんが望んで無理ならわたしたちにも無理なんじゃ?」
「いや、二人なら出来るんじゃないか? なにせ、システムを作った本人なんだから。つまり、僕が出来ないのは知識が足りないから、望む為のベースとなる考えが浅すぎて出来ないんじゃないか。と、考えてる」
「なるほど、やってみる価値はあるかもね」
「でも、そんなに都合よくなるかなぁ」
「いや、今のこの世界のどこに都合が合うとこがあるんだ? ないだろう。剣に魔法、竜に空飛ぶ車やバイクもはやどこまでも狂ってる」
「うーん。わかった。お兄ちゃんやってみるよ」
「そうね、なら咲桜と二人でどんな世界を望むかの打ち合わせしないと。というわけで、今夜は咲桜の部屋に泊まるからね?」
「え? お兄ちゃんと添い寝が……」
「元々してないから安心しろ。じゃあ夕飯は唐揚げでも作るわ」
「へぇ、由岐の唐揚げ……ね。もう一人のわかなが食べるとき入れ替われって言ってるわ」
「まぁ、わか姉はしょうが焼きより、唐揚げが好きだからね」
「じゃあ帰ろう」
「あ、そう言えば帆乃佳は入れ替わって無いよな? 違和感も無かったし」
「たぶん。あの感じだと強制力で改変されてるだけだとおもうよ?」
「そっか」
咲桜も同じように感じたらしく、由岐は少し安心する。
帰りにわかなの家、公爵家なのに精肉店経営をしているという、恐ろしく貴族とはなんぞ? という、状態の店で唐揚げ用の股肉を買い帰宅する。
由岐はやれることが料理位なので、やけに広くなってるキッチンで下準備を始める。
一口大に股肉を切り、水洗いをして、百パーセントのリンゴジュースに浸けていく。
全てを浸したあと、ラップをして冷蔵庫へといれ、その間に醤油ベースの漬け込み用のタレを作っていく。醤油、みりん、砂糖を少しと、すりおろしたニンニク、しょうが、そして、少しばかりの味噌をいれしっかりと混ぜる。
指先につけ、味を確認してから、先ほど冷蔵庫にいれた肉を取り出しリンゴジュースからさらって、浸けダレのボウルに入れていく。
残ったリンゴジュースは、鍋に入れて沸騰させ、野菜リンゴドレッシングを作る。玉ねぎをフライパンで炒め、リンゴジュースの中へ入れて煮詰めていく。
大分水分が抜けたとこで、塩コショウとお酢、レモンの絞り汁、オリーブオイルを入れて混ぜる。あとは冷やして、煮沸した瓶に詰めるだけだ。
問題なのは量で、唐揚げの時に必ずのようにリンゴジュースを使うためドレッシング以外にも作れないかと思案はするが、なかなか他の用法が思い付かないため、大体はわかなの家や、帆乃佳の家、秋人の家に瓶詰めにして渡している。そうでもしないと、無くならない上に増えていくからだが、皆喜んでくれてるが、本当に迷惑じゃないか不安な為、唐揚げの頻度は三ヶ月に一回ほどに減らしてある。
そうこうしていたら、咲桜、わかなが揃ってキッチンへ来た。
「良い香り~」
「ゆきちゃん味見! あーん」
「わか姉…………熱いから気をつけてね」
小振りの油が切れたヤツを菜箸で摘まみ、わかなの口に由岐は唐揚げを放り込む。
「ずる~い! お兄ちゃん、わたしも~あ~ん!」
由岐は苦笑いをしつつ、菜箸で唐揚げを摘まみ咲桜の口に放り込む。
「ん~!」
「んふ~ゆきちゃんの、唐揚げ久しぶり~~!」
そのあと、何とか味見による食害を防ぎ、夕飯を無事に迎える。あのままだと、メインのおかずが無くなり、寂しい食卓になるところだった。
由岐はすがるような目付きの二人に良く耐えた、そう自身を誉めながら唐揚げを噛み締めていた。
「で、うまくいきそうなのか?」
「ん~、多分明日わかるかな?」
「そうね、明日ね。ちゃんとわかるような符合はつけてるから」
「符合?」
「気にしないで、うまく行けばわかるから」
「で、いつの間にもう一人のわか姉になったのさ」
「さっきよ。唐揚げ。確かに美味しいわね、わかなに感謝しないと」
「いや、作ったの僕だけど……」
「知ってるわよ?」
そう言う話をしている最中、咲桜がやけに静かだと様子を伺った由岐は絶句する。
頬をリスのように膨らませた咲桜が、大皿の唐揚げを駆逐しに走っていた。
口と取り皿、唐揚げの大皿を踊るように三次元立体機動を箸が描く様に素早く唐揚げを減らしていく。
「ちょっと咲桜! それ以上はさせないわよっ!」
そして、そこにわかなも加わり由岐は乱戦に入る程の気迫を出せず、ただ消え行く唐揚げを眺めていたのだった。
これにて、第一部『起』完です。
次からは『承』にはいりますが、その前に日常枠、ネタ枠をいれていきますのでよろしくお願いします。




