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さようならまた会う日まで


 木の根からかっこよく着地を遂げたウィリアムことウィルは怪訝な顔をした。今まで私が大切な話なんてしたことがなかったからだろう。


 この広場で言われた通り私はルルと名乗っている。

 本名は長くて小さな子どもには呼びづらいとの事でルルと呼んでもらっている。大半の子がルルだと思っているのではないだろうか?

 最初に略称で呼び始めた彼の言い分では呼びやすいし、なにより親しみを込めてだよと言っていたが多分初対面で呼んだ時に噛んだからだと私は思っている。


 私が遠くに行くと言ったらみんな最初は冗談だろいつ帰ってくるんだって言っていたが、母の再婚を機に遠縁の親戚に養子に行く事になったと説明した。


 何で納得してくれない?


「えぇー!ルルいなくなるの?」


「いつ王都に帰ってくるの?」


「ルルねぇとバイバイや~!」


 私より小さなメリーは泣き出した。おいおい。かわいいこというなよ。連れて行きたくなるだろ。


「ごめんね。多分王都には二度と帰れないかな。」


「……おい、王都に帰れないってどこまで遠くに行くんだよ。」


 今まで(だんま)りを決めていたウィルが話に入ってきた。


「んー。私もあったことがないからなー。どこまで遠くかはわからないな。」


「それ、本当に信用できるのか?ここの森みたいに護ってくれる妖精はいないんだぞ?」


「……うん。いつか大人になって冒険者にでもなればこっちに戻ってこれると思うけれど。」


「……なら、戻ってきたら俺の所で雇ってやる。冒険者なんて若いうちに成功できなければ嫁に行くか商売の道に行くしかないからな!」


「確かにその日暮らしをする冒険者は大変だけど、私、やりたいことがあるの。」


「やりたいこと?なんだよ。それ。」


 ちょっと不機嫌になるのやめてくださいます?


「私旅をしながら見聞を広めたいのもあるけれど一番はいつか文字や計算を学べる場所を作りたいなって。」


 うわー、ここまで言うつもりなかったのになー。今になって恥ずかしくなってきた。


 この世界に学校は貴族が通う高等学校や専門学者が通う大学ぐらいしかない。基本的に家庭教師によって教育される。

 平民できちんと学べる場所は教会ぐらいだが最近の教会ってお布施もセットじゃないと受け入れてくれない。

 農民なんかもっと酷い安値で買い叩かれてそれに気づかないことの方が多いときた。

 噂話でこのレベル地方はどうなっているのか本当に未知だ。


「なら、俺は偉くなって地方にも学べる場所を作る!ここでルルが文字や計算を教えてくれて助かったやつ何人かいたしいいんじゃねぇか?」


「本当に、そう、思う?」


「ああ!ルル、お前が夢を諦めても俺は諦めないよ。」


「別に諦めてないし!」


「ならそんな顔をするなよ。」


 ビックリした。自分の夢を諦めていることをウィルは当てたのだ。

 心の中で無理だろうと弱虫な自分がいたのは事実だ。これから目立つことなく生きていくにはこの夢は大きすぎる。どうしても目立つことになる。


「……ありがとう。私もがんばる。」



 私のエゴが誰かの未来に繋がっていたことがなによりも嬉しい。





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