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こども団の話

「こども団の話」




もぐらくんとひまわりくんは、古い街へやってきました。


この街には大きなお城があって、


石畳の道に、


レンガの建物


古からあるものを、そのまま利用して人々は暮らしています。


もぐらくんとひまわりくんも、この街が気に入ったようです。


周りをキョロキョロ見ながら、ニコニコしています。


周りばかり見ていたせいでしょうか?


二人は大通りから外れた路地裏に入ってしまいました。


今度は不安そうにオドオドしています。


大通りに戻ろうと歩いていると、突然子供が飛び出してきました。


子供は3人。


お鍋のヘルメットを被り、手に棒を持ってもぐらくんとひまわりくんを威嚇しています。


少年Aは言います。


「やい!おまえは何者だ!」


ビックリしてもぐらくんは答えます。


「僕らは旅の途中のもぐらとひまわりさ。」


すると、少年Bが言いました。


「おまえじゃない!となりの植物だ!」


ひまわりくんはビックリして答えます。


「ぼくはひまわりだよー。」


すると、少年Cが言いました。


「嘘をつくな!ひまわりに足があるわけがないじゃないか!」


「さては、お前は化け物だな!」


ひまわりくんは、ちょっと落ち込みました。


もぐらくんが3人の少年に説明します。


「ひまわりくんは、ぼくらの野原の守り神様の白ヘビ様の力で足をもらって歩けるようにしてもらったのさ。」


「もともとはただのひまわりさ。」


3人の子供は、露骨に疑わしい目を二人に向けます。


少年Aが言いました。


「子供だましの嘘をつくな!」


もぐらくんとひまわりくんは困ってしまいます。


少年Aが「捕獲だー!」と言いと


3人の子供はひまわりくんに襲い掛かりました。


子供たちは持っていたロープで、ひまわりくんをぐるぐる巻きにして


ひまわりくんを連れ去ってしまいました。


突然のことで呆気にとられたもぐらくん。


もぐらくんは立ち尽くすばかりでした。




子供たちは、街の地下にある子供たちのアジトに、ひまわりくんを連れ去りました。


連れ去ったひまわりくんを、子供たちは尋問します。


少年Aが言いました。


「おい!化け物!」


ひまわりくんはまた落ち込みます。


少年Aは続けます。


「お前はどこから来た!」


ひまわりくんは答えます。


「野原から来たんだ。旅の途中なんだよー。」


少年Bは言いました。


「なぜもぐらと旅をしている!」


ひまわりくんは答えます。


「もぐらくんは、僕の命の恩人なんだ。」


「ぼくが種だった時に、地中深くで芽が出せなかったのを、もぐらくんが地上近くに運んでくれたんだ。」


「そして、ぼくが枯れそうな時に、白ヘビ様の水を使って助けてくれたんだ。」


ひまわりくんの話を聞いて3人の子供は、ゴニョゴニョと話をします。


そして、少年Cはひまわりくんに聞きました。


「あのもぐらはそんなにイイヤツなのか?」


ひまわりくんは即答します。


「最高の僕の友達さ!」


また、3人の子供はゴニョゴニョと話をします。


少年Aはひまわりくんに聞きます。


「お前の親はいないのか?」


ひまわりくんは言います。


「僕は、芽を出した時には、遠くに運ばれた後だったから知らないよ。」


「でも植物はそんなもんだろ?」


「もぐらくんが、親代わりかもしれないけど…。」


ひまわりくんは、子供たちに聞きます。


「君たちの親は?」


少年Aが言いました。



「ぼくたち3人は、生まれた時から親はいない。」


「みんな戦争で死んでしまったんだ。」


「でも、大丈夫。」


「ぼくら3人で協力したら生きていけるからな!」


少年Bも少年Cもウンウンうなずきます。


そして、子供たちは3人でまたゴニョゴニョ話をします。


少年Aが言います。


「お前気に入ったぞ!」


「ぼくら、“こども団”に入団させてやる!」


ひまわりくんは言います。


「こども団?」


少年Bは言います。


「そうさ!ぼくら3人のことだ!」


「今日からお前は僕たちの仲間だ!」


ひまわりくんは、困りながらも少し子供たちと一緒に居ることにしました。



翌日、こども団(ひまわりくん含む)は街の大通りにある商店街にいます。


少年Aは言いました。


「食料の調達だ。」


「まずは、あのヒグマのパン屋からパンを盗むぞ。」


そういうと、少年Aはパン屋の店先にあるパンを4人分サッと盗み、走り逃げます。


店主のヒグマが怒って出てきました。


「待てー!毎日毎日盗みおって!この悪たれ坊主どもがー!」


ヒグマの店主が走って追いかけてきますが、こども団はすばしっこく逃げました。


次に少年Bが言います。


「次は、パンにつけるジャムを盗むぞ。」


「あのミツバチのジャム屋からジャムを盗むぞ。」


そういうと、少年Bはジャム屋の店先にあるリンゴのジャムをサッと盗み、走り逃げます。


店主のミツバチが怒って出てきました。


「待てー!毎日毎日盗みおって!この悪たれ坊主どもがー!」


ミツバチの店主が走って追いかけてきますが、こども団はまたすばしっこく逃げました。


次に少年Cが言います。


「次は、パンにはさむサラダを盗むぞ。」


「あのてんとう虫の八百屋からサラダを盗むぞ。」


そういうと、少年Cは八百屋の店先にあるレタスとジャガイモとニンジンをサッと盗み、走り逃げます。


店主のてんとう虫が怒って出てきました。


「待てー!毎日毎日盗みおって!この悪たれ坊主どもがー!」


てんとう虫の店主が走って追いかけてきますが、こども団はまたすばしっこく逃げました。



そして、4人はアジトに戻って食事を取りました。


ひまわりくんはこども団のみんなに言います。


「やっぱり盗みは良くないよ。」


「大人たちに言って食料を分けてもらえばいいんじゃないか?」


すると少年Aは怒って言います。


「大人に頭を下げるなんてごめんだね!」


「大人はみんな自分のことしか考えていない!」


「だからぼくらはぼくらで生きていくことにしたんだ!」


少年Bと少年Cもウンウンとうなずきます。


その話を聞いて、ひまわりくんは何とも複雑な表情を浮かべるのでした。


その後も、4人は毎日、同じ商店街の同じお店で盗みをして食事を確保します。


その度に店主たちに追いかけられましが、捕まることはありませんでした。


ある日のこと、町に台風がやってきました。


街の中の川は氾濫しそうなぐらいの天候です。


それでも、こども団は食糧調達のためにいつもの商店街に来ました。


運よく商店街の中でも、いつものパン屋とジャン屋と八百屋はやっていました。


いつものように3人は食糧調達の為、お店に走り寄りました。


少年Aはパン屋に、


少年Bはジャム屋に、


少年Cは八百屋に。


その時、台風の突風が吹きました。


3人の子供たちは、風に飛ばされて街中の川に落ちてしまいました。


川は氾濫して流れが速くなっています。


子供たちは、あっという間に流されてしまいます。


ひまわりくんは慌てて子供たちを追いかけます。


しかし、子供たちはいくら泳いでも流されてしまいます。


子供たちが「もうダメだ」と思った時、川に大きな何かが3つ飛び込みました。


そして、その3つの何かは3人の子供に向かいます。


そして、こども団は、その3つの何かの正体を知りました。


少年Aのところには、パン屋のヒグマの店主が、


少年Bのところには、ジャム屋のミツバチの店主が、


少年Cのところには、八百屋のてんとう虫の店主が、


それぞれ3人を助けにやってきました。


大人はこども団を無事助けて出すことが出来ました。


ひまわりくんもこども団のところに走り寄ります。


ひまわりくんは言いました。


「良かったよー。」


「台風の日に、偶然みなさんがお店やっていたおかげだよ。」


すると、店主たちは笑いながら言いました。


ヒグマの店主は言いました。


「何を言っているんだ。」


「おれたちが店開けてなきゃ、この悪ガキどもが腹を空かして死んじまうだろ!」


ミツバチの店主も言います。


「そうだとも!俺たちはずっと、この悪ガキのことを心配していたんだ!」


てんとう虫の店主も言いました。


「私たちはね、3人で話し合ってこども団の3人がお腹を空かせないように、他の店に迷惑をかけさせないように、わざと自分たちの店で食べ物を盗ませていたんだよ。」


そして、3人の店主は顔を合わせて言いました。


「こいつらが、大人を信用できなくなったのは、我々大人のせいと思って放っておいたが」


「やっぱり子供だけで暮らさせておくのは無理かもしれんな。」


「今日つくづく思い知ったよ。」


こども団は、恐怖で震えています。

ヒグマの店主が少年Aに言いました。


「おい!坊主、明日からオレの養子になれ!」


「盗まなくても腹いっぱいパンを食わせてやる。」


ミツバチの店主が少年Bに言いました。


「君は僕の養子だ!」


「君らには教育する大人が必要だからな。」


てんとう虫の店主は少年Cに言いました。


「あなたはうちの養子よ。」


「これからは、まっとうな生活をするのよ。」



そして、こども団の3人はそれぞれの店主の養子となりました。




台風が去った後、ひまわりくんは、もぐらくんを探しました。


もぐらくんは、ヒグマの店主のところにお世話になっていました。


もぐらくんはひまわりくんに言います。


「こども団は、もういいのかい?」


ひまわりくんは言います。


「もう大丈夫だよ。」


「みんな、優しい大人のところに居られることになったから。」


そしてまた、もぐらくんとひまわりくんは、次の街へ旅立つことにしました。


ひまわりくんは、今までお世話になったお礼に、こども団の3人に自分の種を一粒づつ渡して言いました。


「僕の種は、願い事をして食べると叶えるチカラがあるんだ。」


「この先、君たちが本当に困ったときには僕の種を食べて願うときっと叶うよ。」



少年Aは言いました。


「ありがとうひまわりくん。」


「この種は、ぼくらと君との友情の証にさせてもらうよ。」


少年Bと少年Cもウンウンとうなずきます。



そして、もぐらくんとひまわりくんは、こども団と3人の店主に別れを告げて旅立ちました。




もぐらくんとひまわりくんが旅立った後、


数日後にこども団の3人はアジトに集まっていました。


少年Aは言います。


「オレは今ヒグマの店主のところで本当に幸せな生活をしているよ。」


少年Bが言います。


「オレも、ミツバチの店主に良くしてもらってる。」


少年Cも言います。


「オレも、てんとう虫の店主に本当に良くしてもらっている。」



少年Aが言いました。


「オレたちは、優しい大人たちに助けられた。」


「でも、この世界にはそんな大人に巡り合うこともなく、助けられないこどもがたくさんいるはずだ。」


「だから、助けられたオレたちが今度は、助ける番だと思うんだ。」


「いまなら、このひまわりくんの種がある。」


「誰でも助けられるんだ。」


少し、間をあけて少年Aは言いました。


「今日で、“こども団”は解散だ!」


少年Bが言いました。


「今までと違うことをしようってことだね!」


少年Aが答えます。


「そうさ。」


「明日より、俺たちは“ひまわりの種の会”として活動する。」


「活動内容は“この世の少しでも多くのこどもたちを救うこと”だ!」


少年Cが言いました。


「でも、種3粒じゃ、すぐ終わっちゃうよ。」


それを聞いて3人は考え込みます。


そして、少年Aはハッと気づいた顔をします。


その後、3粒の種を1粒づつすりつぶして粉末にします。


そして少年Aは言いました。


「3人でこの粉末を持っていよう。」


「そして、困っているこどもがいたら、粉末の1粒づつを分けてやろう。」


「そうしたら、もっとたくさん助けられる!」


少年Bも少年Cも賛成します。



そして、こども団の3人は、今後世界のこども達の為に活動することを誓うのでした。




ちなみに、この“ひまわりの種の会”は今後、世界規模の秘密結社となります。


そして、ひまわりくんの種の粒を世界中に撒き、世界を揺るがす“とても幸せな大事件”を起こすのでした。


でも、今のこどもの3人には知る由もありません。


今はただ、3人は幸せで自由なこどもの時間を過ごすのでした。




つづく。


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